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地方警察署から銀座ホステス、営業職、起業… キャリアチェンジを通して実感した、伝えることの大切さ【話し方・伝え方ガイド 藤田 尚弓】

伝え方を考えなかったり、知らなかったがために、損をしないように。欲しい結果にフォーカスして、その結果を掴むためのアプローチの仕方にはテクニックがあります。藤田尚弓さんの伝え方のモットーを支える経験とは?

All About【話し方・伝え方 ガイド 藤田 尚弓】

藤田 尚弓(ふじた なおみ) Web制作会社 アップウェブを経営する傍ら、交渉・コミュニケーションの講師として、一部上場企業や大学などにも登壇。テレビ出演やコラム連載なども行なっている。著作に『悪女の仕事術』『NOといえないあなたの 気くばり交渉術』『悪女の恋愛メソッド』など。

伝え方の修業になった地方警察署時代

地方警察署、銀座のクラブ、企業での営業職、そして起業と、異色の経歴を持つ藤田さん。その背景には結婚、離婚があり、人生のステージが変わるたびにキャリアチェンジをしてきたという。

そんな中で、話し方・伝え方の大切さを知ったのは、最初の職場である地方警察署で全国初の防犯専従職を務めていた時だった。

「防犯専従職は、防犯や安全のために行政や地域の人達にはたらきかけるのが仕事。要はお願いビジネスです。地域のためになることを依頼するので、当然協力してくれるものだと思っていたら、思いっきりパンチを受けました」

というのも、藤田さんが依頼する仕事は行政や企業にとっては無償の仕事、つまりボランティア活動になるため、とにかく嫌がられたという。そんな中で、藤田さんは、伝えることの大切さに気づいていく。

「正しいことをお願いするのも、伝え方を間違うと反感をかってしまうし、無理な依頼でも少し工夫をするだけで通ることもある。交渉するには、アプローチの仕方が大事だと痛感しました」

藤田さんは、人間心理やそれに基づくアプローチ法についての研究を始めた。学んだことを実践すると、その効果は驚くほどあったという。


「どの職場でも、警察署時代に身につけたアプローチの仕方が役に立っている」と藤田さんは語る。

銀座ホステスとしてナンバー1に

その後、結婚退職したものの離婚し、これまでとは一転、銀座の世界へ。

「銀座のホステスは交渉の連続なんです。店側とは給与形態をはじめ約束ごとすべてが交渉で決まるし、お客さんからは日々口説かれるので、それをかわしながら期待値を高めていく。身につけたアプローチの方法がとても役に立ちました」

さらに、藤田さんは銀座ホステスとしてナンバー1となる。それは交渉術だけでなく、若いホステスや店のスタッフに応援されるのがうまかったからだという。

「人気が出てくると、自分のお客さんが複数お店に来てくれるけれど、同時に席にはつけない。その時に他の子やスタッフが、どれだけうまくケアしてくれるかが重要なんです。だから、いかにして若い子をやる気にさせるか、お店の人に協力してもらうかを考えました」

人に動いてもらう方法を全く知らなかった藤田さんは、マネージメントや教育心理学、社会心理学についても独学で学び始めた。書籍を読みあさり、それをヒントにやる気を出させる伝え方を生み出した。すると、多くの女の子たちが藤田さんを慕い、ついてきてくれ、結果、表彰の常連になれたという。


「モレスキンの手帳とカルティエのペンは、お気に入りの仕事道具。「書くことがとても大事だと思っているので、気分があがるようなものを使っています」と藤田さん。

言い方を変えたことで、事務職から営業職へ

銀座の世界を卒業した藤田さんは、企業の営業職を志望するも、その会社では女性の営業職の前例がなく却下され、事務職として入社する。

「このまま“営業にさせてください”と言い続けるとワガママに聞こえてしまうので、言い方を変えたんです。“営業になるために、今勉強しておいたほうがいいことはなんですか?”って。とくに営業出身の役員には “将来○○さんみたいになりたいんですけど”と付け加えて、頻繁に訪ねにいきました」

すると、まもなく藤田さんは営業職へ。さらに、これまで培った伝え方や銀座時代に学んだことが結果へとつながり、役職もついた。しかし、男性の多い職場。藤田さんを快く思わない人も多く、周囲からは「悪女」呼ばわりされることも。

悪女って、なんだろう─ そう思った藤田さんは、歴史上の悪女と言われている女性について調べ始めた。すると、「私ってマシじゃん!」と思ったと同時に、彼女たちの言動が話し方・伝え方の視点で非常に参考になることに気づいた。

「歴史上に残る悪女は、時代の権力者の寵愛を受けたことをきっかけに権力を握っていくパターンが多いんです。権力者は愛人を選び放題だから、いつ捨てられるかわからない。上下関係があるのに相手をうまく動かす伝え方は、とても参考になるんです」


知り合った人の興味がある分野について、新聞や雑誌の記事をファイリング。これを届けにコンスタントに会いに行くのが、藤田さんの習慣のひとつだ。

伝え方がうまい歴史上の悪女は「北条政子」

その中でも、とくに印象的な悪女が北条政子だという。

「北条政子に見習いたいのは、プレゼンテーションのうまさ。武士たちが朝廷に逆らうことに尻込みしていた時、“あなた達の未来のために”“武士としての誇りのために”“頼朝への恩”といった感情に訴える伝え方で武士たちを動かし、結果、勝利に導いたんです」

藤田さんの悪女研究はライフワークとなり、現在「悪女学研究所」という社会人サークルを主宰、その会員は700人以上にもなる。また、来年には歴史上の悪女たちが行ったことを単なる事例ではなく、論理で裏付けした書籍を刊行予定だ。

「歴史が好きというのはお得です。会社の中で評価されたり、勉強してるという印象を持たれやすいですよ。悪女研究を通して、歴史好きな女性を増やしていきたいですね」

人が離れていくことを初めて経験

現在は、企業と顧客を繋げる“コミュニケーションデザイン”の会社を経営し、ホームページやパンフレット制作の仕事をしている藤田さん。起業して6年目だが、意外にもこれまで一番ショックだったのは、はじめて社員が辞めた時だという。

「ずっと人に対してはたらきかけてきたので、それなりの自信を持っていたんです。離婚は自ら切り出したことだし…。だから人に離れられたことがショックで、全人格を否定されたような気持ちになってしまいました」

この時に勉強したのがキャリア形成論だった。多くの書籍や論文を読んだことが支えとなり、辛い時期を乗り越えることができたという。ここで実感したのも、話し方・伝え方の重要性だった。また、ウェブ業界は離職率が高いことを知り、その後も辞めていく社員はいるものの、それには慣れるようにしているという。


ピンチは学びのチャンス。書籍に加え、とにかく数多くの論文を読むという。「専門家の人たちの論文には、助けられています」と藤田さん。

伝え方のテクニックを取り入れて、小さな成功体験をつかんで欲しい

これまでの職を通し、話し方・伝え方のアプローチ法をずっと研究し続けていた藤田さんは、オールアバウトのガイドをきっかけに専門家として活動の幅を広げている。考えてから、伝えること。欲しい結果にフォーカスして、アプローチを考える─ これが、藤田さんの伝え方のモットーだという。

「すごくいい人なのに、伝え方を考えなかったために、評価されない、損をしちゃう人が多いと思うんです。そういう人達が伝え方のテクニックを少しでも使ってくれれば、小さな成功体験につながると思います。そういう人を増やすために、誰にでも、すぐにマネできるような方法をコツコツと発信していきたいです」


『Noと言えないあなたの気くばり交渉術』ほか、多くの著書を刊行。読者のコメントが励みになっているという。
文/三田村蕗子 写真/平林直己
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