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毎日を楽しく、健康的に生きていくための医学 家族を大切にするように患者に接すること【女性の健康ガイド 山田 恵子】

結婚・出産・妊娠――。女性は人生のライフイベントを迎えるたび、自身の身体に対する悩みを変化させていく。年月を経て移り変わっていく女性の多様な悩みを解決するため、患者と向き合い、医療の現場で、そしてAll Aboutで情報発信を続けている医師の山田恵子さんの原点。

All About【女性の健康 ガイド 山田 恵子】

山田 恵子(やまだ けいこ) 医師。東京大学医学部卒業。ハーバード大学研究所客員研究員等を経て、現在、東京大学医学部医療情報経済学客員研究員。研修医時代から救急医療に携わる中のハードワークで体を壊してしまった経験を含め、健康をサポートする情報を発信。著書に『9割がよくある病気』『生命の羅針盤』

自分の身体を壊して初めて気付いた、女性の“もろさ”

結婚・出産・妊娠――。女性は人生のライフイベントを迎えるたび、自身の身体に対する悩みを変化させていく。年月を経て移り変わっていく女性の多様な悩みを解決するため、患者と向き合い、医療の現場で、そして「All About」で活動を続けているのが医師の山田恵子さんだ。

ただし、山田さんが現場で実際に専門としているのは、意外にも女性の病気を扱う“産婦人科”ではなく、骨や筋肉など、運動器の疾患を治療する“整形外科”。今から10数年前、整形外科の研修医として働く傍ら、自分の体を壊してしまった経験が、女性の健康と向き合うきっかけとなったという。

「研修医時代、あまりの忙しさに、生理がぱたっと止まってしまったんです。」

慣れない環境、精神的なプレッシャー、そして“今こそ頑張らないといけない。”と焦る気持ちを抱えながら、日々仕事に邁進するうちに、身体に変化が訪れた。

その状況になって思い出したのは、ある産婦人科医が話していた言葉だった。

「人間、ストレスがかかると、生きていくのに必要のないところから機能を停止してゆく。女性は身体へ負担がかかった時、生理が止まることが多いんです。生殖機能は、その人自身が生きていく上では必要がないわけですから。だからこそ、女性は自分を守らないといけないし、大事にしないといけない。」

「この言葉の意味が、初めてよくわかりました。私は産婦人科医ではなく整形外科医ですが、否が応でも自分が女性であることに対面しなければいけなくなったんです。」

その出来事をきっかけに、医師としてはもちろん、1人の“女性”として、自分の身体を知ることの大切さを痛感していく。

自宅には、学生時代から使用している学術書の山が。医師として勤務している今も、勉強は続けている。

誰もやらないなら、自分がやるしかない

自分の身体を正しく理解することの大切さを実感しながらも、当時、インターネット上ではほとんど正しい情報が発信されていなかった。まるで学術書をそのままコピーしてきたような内容や、全くピントはずれの情報が有象無象している状態で、本当に有用と思われる情報はほとんどと言っていいほど見当たらなかった。

「私は産婦人科の専門家ではないけど医者ですから、同じ女性として分かりやすく説明できるのではないかと思ったんです。例えば単に冷え性、むくみといった日常よくある症状でも、どういう体の仕組みで体が冷えてしまうのか、むくんでしまうのか、根本となる構造が分かると、それだけで安心できませんか?そういう情報を誰も発信していないのだったら、自分がやってみようかな、と思ったんです。他に誰かがやっていたら、始めていなかったかもしれません(笑)」

専門分野ではないが、医師として、知識を正しく伝えることで、多くの人の悩みを解決できる手立てとなる。そんな小さな気付きと、責任感が、山田さんを「女性の健康」ガイドとしてのスタートへ導いた。

山田さんの著書「立つだけビューティ」(右)、「生命の羅針盤」(中央)、「9割がよくある病気」(左)。ビューティー本から医師になってからの家族の看取りの想いを書いたものまで、情報発信の範囲は広い。

「生きるか死ぬか」を救うことだけが、医師ではない

山田さんが“整形外科”を専攻として選んだのは、大学生の時。背景には、山田さんの父親の存在があった。

「父親とは歳が離れていたので、いつまでも元気に生活してもらいたい。というのが自分にとって、身近な問題であり、願望でもあったんです。」

患者の命に関わる病気を治療し、救うのが医者の役目、という考え方もある。しかし、医師は「生きるか死ぬか」の状態にいる患者さんだけを相手にしているわけではない。患者さんの身体をメンテナンスし、日常を健康的・快適に生きていくためのサポートをする。特に高齢になると体を動かす整形外科という分野がより重要になってくる。これは、父の健康を願う1人の娘としての想いと重なっている。

「長く乗るうちに車にガタがくるのと同じように、人間も生きていれば色んな所が悪くなるのは自然なことですよね。ただ、どんなに腰が痛かろうと、足が悪かろうと、体を取り替えるわけにはいかないんですよ。どうにか上手くメンテナンスして、一生の間走らせていくしかない。どんなに自分の体が嫌であっても、その体を持って生きていくしかないわけです。全てが生死に関わる問題ではないけれど、日常生活を楽しく、健康的に生きていくために、自分の身体を知り、上手く付き合っていくことは、充実した人生を過ごす上で、すごく重要なことだと思います。」

そして、自分の身体をメンテナンスしながら上手に付き合っていく、という点では、“女性の健康”も、“整形外科”も共通している、山田さんは話す。

「私自身が女性なので、たまたま女性にウエイトを置いて活動していますが、根本は同じ。どのように、自分に苦痛がない状態で人生を終えるか、その体を持って生きていくか。特に女性の場合は一生の間と、一ヶ月の間とでホルモンバランスの変化がありますから、体の変化も起こりやすい。だからこそ、正しい知識を持っていることの重要性は高いと思います。」

聴診器と、これまで見てきた患者さんのカルテ。

自分の患者は、家族同然

誰に対しても、辛い思いはしてもらいたくない、その思いの原点となっているのは、研修医時代の経験だ。

「私の場合、入院患者さんを受け持つと、患者さんが家族になってしまう。遊んでいても何していても、頭の片隅に患者さんのことが思い浮かでしまうんです。」

そういう意識を持つきっかけとなったのは、研修医時代に、山田さんが非常に敬愛する先生から教えられた“患者さんは教科書”という考え方だった。

「座って考えるな。病棟に行って歩きながら考えろ。ということをよく言っていらっしゃいました。『入院患者さんは家族。だから、最低でも一日一回は必ず顔を見ろ』という教えが、今の私を形成するベースとなっている気がします。そのお陰か、当時は常に15人くらい、多いときで30人くらいの家族を抱えることになりましたが(笑)

でも、そういう経験が、原点なんだと思います。 自分の父親・母親が入院しているのと同じことですから。家族を相手に処置をしているんだと思うと、患者さんに対する感覚が変わってきます。だって、自分の家族には苦しい思いをしてもらいたくないし、早く良くなって欲しいですよね。すべてのお医者さんの原点は、私はそこにあるべきだと思っているんです。」

誤った情報が氾濫していた昔とは状況も変わり、ある程度、正しい情報がインターネット上でも容易に入手できるようになった。それでも、山田さんは情報発信の範囲をネット上だけでなく、書籍など多岐に広げている。

「私自身、例えば妊娠・出産を経験すると、自分が知っていると思っていた身体に新しい変化があらわれるんです。その変化がある度に、身をもって実感することがたくさんあるので、なかなかやめられないんですよね(笑)」

医師として、1人の女性として、患者さんと向き合い続ける姿勢は今日も変わらない。

仕事と育児のバランスも女性ならではの問題で難しい、と山田さん。
文/八鍬真希子 写真/平林直己
※本記事の内容は取材時点(2012年7月)の情報です。
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