ヒト

自称“前向きな社内ニート”役員が描くオールアバウトのバーティカルメディア構想

2014年にデザイン部門の責任者としてジョインした伊藤さん。それまでアリババやグルーポンなどグローバルなECサイトを主戦場としていたところから、Webメディアに飛び込み、UI/UXの改善だけでなく、マネタイズの部分でも手腕を発揮して、オールアバウトの収益化に大きく貢献。2016年10月にメディア担当執行役員に就任するとともに、現在はバーティカルメディア戦略を立案し、新規事業の陣頭指揮を執っています。そんな伊藤さんは、普段何を考え、どんな風にお仕事をされているのでしょうか。自称“前向きな社内ニート”の仕事観を伺いました。


伊藤 竜介(いとう りゅうすけ)
株式会社オールアバウト メディア担当執行役員

2000年旭化成ホームズに新卒で入社後、フリーランスのデザイナーを経て2006年ソフトバンク・ヒューマンキャピタル入社。ソフトバンクB2B準備室への兼務出向を経て、2008年アリババ日本法人の立ち上げと共にアリババ株式会社に転籍。2010年グルーポン・ジャパンの設立日と同日に同社入社。2014年8月、オールアバウト入社。デザイン、企画、運用型広告等の部門を担当しつつ2016年10月よりメディア担当執行役員(現職)。

■決められた仕事なんて、ひとつもない

—All About編集部・メディア開発部・デザイン室の3つの部門を統括されているそうですが、メディア担当執行役員としてのミッションや、普段どんなお仕事をされているのか、教えていただけますか?

ミッションは「グループサービスも含めたオールアバウトのメディア価値を上げること」です。それは単純に収益を上げるだけではなく、「All About」を見ていただくユーザーの体験をもっと良くするために、社内の運用体制をどう改善すればいいのか?といったことを考えるのも仕事の一つです。弊社の場合、編集・企画・システムなど、それぞれ優れたプロフェッショナルに囲まれているので、彼らがやりやすい環境を作るために、僕が率先して整備していくイメージですね。

それ故に決まった仕事がひとつもなく、プライオリティの大きい課題を見つけ日々動いています。僕はワークスタイルの実験として社内で唯一、フリーアドレスで仕事をしていることもあり、チームメンバーからも「(伊藤さんは)どこでなにをやってるんだろう?」と不思議に思われてます。固定化された業務も座席も無いように見られているので、傍から見ると“前向きな社内ニート”みたいな感じかもしれません(笑)。

ただ実際には、編集、デザイナー、マーケッター、エンジニアなど様々な社内のプロフェッショナルにはじまり、経営層から今年入社したばかりの新卒まで、場合によってはグループ会社の皆さんといった広範囲の方々と業務をしています。今日もついさっきまで、舟久保さん(取締役)と「All About」のメディア戦略の話をした後、別のメンバーと新規事業の話をして、この取材が終わったらデザイナーとのデザインレビューを予定しています。

—すでに起きている問題に対処するのと、ご自身で課題を見つけて動く割合は、どれくらいですか?

すでに顕在化している課題には、各チームで対応しているので、比較的サポートに徹するケースが多いです。この先のメディアについて考えるときには、他の経営陣と連携しながら作っていきます。特に今の時期は下期や3年先・5年先を見据えて戦略を立てる時期なこともあって、割合としては後者の方が多いです。メディア事業において先陣を切ってアクションを起こすのが、僕の現在の役割なのかもしれませんね。

■デザイナーから執行役員になった理由

—オールアバウトに入るまでのキャリアについて、教えてください。

大学を卒業後、ハウスメーカーに新卒で入社したものの、どうしてもデザインがしたいという思いが捨てられませんでした。なので、デザインの専門学校で1年間学び直してから、プロとしての実績がないにも関わらずフリーのデザイナーになり、デザインの講師をしつつ、受託や常駐の仕事をしていました。そんなときに「もっと大きなサービスに関わっていろんな人に影響を与えたい」と思うようになり、ソフトバンクグループに入社しました。

そこで2年ほどサービスのディレクションをやった後、ソフトバンクが出資している「アリババ」の日本法人の立ち上げに参加しました。入社してすぐ中国に行き、現地のメンバーにUI/UXの講義をしたんですが、その評判がよかったみたいで「サイトリニューアルもしてきて欲しい」と言われて。その当時、新婚間もなかったのですが、中国に長期滞在する事になったんですよ。

中国語は“你好”と“謝謝”しか知りませんでしたが、「会社への道順」「ホテルに帰るときの道順」「すべての仕事を終えて空港へ戻る道順」が中国語で書かれた3枚の紙だけ渡され、「これをタクシーで見せればいいからね。いってらっしゃい」って(笑)。最初は向こうの運転手さんに紙を見せて、話しかけられても笑顔で返すことしかできませんでしたが、数か月も経てば紙も必要無くなり、大体のことは何とかなると身をもって感じました。
そんな感じで2〜3年ほど、日本と中国を行ったり来たりしながら、業務の一環として今後のECについて考えていたら、当時、画期的だったフラッシュマーケティングの「グルーポン」が日本法人を作るというのを聞きつけ、渋谷の雑居ビルに話を聞きに行ったんです。当初は話を聞くだけと考えていたのですが、その流れで入社することになり、グルーポン・ジャパンが立ち上がった2010年10月に正式に入社しました。

ここでベンチャー企業が猛スピードで成長していく世界を酸いも甘いも身をもって体験しつつ、4年近く働いていく中で、安定期に入ったなと感じたので、「そろそろ違うことをやろう」と思って、転職することを決めました。

—そのような経験を経て、なぜオールアバウトに入社しようと思ったのですか?

さきほど言ったような経緯で中国やアメリカ企業の日本法人で働いてきたので、今度は、日本から世界へ出せることをやりたいと考えました。そこで前職の同僚に相談したら、なぜかオールアバウトを勧められて。

正直、オールアバウトってインターネット黎明期によく見ていたイメージだったので、「なんで?」と思ったのですが、信頼している同僚が勧めるくらいなら話を聞いてみようと。インターネットの世界でECばかりをやってきたので、未知の世界であるメディアに飛び込んでみようと思ったのも、ひとつの理由でした。
面接では僕の前任の執行役員が面接官だったのですが、「僕はデザイナーとして売上という結果を出すのが得意で、それをゴールにしてきましたが、メディアのゴールって何ですか?」という話をした記憶があります。単純に考えると、広告でマネタイズしているなら、とにかく流入させてクリックさせればいいじゃないですか。でも、そのときに言われたのは「でも、それだけじゃメディアの価値って出ないよね」と。確かにそうですよね。
その後の面接も含め、経営陣が自分たちのビジネスについて、こんなに楽しそうに話す会社ってなかなかないので、面白そうだなと思ったのを覚えています。

そして最後の面接は代表の江幡さん。江幡さんって、普通は恥ずかしくなるような志やビジョンを、目をキラキラさせて話すじゃないですか。僕はそれまで比較的ロジカルでドライな文化に浸っていたので、衝撃的でしたね。

—もともとデザイン部門の責任者として入社されたそうですが、編集・マネタイズ・新規事業へと職務範囲が広がっていったのは、どんな経緯があったのですか?

結果的に今までの会社でもそうなのですが、アリババのときもグルーポンのときも、結局デザインって、ただ作るだけじゃなくて成果に繋げていかないと意味がない。そうなると、どんどん他のことにも関わることになっていくんです。僕自身としては、全体を踏まえた上で現状の課題を目に見える形で解決するのがデザインだと考えています。ですので、デザイナーでも、今の役割としてでも根本は変わらないと考えています。

組織においても、メディアの数字を主体的に見ている人と、ネットワーク広告の売上を主体的に考えている人がいれば、両者が100%自分の立場のみで主張するとぶつかってしまうのは当たり前です。どちらもそれぞれの役割を全うしているだけなので、主張は痛いほどわかる。妥協ではなく、一番ベターな状態を作るにはどうすればいいかと考えて、相手の視点に立って考えてもらえるよう、お互いの目標も併せ持つ形にしたことでチームが一丸となれるようにしました。
メディアのマネタイズにおいては、一緒に頑張ってくれているメンバーに一体感が生まれると共に、PMP(プライベートマーケットプレイスの略。参加できる広告主とメディアが限定されたプログラマティックな広告取引市場)の潮流もあって、収益化に貢献できました。

そうしたこともあってか、現在、執行役員業務を担当させていただいています。周りから評価してもらえるのはありがたいですが、今もまだ解決すべき課題は山積みです。

メディアビジネス事業のトピックス(平成29年3月期 決算説明会資料より抜粋)

■メディアの価値って、何だっけ?

—伊藤さんはかなり早い段階でPVを目標にしない決断をされていたと聞きます。なぜでしょうか?

Webメディアの世界では、できるだけ多くのユーザーと接点を持ち、そこからビジネス的な収益を上げていくというビジネスモデルがわかりやすく存在します。その反面、おこがましい言い方にはなりますが、個々のユーザーをどれくらい幸せにできたかについては、あまり言及されていないのかな、と感じていました。

例えばECだとコンバージョンという形で目に見えやすいですが、メディアの場合、“3ページある記事の1ページ目で離脱したのは、知りたいことが理解できた、という目的が達成されたからなのか、それとも逆に「自分に関係ない」と思われたのか”といったように、その数字が表す意味を測るのって、難しいですよね。ちょっとズルく考えると、ページを細かく分割したり、インフィニティスクロール(下へスクロールするにつれてコンテンツを継続的に見せる仕組み)にするだけでも、大幅にPVという数字は変えることができます。でも、それって当たり前ですが、何の価値も生み出していない。

個々のユーザー体験の向上という視点で考えると、特に幅広いジャンルを扱う「All About」の場合、テーマや記事のタイプによっても指標は異なるはずです。PVという母数の参考値としての指標だけやみくもに追うのではなく、「個々のユーザーの満足度を高めるためには、どうすればいいか」といった観点で指標の必要性を考えると、ユーザーの行動を把握するためには、セッション毎の直帰率、滞在時間、回遊数等を見る方法もあります。ただ、それだけでは足りないですよね。

そこで考えたのが、総合型のメディアだけで追っていくのは難しい“個々のユーザー体験”を把握し、さらに向上させるために「All About」と両軸で進めていこうとしている「バーティカルメディア構想」です。

—「バーティカルメディア構想」という言葉が出ましたが、それはどのようなものでしょうか?

「All About」は長い間サービスを続ける中で、ほとんどやり方を変えていないんですよ。これはこれで、すごいことだと考えています。ただ、創業期から時代がどんどん変わっていく中で、インターネットやメディアに求められていることが、高次元化していっている現状にあります。

これまでは、「気になることを検索して、欲しい情報にたどり着いたら、納得感を持って去っていく」というだけでよかったかもしれませんが、さらに満足度を高めていくためには、情報を得た先でユーザーに何かアクションを起こしてもらい、具体的な価値や幸せを得てもらえるようにしていかないといけません。

例えば、マネーの記事と恋愛の記事では、読んでいるユーザーのゴールは全く別なはずですよね。テーマによって異なるゴールを作って、より多くの価値を作っていけたら、というのがバーティカルメディア構想の狙いです。
その第一弾として今年7月にリリースしたばかりの「PICUP(ピカップ)」は、そんなゴールのひとつとして“買う”という行動に着目したお買い物情報メディアです。商品に知見のある人が、同じジャンルの商品を比較しながら、「この商品はここがいいけど、こっちの商品はここがいいんだよ」と丁寧に紹介してくれるサービスがあったら便利だよね、ということで作りました。
まだ初動の段階なので何とも言えないですが、ユーザーの行動に繋がる指標については想定以上の数字です。価値を産み出せそうなことはわかったのですが、まだ少人数の体制で動いているので、チーム体制の拡大も視野に入れてジャンルを“モノ”だけじゃなくライフスタイル全般に広げていきたいと考えています。

もともとオールアバウトが目指すのは、“個人が好きなことをやりながら自立して、不自由なく生きていけるようにすること”。まずは、そのために必要な「住まい・お金・キャリア」といった生活基盤に関するテーマから、ユーザーが賢く生きるための正しい知識を身につけられるバーティカルメディアを増やしていけるよう、より一層検討を進めていきたいと考えています。
(取材・文 野本 纏花)

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