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「編集」とは誰のものなのか? 一億総編集者時代の今、立ち返る言葉

社員が大切にしている言葉、影響を受けた一言を紹介していく新コーナー「Quotes」。第1回目は「イチオシ」を担当するガイドプロデュース部の山田卓立さん。前職の恩師である町田さんに教わり、山田さんを育て、そしてオールアバウト執行役員にぶつけた言葉について書いていただきました。

山田卓立(やまだ たくりゅう)
メディアビジネス本部 ガイドプロデュース部
2015年3月、オールアバウト入社。ガイドプロデュース部所属。旅雑誌、ネイチャー系雑誌編集部を経て、オールアバウトには「For M」編集部として入社。2018年度下期からは、ガイドプロデュース部で「イチオシ」プロジェクトを担当。

■おまえ、編集ってなんなんだよ?

新連載のトップバッターに相応しい原稿を書かなきゃなと、ガイドの藤原千秋さんの「イチオシ」「ゴチエビス」の宮本さんの玉稿を読み返しながら、依頼されたこの原稿に取り掛かっています。
「Quotes」と題して、社員が影響を受けたという言葉、座右の銘を紹介していく連載なのですが、自分の本棚を覗かれているような感じがして、とても恥ずかしいです。堅物だなと思われたらばつが悪いですし、仕事がら中途半端なことは言えないので、正直仕事に響く依頼だな、とも思いました。とはいえ、そんなことも言っていられないので、ひとつ編集ド直球の格言を紹介させていただこうと思います。
ある昼休み、執行役員の箕作さんと昼食に行ったときのことです。4月新年度の構想の周知と僕のマインドセットが企みだったと思います。食事中は、毎度の毎度の禅問答のような質問を浴びせられる時間です。「おまえ、マーケットって何か分かるか?」みたいなやつ。

今回は「おまえ、編集ってなんなんだよ?」でした。

模範解答が皆目見当もつかないので、 こっちもこっちの言語で返そうと思ったのが今回の「Quotes」です。

”ものみな編集に始まる”ってことですよ」
この言葉を教えてくれたのは 、僕に編集の基礎を叩き込んでくれた前職の師匠・町田さんです。今でも会いに行くほど、尊敬している人です。

雑誌編集部時代のゲラ。「取材取れ高の記事になるのは2割」「E=mc2(エネルギーをかけるほどいいものが作れる)」と雑誌型編集を叩き込まれた時代
いわく、これは松岡正剛(まつおか・せいごう)の言葉で、文芸評論家の花田清輝(はなだ・きよてる)の著書、『ものみな、歌に終わる』(第三書館/1986年)のメタファーとして、松岡正剛が「ものみな、編集に始まる」としたそうです。ちなみに、松岡正剛がいつ、どこでこう言ったのかは分かりませんし、見たこともありません。

松岡正剛は「編集」を体系化し、「学問」として成立させようとした人で、「編集工学(Editorial Engineering)」という分野を作りました。この考え方はすごいです。いくつも著書があるので、興味のある人は手に取ってみて下さい。

松岡正剛らが立ち上げた出版社、工作舎について書かれた『工作舎物語 眠りたくなかった時代』(左右社/2014年)。「お金がなければ生きてゆけない。けれども、効率を考え労力を惜しんでは、真に良いものを作り上げることはできない。誰でも陥るジレンマだ。しかし当時の松岡はそんなレベルを超えていたようだ。「は、お金? それが何?」と言わんばかりの吹っ切れたテンションが証言の端々から読みとれる。」(内澤旬子さん、朝日新聞書評)

■不思議な納得感と腑に落ちない解釈

手垢がベトベトであまりこの表現は好きではないのですが、「編集」とは「集めて編む」ことです。それは、営業資料を作るのも、旅行の予定を組むのも、好きな人へのプレゼントを考えるのも、すべてにおいて「集めて編む」をするわけです。

とにかく集めることから始めて、取捨選択をして、そこでストーリーを紡いでいく。(「自ら作ったストーリーに涙しろ!」なんて町田さんには言われていました) 営業資料でもそうですよね。旅行もプレゼントもそうだと思います。プレゼントなら相手は何が欲しいのか、予算はどれくらいか、どんな用途で使うのか。好きな色は? 機能性かデザインか?どのタイミングで手渡すのか?あらゆる素材を考慮して、アウトプットする。 ここに編集作業があります。 編集とはモノゴトの基礎で、すべてなので、この言葉とこの仕事が僕は好きです。

「それを生業とするのが編集者です」

と、ひとしきり箕作さんに話したところ、

「お前が言いたいのは、編集という『行為』そのもののことだな。よく分かった」

異業種の人の不思議な納得感と、腑に落ちない解釈にはしばらく考えさせられましたが、今でもときおりこの話がフラッシュバックします。

考えることの根幹が編集だと思っていますし、社内の編集職ではない人でも、あの人に企画作ってほしいな、この人の記事を読みたいなという人が何人かいます。編集は編集者の専売特許ではありません。ショップ店員が商品の陳列を考えることも、お笑い芸人がネタを書くことも編集をおこなっているはずです。 ―今さらながら先の解釈がじわじわと効いてきました。

ほかにも好きな言葉は山ほどあるのですが、この言葉が僕を育ててくれたことは間違いありません。
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