就職・転職・スキルアップ部門
自己表現起業
若者たちの小規模起業が増えている。政府の後押しもあり、転職ではなく「起業」に対するハードルが下がりつつあるのが一因だ。かつてのヒルズ族のように、成功のために貪欲に邁進するのではなく、“自己表現”の一環として起業するというタイプが多いという。
小口の補助金で政府が後押し若者たちの起業が社会現象に
20~30代で起業した人の割合をみると、2007年以降は減少傾向にあったが、20代は2012年度に、30代は2011年度に増加に転じている(グラフ参照)。今年度のデータはまだ出ていないが、上昇を続けることは間違いない。若者たちの小規模な起業を促すため、政府が「創業補助金」を創設し、今年度からスタートしたからだ。
「ニュースではあまり取り上げられないが、若年層の起業の増加が社会現象になっている」と、「起業・独立のノウハウ」ガイドを務める中野裕哲氏はみている。
「全国で8,200社が採択される予定ですが、これまで約2,500 社が採択されました(9月中旬現在)。まだ5,000数百社の余席があり、そこにかけ込みの需要が出ています。転職しようか起業しようか悩んでいた人も、今は起業に傾いています」(中野氏)
従来、政府の助成事業は1社あたり1,000万円以上の大規模なものがほとんどだった。こうした小口の助成制度ができたことで、若者や女性が応募しやすくなっている。
自分の才能を活かして稼ぐ「自己表現起業」が主流に
若者の起業は、どんな業種が多いのか。前出の中野氏は、「IT系など身一つでできる業種が中心。店舗を持つなど自己資金が必要なことは難しいでしょう」。また、「大学生の就職活動」ガイドの小寺良二氏は、「ホリエモンのように事業を起こす、というより、自分の才能を活かしてキャラクターを立てる起業が多いですね。」と話す。
中小企業庁の調べによれば、起業した年齢を「グローバル成長型」企業と「地域需要創出型」企業で比較すると、20代の割合は「グローバル成長型」で15.0%、「地域需要創出型」で7.3%。30代の割合は「グローバル成長型」で36.1%、「地域需要創出型」で24.7%となり、「グローバル成長型」の方が比較的、起業年齢が若いことがわかる。
ちなみに同調査では、規模の拡大を経営方針とし、全国または海外を市場とする企業を「グローバル成長型」、経営方針として事業の安定継続を優先し、同一都道府県を市場とする企業を「地域需要創出型」と分類している。
クラウドソーシングなどを利用して、全国から受注できるIT系エンジニアやクリエーターなどは、「グローバル成長型」にあたるだろう。
クラウドソーシング大手のランサーズによれば、同社に登録している会員数は昨年11月18日までで9万8,000 人超。発注者の6割が東京で、受注者の7割が東京以外の地域であるそうだ。つまり、地方在住の個人が東京で発生した仕事を受注するケースも多いことを示している。
また、同業のクラウドワークスでは、昨年7月中旬に利用者が3,000人を突破。その約7割が35歳未満であるという。
「フリーランスで自分らしく生きるほうが魅力的に感じられる世の中になってきています。いま起業する若者たちにギラギラ稼ごうという感じはないですが、実はちゃんと稼げているんです」(小寺氏)