住まい部門
「中古でいい」から「中古がいい」へ
これまで日本には根強い「新築信仰」があったが、ここにきて「中古マンション」が注目されている。特に20代の若年層を中心に好まれており、中古物件を自分好みにリノベーションすることの人気も加わり、あえて中古を選ぶ決断をする人が増えている。
首都圏マンションの成約は中古が新築を上回る現象も
東日本不動産流通機構によれば、「首都圏中古マンション成約件数」は今年8月まで前年同期比を越え、とくに8月は130%を超える伸びを見せた。このように、2013年は中古住宅の販売が好調。住宅に関しては、「新築」を好む文化が長く続いてきた日本。それが今年は様子が違ってきているのだ。
「若い人を中心に、中古に抵抗がなくなってきています。古着と同じ感覚ですね。安く自分の好みをしっかりと反映した家づくりができる、だからこそ積極的に中古を選ぶ人が増えているのが今のトレンド。若い人はお仕着せのものではなく、自分たちが本当に求めているモノをよく知っているのです」と、「リフォーム」ガイドを務めるYuu氏は話す。
一方、「最新住宅キーワード」ガイドの山本久美子氏は、リノベーションの認知度が上がったことが、中古人気を後押しした要因の一つと指摘する。「リノベーション自体は以前から様々な業者が取り組んでいますが、今年はテレビでも多く取り上げられたので、業界以外にも広く知られるようになったのです」
さらに、国も中古住宅販売を後押しする。優良な中古住宅を認定し、省エネや耐震改修を実施した中古住宅を買う人が低利融資を受けられるようにするなど、国の方針として中古住宅を推奨し始めたのだ。
一方、新築マンションの販売も景気上昇に伴い好調だが、不動産専門の情報サービスを提供する東京カンテイによれば、新築マンションは都心部に集中し、都下の中でも都心へのアクセスが劣る地域では、新築マンションの分譲戸数が減少する傾向が続いているという。
そんな2013年は、中古が主流になる元年となりそうだ。7月上旬、ノムコム(野村不動産アーバンネット株式会社)が住宅購入を検討している男女1,831 人を対象に実施したアンケート調査でも、「中古住宅の購入を考えている人(「中古のみ検討」「新築と中古の両方を検討」と答えた人の合計)」は72.7%に上り、前年同時期の71%から微増した。
とくに20代が長い目で見て中古をオトク感で選択
国土交通省が、住宅を居住目的で購入した人を対象として昨年秋から今年2月8日までに実施した「2012年度住宅市場動向調査」。この調査では、購入理由として「価格が適切だった」と回答した人は、注文住宅が約21%、分譲住宅が約43%なのに対し、中古住宅では約74%にも上った。やはり、中古住宅の一番の魅力は割安感だ。
また、ホームズ(株式会社ネクスト)が、過去3年以内に中古住宅を居住目的で購入した25~ 59歳の男女1,000人を対象に2月下旬に行ったアンケート調査でも、中古住宅を購入した理由として金銭的な理由を挙げる人は多かった。
どの世代でも最も多かったのは、「新築は予算的に手が出なかったから」という回答(44.4%/複数回答)だが、世代別にみると20代では約3割が「長い目で見ると新築より金銭的に得だから」と回答し、他の世代より突出して多かった。
安さで中古を選ぶにせよ、若い世代ほど「中古でいい」ではなく「中古がいい」と積極的な決断をしている様子がうかがえる。