マネー部門
休眠投資家の再起動
昨年末から「アベノミクス」で盛り上がりを見せていた株式市場。ところが、新規の個人証券口座はさほど大きく増えてはいないという。リーマンショック以降、“休眠”していた投資家たちが再び活動し始めたのが、この2013年のマネー分野最大の“決断”といえる。
リーマンショックでやめた株式投資を再稼働
アベノミクスによる株高・円安効果により、2013年は個人投資家の動きが再び活発になった。
東京証券取引所における投資部門別の売買代金比率をみると、昨年は15~20%程度で推移した個人投資家の売買比率が、今年4月には30%近くまで上昇。個人が海外投資家に次ぐ地位に返り咲き、旺盛な投資意欲をみせている。
ならば、今年は新たに投資を始めた個人も多かったのだろうか。日本証券業協会のまとめによると、全国証券会社に開設済みの個人顧客口座数は、3月末時点で約1,983万口座と、昨年12月末時点の約2,107万口座から減少。6月末時点では約2,129万口座と微増したが、その半年間で日経平均株価は5,000円を超える上昇を見せたにもかかわらず、個人の証券口座はあまり増えていない。
「投資信託」ガイドを務める深野康彦氏は、「新たな投資家層が増えたというよりも、リーマンショックで投資をやめていた人が、たくさん戻ってきて休眠口座を再稼働したのでしょう」とみる。
また、同じく「資産運用・家計の見直し」ガイドの藤川太氏は次のように話す。「新たな投資家は増えていませんが、投資金額はかなり増えている印象です。リーマンショック以降、売り時がなくて持っていた株を、多くの人は日経平均が1万6,000 円に向かっていった時に売ったのです。ただ、今回は手仕舞って終わりではなく、もう一度、投資しようと考えている人もいる。なので、『手仕舞い』+『再稼働』という流れだと思います」
ちなみに、東京証券取引所がNTTデータ経営研究所に委託して昨年9月と今年3月に行ったアンケートによると、株式投資の経験があると答えた人は2回の調査とも30%だった。この調査の結果も、新たな投資家が増えていないことを物語っている。
眠れる“ミセスワタナベ”もマーケットへ出戻り
一方、FX(外国為替証拠金)取引の場合はどうか。
アベノミクスをきっかけに円が下落、為替相場の変動も大きくなったことを受け、個人投資家が証拠金を積み増す動きがみられた。矢野経済研究所の調査によると、店頭FX主要14社の預かり資産残高は今年、5月の6,851 億円をピークに膨らみ続け、その後も7月現在まで高い水準に留まっている。
しかし、FXも口座数は伸びていない。金融先物取引業協会のまとめによると、店頭FX会社に開設されている口座数は、昨年12月末時点の約449万口座から今年3月末時点で約444万口座に減少。
ところが、開設済み口座の稼働率は上がった。この四半期中(13年1~3月期)、一度でも取引のあった口座の割合は、前四半期(12年10~12月期)の14.3%から16.6%へと上昇した。
以上のように2013年は、休眠投資家がアベノミクスによって目覚め、再稼働した年だった。