老後部門
子供に頼らない自立型老後
平均寿命が男女ともに80歳を超えつつある今、老後はなるべく子供に頼らずに過ごそうとする動きが見られている。住居を改築したり、“サ高住”に引っ越したりする決断や、あるいは健康維持のために運動などをするシニアの姿が目立っている。
住宅のコンパクト化が旬 老後は夫婦で自立して暮らす
時代を作ってきた団塊の世代は、今年64~66歳。子供は既に30代半ばを過ぎているケースが多いが、日本経済新聞社が団塊の世代1000人に実施した調査では、27%が独身の子供と同居しているという。
団塊ジュニアは就職氷河期を経験しただけでなく、非正規雇用に追い込まれている人も多い。総務省統計局の2012年労働力調査年報によれば、35歳から44歳の非正規雇用率は、27.6%(男性8.2%、女性53.8%)。親たちは、「子供に頼らない自立型老後」を嫌でも決断せざるを得ない状況だ。
それどころか、逆に子供からいまだに頼られ、生活費の援助をしている例も珍しくない。「今年はとくに、シニアが住宅をコンパクト化する流れがありました」と話すのは、「リフォーム」ガイドのYuu 氏。
「大きな一戸建てからマンションへ引っ越すのが代表的な例です。また、まだ数は少ないですが、家を減築するといった動きもみられます。一戸建ては階段の上り下りも大変ですし、夫婦ふたりだと草むしりなどの維持管理も大変です。マンションに引っ越せばワンフロアですし、バリアフリーになっていたり、立地が都会に近く、買い物などにも行きやすいなどの利点があります。『終活』や『断捨離』など、コンパクトに生きる流れができたことも背景にあると思います」(Yuu 氏)
「二世帯住宅への強い流れも感じています。と言っても今までのように子供が親の面倒を見るための二世帯ではなく、親が働く子供の手助けをするというスタイルです。このような流れを可能にしている理由の一つとし て、リフォーム技術の進化があげられます。古い住宅でもリフォームで家の長寿命化や間取りの変更ができるので、様々な生活スタイルに対応した家づくりが可能になっているからです。今後、更に住宅の寿命が延び、親がローンを組んで買った家は、子供に引き継ぐというスタイルも増えてくることでしょう。マンションや親主導の二世帯の他にも、『サ高住(サービス付き高齢者住宅)』に引っ越すなどの選択肢も生まれています」(Yuu 氏)
子供の面倒にならずに夫婦で暮らす、同居の場合は子供の面倒を見る、という自立した老後の姿が浮かび上がってくる。
子供に面倒をかけないよう心と体の健康管理も盛ん
妻が夫のいる生活にストレスを感じ、体調や精神を害する「夫源病」。医師の石蔵文信氏が命名したこの言葉も、今年は多くのメディアで取り上げられ、話題を呼んだ。
今や平均寿命は、女性86.4歳、男性79.9歳。老後に夫婦がともに暮らす時間が増えた分、妻のストレスも増えている。「ただ、ストレス発散の場も増えています」と、「夫婦関係」ガイドの三松真由美氏は言う。
「男性は、これまで通り居酒屋に行くぐらいしか方法がありませんが、奥さま方のストレス発散はすごいです。フィットネスクラブも平日の朝方は高齢の女性で賑わっていますし、旅行もレディースプランがあったり、ホテルのマダムランチが安くなっていたりと、女性が遊びやすい世の中になっているのです」(三松氏)
このように、シニア女性のストレス発散は、たまったストレスを返上する勢いだ。「エクササイズ」ガイドの佐藤摩実氏も、同意見。
「家にいたら息が詰まりそうなので、フィットネスに来るなどといった流れがあると思います。私が講師を務めるフィットネスクラブに来られるシニアの方も、皆さんアクティブですね。誰かに頼るという様子はなく、アクティブシニアとしていきいきと活動していらっしゃいますよ」(佐藤氏)
2位にランクインした「健康寿命のためのシニアフィットネス」も、子供に面倒をかけまいという自立心が要因の一つだろう。これまでは、若い世代に支えられてきた高齢者。今年は自らを支え始めた。