健康部門
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1位
うつは誰でもなる病気
社会がうつと向き合う決断
ストレスチェック制度が始まり、今年は多くの企業が初回を実施
警察庁のまとめによると、2015年の自殺者数は前年比1,456人減の2万3,971人で、6年連続して減少している。その一方で、長時間労働やパワーハラスメントが原因でうつ病などの精神疾患を発症し、労働災害を申請する人が増えている。厚生労働省が公表した2015年度の労災補償状況によれば、その人数は前年度比59人増の1,515人と、過去最多を記録。2005年度の申請者数(656人)と比べると、10年間で2倍以上に増加した計算になる。こうしたなか、従業員が50人以上の企業を対象に、従業員の心の健康状態を年に1回調べることを義務付ける「ストレスチェック制度」が昨年12月にスタート。対象企業は、今年11月までの実施が義務付けられている。
ストレス解消の取り組みを意識的に行っている人が85%
職場で受けるストレス以外にも、「介護」「就活」「出産」などがうつの引き金となりうる。とくに「産後うつ」は産後女性の10人に1人が経験するとされている。また、うつの引き金になるだけでなく、脳細胞や血管を破壊することによって死を招くような「キラーストレス」ともいわれるストレスの存在も明らかになっている。
オールアバウトが10月中旬、20代以上の男女500名を対象に実施したインターネット調査によると、こうした世の中の動きを受け、ストレス解消のための活動を意識的にしていると回答した人は85%に上った。活動の具体的な内容は、「睡眠をたっぷりとる」(45.4%)や「趣味に没頭する」(45.2%)、「適度に運動する」(36.6%)がトップ3に。ストレスによって健康や体調に影響が出た経験のある人は63.4%だったが、健康状態に影響が出た経験がない人でも、そのうちの8割近くがストレス解消の取り組みをしている。
また、うつ病に関する認識についての設問では、「誰でもなる可能性がある」「再発する可能性がある」については9割近くの人が「そう思う」と回答したが、「医学的な病気である」については「そう思う」が65.2%にとどまり、正しい認識が浸透していないようだ。
自殺問題も含めて、うつ病とその引き金となりやすいストレスへの関心・危機感が高まってきた事が、こうした数字にもはっきり表れています。しかし、うつ病に関しては、まだまだ本人の気の弱さを反映しているように受け取る傾向もあり、こうした誤解から必要な治療が遅れて病気が深刻化する事がないように、うつ病は基本的には治療薬によって対処すべき脳内の問題だという事の理解・啓発が課題です。
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2位
給料も休養も重要
健康企業で働く決断
従業員が健康であればこそ、生産性や収益が向上する――そんな観点から、従業員の健康を気遣う「健康経営」の考え方が広まりつつある。ロート製薬、大和証券グループ本社のように、CHO(チーフ・ヘルス・オフィサー)などといった呼び名で、社員の健康増進に取り組む責任者を置く企業も増えている。
国としても、膨らみ続ける社会保障費を抑える目的で、こうした動きを後押しする。経済産業省と東京証券取引所は2014年から、健康経営の取組みに優れた企業を「健康経営銘柄」に選定(原則として1業種1社)。長期的な視点で企業価値の向上を考える投資家にとって魅力ある企業として紹介している。さらに経済産業省は「健康経営優良法人(ホワイト500)」として2020年までに500社を認定する予定だ。
オールアバウトが10月中旬、20代から50代の男女444名(転職経験有222名・転職経験無222名)に行ったインターネット調査によると、転職先企業を選ぶ際に重視する条件は、「給与」(64.6%)、「やりがい」(43.9%)に続き、「健康に働ける環境」(42.1%)が3位にランクインした。また、健康経営をしている企業の動きについて聞くと、「重要だと思う」が88.3%を占める結果に。健康経営企業は人材採用においても有利になり、ますます企業価値を上げていくことを裏づけた。
企業経営において今ほど人材を重視しないといけない時代はないでしょう。あらゆる職種において採用難による人材不足が起きており、過重労働防止や有給休暇取得が難しくなっています。この負のスパイラルを変えられるのは、採用力への投資ではなく、人材への投資です。今後採用力の向上を目的に、健康経営を推進する企業は増えていくでしょう。
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3位
かかりつけ医は画面の向こう
ITで健康になる決断
高齢化の進行で増大していく医療費を抑えるため、政府は「戦略市場創造プラン」のテーマの一つに「国民の健康寿命の延伸」を掲げ、ヘルスケアビジネスを政策的に後押しする取り組みを始めた。それを背景に、予防サービスや健康の維持を主眼としたセルフケアビジネスの必要性も高まっている。
こうした状況下に登場し、人気を集めているのが、医師などの専門家にネット経由で深夜でも相談できるヘルスケアサービスだ。たとえば、深夜0時まで医療・健康の専門家に相談可能なヘルスケアメディア「Doctors Me」を運営するサイバー・バズによると、2013年8月のサービス開始以来、相談累計件数は3万5,000件。サイト利用者数は約300万人に上り、増加傾向にあるという。また、オンラインカウンセリング「cotree」によると、同社のメッセージ・スカイプ相談等の利用者数は2016年現在、前年同期比5.2倍に上るという。
オールアバウトが10月中旬、20代以上の男女500名を対象に実施したインターネット調査によると、50%がこうしたサービスを「使ってみたい」と回答した。また、この人たちに利用したいシーンを尋ねると、「通院時間がないとき(52.8%)」「診療時間外のとき(48.8%)」がトップ2に。子どもがいる男女においては、「子ども・パートナーを病院に連れていくか迷うとき」という回答が42.9%と、全体の31.2%を大きく上回り、子どもを医者に連れて行くべきかの判断材料としても期待されていることがわかった。
ITを介したサービスの利点は、時間的・場所的制限がほぼないことのほか、相談しにくい症状や、通院に至らないことでも気軽に聞ける点です。子どもの健康管理以外にも、大病の早期発見や予防のための生活指導、健康診断の結果を相談するなどの使い方も可能。こういったサービスが浸透すれば、人々の健康意識の向上につながるのではないでしょうか。
~未来予測~
人工知能で医療ビックバン
今年8月、東京大学医科学研究所が次のような発表をし、世界中を驚かせた。IBMが開発したAI(人工知能)の「Watson」が、2,000万件以上の癌に関する論文を学習して推論し、診断が難しい患者の病名(二次性白血病)を10分で見抜いて、治療方法を医師にアドバイスした。その結果、患者の病状は数カ月で快方に向ったというのだ。また、Googleが買収したディープマインド社と英ロンドン大学病院が提携し、癌治療にAIを活用するという。このように、膨大なデータをAIに読ませ、より的確な診療に役立てようという取り組みが増えはじめている。
国内企業の研究・開発は、海外に比べて出遅れ感があると言われているが、8月には大型経済対策として「医療のデジタル革命」が閣議決定されるなど、政府も支援の姿勢を示している。9月には、横浜市が全国のレセプトデータを分析して医療政策に役立てると発表するなど、自治体の医療ビッグデータの活用も始まった。こうした国や自治体の取り組みが、医療分野におけるAIおよび医療ビッグデータ活用分野の市場拡大に貢献すると見られている。AIが診療に参加するのが当たり前というSF的な未来は、意外と近くに来ているようだ。
家庭の医学 ガイド
現代社会において医療テクノロジーはめざましく日々発展していますが、多忙を極める医師がすべてを把握するのは困難です。そのため、あらゆる医療情報を元に考察できる人工知能の出現は、常に冷静な判断や的確な行動を求められる医師にとって非常に心強いものとなるでしょう。そして、世界中の人々に提供される診断と治療が、今まで以上に迅速・正確に享受できる世の中へとなるはずです。