妊娠・出産部門ランキング
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新型出生前診断を受ける決断、受けない決断
“異常が確定した人の97%が中絶”という数字だけが一人歩き
妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる「新型出生前診断」がスタートし、今年4月で1年が経った。この診断は35歳以上を対象とするもので、ダウン症など3種類の染色体異常があるかどうかを調べることができる。この1年間(2013年4月~2014年4月)に受診した7,740人のうち、陽性と判定されたのは142人(受診者全体の1.8%)。うち113人が羊水検査で異常が確定し、このうち97%にあたる110人が人工妊娠中絶をしたという。
6月末にあったこの報道に対し、「妊娠・出産」ガイドの河合蘭氏は次のように言う。
「確定者の97%が中絶を選択したという数字が大きく報道されましたが、そもそもこの診断を受けた人は20万円以上の費用をかけて予約困難な診断に臨んだ人たちで、日本の平均像ではありません。この報道だけでみんなが中絶を選んだように見えてしまうのはよくないと思いました」
結果をどう受けとめるか受ける前に夫婦で話し合いを
ちなみに、妊娠した女性の数を2010年度と同じ111.9万人として、この診断を受けた人の割合を計算すると、0.7%弱にすぎない。今はまだ受診すること自体が、それくらいレアケースなのだ。しかし、晩婚・晩産化が進む中、出生前診断を受ける決断をする女性は、今後、増えていくだろう。
今年1月末にマクロミルが35~50歳の女性100人に行ったアンケートでも、「あなたが妊婦だとしたら、新型出生前診断を受けたいと思いますか」の問いに対し、「受けたい」と答えた人は69%に上った。「陽性の判定が出た場合、どうすると思いますか」の問いには61%が「わからない」とし、「人工妊娠中絶をする」は24%と、「それでも産む」の約15%を上回った。
「妊娠・出産」ガイドの大葉ナナコ氏は、「受けるなら、その前に診断結果をどう判断をするかを夫婦でしっかり話し合って」とアドバイスする。
「受診して異常が認められなくても、子供が生まれた後に交通事故に遭ったり、診断では明らかにできなかったような障害が出る場合もあるわけです。ですから、『何らかの異常が認められたら、生まれて来る子にどんな準備をしてあげられるかを考えるために受診する』という考え方を普及させる必要もあるのではないでしょうか」(大葉氏)
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特別養子縁組で“親”になるという選択
今年から日本財団ハッピーゆりかごプロジェクトは4月4日を「養子の日」に制定。血縁関係のない子供を実子とする「特別養子縁組」の理解を深めるキャンペーンを始めている。
厚生労働省のデータによると、実親が育てることが困難な子供の家庭養護と里親委託率はアメリカで約77%(2000年頃)。これに対し、日本はまだ11%程度(2008年度)と少なく、施設養護中心でほとんどが乳児院や児童養護施設に預けられている。しかし近年、民間養子縁組あっせん事業に関する里親希望者からの相談件数は、2007年度の899件から2011年度は1,588件と4年間で2倍近くに増加。「特別養子縁組」は、不妊治療を受けたが子を授からなかった夫婦の新たな選択肢になり始めているようだ。
★「妊娠・出産」ガイド 大葉ナナコ氏
子供が施設ではなく同じ家庭で同じ家族と長く暮らす家庭養護を国連こどもの権利条約が推進しています。家庭養護は精神面や社会性の発達に欠かせなく、厚生労働省も里親委託率3割を目指し、里親斡旋も進んでいます。
★「妊娠・出産」ガイド 竹内正人氏
不妊治療が高額な海外では、養子縁組が不妊カップルの選択肢の一つとなっています。日本でも特別養子縁組について広く知られ、サポート体制が整えば、もっと見直されていくのではないでしょうか。
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利便性より支援体制 子育て重視で街を選ぶ
今年は5月に発表された「消滅可能性都市」が話題になった。
「消滅可能性都市」とは、2040年までに20~39歳の女性が半減すると予測される自治体。民間提言機関「日本創成会議」が独自の試算で全国1,800自治体のうち896がこれにあたると指摘した。減少率が最も高かったのは群馬県南牧村(89.9%減)だが、人口密度日本一の豊島区(50.8%減)も首都圏(23区内)で唯一ランクインし、衝撃が走った。
そんな中、人口が増加している自治体もある。その理由として考えられるのは、出産・子育て支援の充実。共働きが当たり前になり、自治体の支援の充実度で住む街を決める世帯が増えているのだ。たとえば、乳児養育手当や幼稚園授業料の助成などがある江戸川区は、人口はこの10年間で約2万4,000人増。教育日本一を目指すという教育振興プランを発表した茨城県つくば市も、この10年間で約3万人増えている。今後も、自治体の子育て支援や教育環境で住む地域を選ぶ傾向は続きそうだ。
★「妊娠・出産」ガイド 河合蘭氏
以前は子供の数だけ見ていましたが、消滅可能性の理由として、出産する女性の9割以上を占める20~39歳の女性の人口を見るようになったのは面白いと思います。