vol.3子育てにもやもや!
※1:出典:株式会社野村総合研究所
「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~
601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算 ~」(2015)
※2:キャシー・デビットソン(ニューヨーク市立大学大学院センター教授)の予測
AI時代、どんな力を育むか?
- では、AI時代の就職など、子供の将来に大きく関わる教育や学校選びについて解説していきましょう。まず、教育改革がどのように実施されるのか、ポイントを説明します。
- 自ら判断して行動し活躍できる人材育成を目指し、2020年に戦後最大の教育改革が実施されます。
センター試験の廃止に伴い導入される「大学入学共通テスト」では、知識・技能だけではなく、思考力・判断力・表現力が重視され、記述式の問題導入や英語のスピーキング、ライティングも含めた4技能を問う形態に変更となります。それに応じて小学校でもプログラミング教育の必修化や、主体的な学習を促すための授業改善などが段階的に実施されていきます。
- 学校教育でも新しい時代に向けた改革が進むんですね! 学校で教えてくれるのは安心だな。期待していいですよね?
- 今回の調査の結果でも約6割の親が教育改革に“期待する”と答えており、各施策の認知率も高い結果となりました。
- ただし、過去「ゆとり教育」も20年を経て大きな方向転換をしたことを踏まえると、政府が主導する教育行政というものが、必ずしも成功するとは限らない。ゆえに私たちに求められる真の力とはどんな教育行政、どんな社会であっても通用するものでなければなりません。それこそが「読解力」です。
- 読解力ですか。確かにしょう太も算数の文章題は
超苦手だけど・・・。
- ここでいう読解力とは、ただ単に「文章を読む力」というだけではなく、他者の発する言葉や他者の行動を読み解く力、ひいては社会のニーズや変化を読み解く力をも含みます。なぜこの力が必要なのかというと、「読解力」はAIが苦手とする能力の一つだからです。
一方で、国際機関の調査では、現代の日本の子供は「文章を理解し、自分の考えに生かすことが苦手」「視覚情報と言葉の結びつきが希薄」という読解力における課題が浮き彫りになっています。※ ※国立教育政策研究所OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)「読解力の向上に向けた対応策について」より
- 読み解く力か。でもそれってどうやって身に着けるものなんですか?
- 子供の「読解力」を鍛えるトレーニングは実はとても簡単です。小さいころから子供にたくさんの本を読ませることや、語彙力以上の文章にもチャレンジさせること、子供同士で人間関係をうまく作らせることなどです。
たとえば最近では子供同士のケンカにもすぐに親が介入するなど、親が先回りして子供を危険や困難から遠ざける傾向があります。自らの力で乗り越えさせる経験をさせないまま育てられた子供は、自立心や責任感が育ちにくく、大人になったときに人との関係を上手に構築できないなど人間関係で苦労する場合があります。
- 自分が子供だったときは、子供のケンカに親がでてくるなんてまずなかったもんな。
- 大切なことは子供にきちんと「困難を与える」ということ。別に「千尋の谷」に突き落とせと言っているわけではありません。子供がほんのちょっと我慢すれば乗り越えられる小さな困難を普段から与えましょう。たとえば、子供に服をきちんとたたませるとか、家に帰ってきたらきちんと靴をそろえさせるとか、要するに当たり前のことをきちんとさせるようにする。そしてそれができた時にはきちんとほめる。そうすることで子供は、小さな自己肯定感を毎日得ることができ、意欲的に取り組むようになるといわれています。意欲的な子は、自分のミスに対しても積極的に改善しようと努力し、将来立ちはだかる難しい問題にも自ら立ち向かっていけるようになるでしょう。
- あれも聞いといたほうがええんちゃうん?
中学受験のこと。
- あ、そうだ。学校選びはどんな風に
変わってきているのですか?
受験させるか、させないか
- 今回の調査の中で、中学受験を検討している親に聞いた調査では、「学校の教育方針への共感度」を学校選びで重視すると答えた方が半数で最多となりました。
- 偏差値を気にする人は約4割かー。意外に少ないな。自分たちの時代も偏差値で学校を選ぶのは当たり前だったけど・・・。
- たしかにそうですね。
調査では4割と出ていますが、私はもっと多くの方が「偏差値」という呪縛にとらわれている気がします。中学受験というものが始まって半世紀以上この「偏差値」という価値基準一本でやってきてしまったわけですから、その呪縛からなかなか逃れられないのも無理からぬことです。
しかし、今の子供達が大学を卒業するころには、今の未来予想図とは全くかけ離れた社会が広がっている可能性があるわけです。ではなにをもって進むべき道を決めればよいのでしょう。そのヒントはAIが何年かかっても身に着けることができないものに隠されています。それこそが「人間性」です。単なる偏差値や大学進学実績だけをウリにしている学校ではなく、きちんと人間性を磨かせてくれる環境が整っているかどうかを見極めてください。異文化との交流という観点で言えば、海外留学という経験はものすごく大きな意義を持つでしょう。
学校選びはお子さんの6年間を決める重要な選択です。公立・私立含めていろいろな学校を訪れ、その学校の先生方の生の声を聴き、自らと子供達の感性によって、真剣かつ慎重に学校選びをしてほしいと思います。
- そもそもうちの子は勉強する意欲が無いんですが・・・。
- 勉強はしないけれど、子供達がサッカーの練習をすすんでするのはなぜでしょう。それは「勉強=つまらない」「サッカー=楽しい」からに他なりません。そして「人から強制されたもの」というのは「=つまらないもの」となってしまうわけです。これを「心理的リアクタンス効果」といいます。中学受験はいわゆる「早期教育」と呼ばれる一分野です。自ら勉強しないのであれば、精神的に未成熟なので中学受験で勝負させるのはやめるか、もしくは本人の成績で行くことのできる範囲の中から志望校を捜して、むやみに勉強を強制しないことがおすすめです。
- つまり主体性が大事ってことね・・・。主体性どころか、何をやるにも集中力が続かなくって・・・。やる気が出るように、家でも家の手伝いやテストができたときはたくさん褒めるようにしてるんですけどね。
- いやいや、「勉強しなさい!」って怒鳴ってたじゃん。
- それはケンジがしょう太と一日中ゲームばっかしてたからでしょ!?
主体性を育む子育てとは?
- まずは、アラフォー世代が子育てのどんなことに悩んでいるかみていきましょう。
- 調査からもわかるとおり、洋子さんと同じく、子供の集中力の欠如や、意欲の低さ、しかり方に悩む人は多いです。また、子供とのかかわり方で重視していることに約9割の人が「褒める」をあげていますね。ここで気を付けたいのは、ただ褒める、しかるのではなく、いかに「自主性を伸ばせるか」ということです。
例えば、次の言葉をかけられる子供の気持ちを想像しながら、比べてみてください。
- 命令形を使うと、多くの場合子供は、反発する・逃げる・固まるかの反射反応を起こします。逆に、「親も一緒に考える」スタンスで質問形を用いるなら、子供はより主体的に考え、行動しようします。
- 毎日忙しくて時間無いし、何かあったときはつい「~しなさい!」とか解決策を言ってしまって、子供にどうしたら良いか聞いたことはあんまりなかったかも・・・。
- 子供のことを熱心に思うほど、「~しなさい!」「~してはいけません!」といった、命令形や指示形で子供に迫ってしまうこともあるかもしれません。それでも、普段、伝え方に少し気を配ることで、長い目で見ると、その子に培われる力は大きく違ってきます。
- 褒めるときはどうしたらいいんですか?
- 例えば「100点をとって賢いね!」と「良くできた結果」を褒めるより、「ゲームをする時間を減らして勉強頑張ったね。おめでとう!」と「過程の努力」を認めてあげるといいでしょう。
- でもなぁ・・・。うちのしょう太、それで自主的に勉強するようになるかなぁ。
- 学習については、まずは習慣にするために、傍についているのも方法です。習慣がついてきたら、例えば、親は傍の台所で用事をするなど距離を持つようにし、子供に「手伝ってほしい」と言われたら、手や口をだすよう心がけることで、子供の自主性も育ちます。
また、子供は「自分の考えを周りが聞いてくれ、話し合い、自らアイデアを実行することで変化が起きる」という体験を重ねることで、主体性を培います。それには、例えば、家族会議を定期的に開くのも方法です。皿が流し台にたまる、宿題をしない、ゲームの時間が長いといった問題について、「どうしたらいいかな?」と、定期的に話し合い、子供なりの解決策を実行していきます。そして守れない場合は、「どうしてうまくいかないんだろうね?」と、再び話し合ってみます。家庭でのこうした試みを繰り返すことで、子供は、周りのコミュニティーや人生に対しても、より主体的な当事者意識を育むでしょう。
- 日ごろのコミュニケーション、気を付けなきゃなぁ。
- それもそうだけど・・・。公立か私立か、あといずれは留学もさせたいし、教育費もたくさんかかりそう。お金足りるかなぁ・・・。仕事ますます辞められないっ!
- え、でも奨学金とかあるし、大丈夫じゃないの?
アラフォー世代の教育費準備の
ポイント
- 最近はSNSの普及によりほかの家庭がどんな教育をしているか分かるようになりました。ただし、いたずらに情報に踊らされ、我が家の家庭方針からズレた教育費を使ってしまうことには要注意。昔に比べて晩婚・晩産化していることと、もらえる年金が昔よりは減っているので、アラフォー世代は自分たちの老後費用の準備も必要なのです。
- わかってはいたけど、教育費って家計へのインパクトが大きいですね・・・。
- 中学受験するともっとかかるんやろ?
- 私立の中学・高校に行く場合、通塾の時期と私立中高に通っている期間は、ざっくりと今の生活費から、子供一人あたり100万円がプラスされるというのが目安です。現在年100万円以上貯蓄できていない場合は、まず家計を改善してから、私立中学受験を考える必要があります。年100万円出せたとしても、それでいっぱいいっぱいだと危険。教育費として年100万円上乗せしたうえで、老後費用や住宅購入その他の貯蓄ができるかもあわせて考えましょう。
- 100万捻出できるかな・・・。しかも老後の費用も準備しながら?!
- 老後費用準備の注意点としては、退職金が思ったほどもらえなかったり、55歳の役職定年により収入が減ったり、介護で実家に帰ることになり共働き家庭が、一人の収入になってしまったりという、収入減を考えておくこと。持ち家かどうか、月の生活費がどれくらいかなどにもよりますが、仕事を引退する際に、ざっくりと1家庭(夫婦で)3000万円の貯蓄(退職金やiDeCo含む)があると安心というのが一つの目安です。
- 学費や老後のお金も含めてもう一回家計のシュミレーションしてみなくちゃ!
- お金といえば、塾通いが始まると、子供にICカードを持たせる親が多いですよね。子供だからお金の管理ができず、チャージを使ってしまう、なんて話も聞くんですが・・・。
- 金銭教育はこれからの時代ますます重要になります。日本の学校ではなかなか習わないことですので、自立した大人になるためにも、家庭で教えておきたいですね。 親子でできる金銭教育は、お金を「使う」「貯める」「誰かのために使う(寄付する)」の3つを意識するよう伝えること。お金は「使い切る」「ひたすら貯める」のどちらかに偏るのではなく、さらに「誰かのためにも使うこと」でお金の価値が上がることを小さいうちから身につけさせたいものです。
子供のうちから
身に着けさせたい金銭教育の
ポイント
- 子育ての最終目的は、その子が社会に出て、生き生きと持てる力を発揮し自立することです。大人が凝り固まった固定観念に縛られ、前時代的な子育てをしていたのでは、子供達を時代の変化に対応できない大人に育ててしまうかもしれません。代々受け継いできた子供への関わり方や教育の在り方について、今こそ固定化された価値観を捨て、新しい時代を生きる子供たちのために、我々大人が柔軟な発想への転換を図りましょう!
- 変化に負けず、自分の力で幸せになってほしいのに、いつの間にか私がしょう太にこうなってほしい、ということを押し付けていたかも・・・。どう子供と関わるか、これからの学校選びも、一回リセットして考えてみよう。
- しょう太の人生を生きるのはしょう太自身だからね。手助けできるのもあと少し。子供の自立を支援するためにも、まずは大人が変わらなくちゃ。
車の自動運転はもうすぐそこまで来ていますし、AIとビッグデータを活用した医療診断もすでにスタートしています。世界は我々の想像を超えて、加速度的に進化し続けていて、子ども達は将来、さらに進んだ世界で生き抜いていかねばなりません。今回の調査でも子供の将来に対し“AI時代の職”に関して不安を持つ親が多く「職に就けるか」「金銭的に自立できるか」などの回答がみられました。