■「信頼できる2種類の情報」とは?
時代の流れといえばなんですが、PRの概念も日本において変わってきましたよね。その昔、PRの中心はメディアリレーション。“飲みニケーション”と言う言葉もありましたけど(笑)、そういうコミュニケーションも含めて、いかにメディアの記者さんといい関係を築いて、その関係の強さをよりどころにして、自分たちの情報を記事にしてもらい、世の中に発信するか。そういうPR活動をしていた企業が多かったと思います。しかしこの何年かで、PRというものが本来の発想に立ち返っているように感じているんです。
PRの本来の発想、世間(パブリック)との関係づくりということですか?
ええ。そもそも、PR=パブリック・リレーションズの「パブリック」の中には一般社会のいろいろなステークホルダーが含まれています。そのステークホルダーに情報を届ける手段が“メディア”であるために、メディアリレーション=PRと狭域でとらえられていたのかもしれません。
自分たちのサービスのお客様はもちろん、まだ接点のないさまざまな立場の人にもちゃんと情報を届けて、しかも好意的に受けとめてもらうためのPRはなにか?そう考えたとき、メディアを介したコミュニケーションは依然として重要であるなか、それ以外の手段を活用することの必然性、今までの一方通行の情報発信だけでは不十分だということに、広報の方々も気付き始めている。
自分たちのサービスのお客様はもちろん、まだ接点のないさまざまな立場の人にもちゃんと情報を届けて、しかも好意的に受けとめてもらうためのPRはなにか?そう考えたとき、メディアを介したコミュニケーションは依然として重要であるなか、それ以外の手段を活用することの必然性、今までの一方通行の情報発信だけでは不十分だということに、広報の方々も気付き始めている。
自社のファンを増やすことの大切さを再発見しているのだと思います。昔は情報伝達の場として影響力が大きい場所はメディアに限られていましたが、今は個人でもYou TuberやYahoo!のオーサーなど、インフルエンサーの発信によって爆発的に拡散される。メディア以外の手段も、影響力が増しているんですよね。
個人の影響力が大きくなる一方で、気を付けるべきは情報の信頼性ですよね。
フェイクニュースが横行し、何が本当の情報かわかりにくい時代に、誰からの発信を信じるか。私は、信頼が置ける人は2種類しかいないと思っているんです。
1つは、自分がよく知っている身近な人。「この人が言ってるんだから本当だろう」と思えるほどよく知っている人ですね。もう1つは、本当かどうかをロジカルに判断しやすい材料を持っている人。その材料として、専門的なバックグランドを持っていることは大きな強みなんですよね。
1つは、自分がよく知っている身近な人。「この人が言ってるんだから本当だろう」と思えるほどよく知っている人ですね。もう1つは、本当かどうかをロジカルに判断しやすい材料を持っている人。その材料として、専門的なバックグランドを持っていることは大きな強みなんですよね。
そうですよね。All Aboutではサイト開設時からAll Aboutガイドが顔出し・実名で情報発信しているんですね。中には抵抗があるガイドの方も当初いたんですが、専門家として信頼性を担保するには顔出し・実名には絶対に価値があると信じて、方向性を変えずにやってきたことが、今追い風になっていると感じています。
■オタクのマス化が進んだ?! 専門家のイチオシが響く時代
いろんな番組を見ていても、All Aboutガイドの方が解説役として出ているのを拝見します。テレビ番組でも『マツコの知らない世界』をはじめ、専門家を登場させる企画が増えていますし、好評ですよね。
ありがとうございます。ただ、専門家がメディアで重宝される背景として、「情報疲れ」のような現象が起きているのではないかと思っていて。デジタルが普及するにつれて、メディアも増えましたし、SNSからも大量に情報が流れてくる。ライフスタイルの多様化にあわせて、便利な商品やサービスがたくさんある。とにかくモノや情報がたくさんありすぎて、何を選べばいいのかわからない。そもそも選ぶのも面倒くさい。そんな状況に陥っているのではないかと思うんですね。
だからこそ、信頼できる専門家がイイって言ってるものを頼りたいというニーズは増えているのかと思っていて。わざわざ何十軒もお店を回ったり、スペックやレビューを比べ読んだりしなくても、例えば家電だったら家電の専門家が「今はこれが買い!」とオススメしているものから選ぼうかなとか。
All Aboutでも専門家がイチオシするものを紹介する文字通り「イチオシ」というメディアがあるのですが、商品サイトへの送客率がものすごく高いんですね。「成城石井で手土産を買うならコレ!」のように、紹介するものを1記事1つに限定していることも分かりやすいのかもしれません。
だからこそ、信頼できる専門家がイイって言ってるものを頼りたいというニーズは増えているのかと思っていて。わざわざ何十軒もお店を回ったり、スペックやレビューを比べ読んだりしなくても、例えば家電だったら家電の専門家が「今はこれが買い!」とオススメしているものから選ぼうかなとか。
All Aboutでも専門家がイチオシするものを紹介する文字通り「イチオシ」というメディアがあるのですが、商品サイトへの送客率がものすごく高いんですね。「成城石井で手土産を買うならコレ!」のように、紹介するものを1記事1つに限定していることも分かりやすいのかもしれません。
確かに、そうやってジャンルを細かく設定してもらえると、選ぶ側としてはラクですよね。まさに専門家が目利きとして機能している。先ほどの『マツコの知らない世界』や朝昼の情報番組もそうですが、求められるものがどんどんオタク化しているなというのは感じていて。いわばオタクのマス化が進んでいるのではないかと思います。
20年前だったらただオタク呼ばわりされていたような存在が、今は脚光を浴びて「このジャンルだったらこの人」と注目されている。そういった面でも、ニッチな情報をこそ欲する人が多くなってきているという、この時代特有の空気を感じますね。ニッチなほど注目を集めやすくなっている。
20年前だったらただオタク呼ばわりされていたような存在が、今は脚光を浴びて「このジャンルだったらこの人」と注目されている。そういった面でも、ニッチな情報をこそ欲する人が多くなってきているという、この時代特有の空気を感じますね。ニッチなほど注目を集めやすくなっている。
■今後のプレスリリースのあり方
オタクのマス化、ほんとうにそういう時代になりましたよね。最後にお伺いしたいのですが、こういった時代の流れを踏まえて今後、どのような情報発信が企業に求められていくとお考えですか?
今後はプレスリリースのあり方もさらに変わっていくのではないかと思います。定型のプレスリリースではなく、もっと「生の言葉」で、下手でもいいから自分の言葉で語るリリースがあってもいいんじゃないか、と。プレスリリースは、新しい情報との出会いの瞬間を演出するもの。リリースを通じて、その目新しさや面白さ、そこに込められている開発者の思いなどを生々しく共有できれば、情報の受け手が新たな発信者となり、より広く拡散されていくはずです。
人の心を揺さぶり、人を動かす情報を発信する。そこに新たなPRの可能性が潜んでいるのではないでしょうか。
人の心を揺さぶり、人を動かす情報を発信する。そこに新たなPRの可能性が潜んでいるのではないでしょうか。
発信する情報も“オタク化”することが、拡散の秘訣かもしれませんね(笑)。
そうですね(笑)
あとは、企業が個々人にリリースを送るという習慣を当たり前のことにしたいですね。メディアや専門家に届けるだけのプレスリリース配信サービスではなく、いろいろな対象者を選べるという状況まで持っていきたい。今回の提携はその第一歩だと考えています。企業の側は、個人がプレスリリースにアクセスしているという認識が薄いんですよね。特に大企業であればあるほど希薄です。
私たちはいつも発信する情報のバランスというものを意識していて。発信する側のバリエーションと、受ける側のバリエーションがある程度バランスがとれていないといけないと思っているんですよ。発信者ばかり増えても受け手は扱いきれないでしょうし、生活者がじかに情報にアクセスしようにも、生の情報は一般向けではないものも多い。情報のニーズを見いだして、アクセスしてもらうための工夫が必要になってくると思うんですね。
今、PR TIMESは地方展開をしたり、スポーツチームやNPOに使っていただいたり、いろいろな方面で活用いただいているんですが、それはまさに情報を発信する側のバリエーションを増やす取り組みなので、今回のように情報を受ける側のバリエーションを増やしていくという取り組みも、今後は注力していきたいと考えています。
専門家に限らず、広報の方々が「この人たちに情報を送っておくとメリットがある」と感じられるような対象者、さらには情報を必要としていて新たな活用を生み出すような方たちを、リリースを送る選択肢としてさらに増やしていきたいですね。
今、PR TIMESは地方展開をしたり、スポーツチームやNPOに使っていただいたり、いろいろな方面で活用いただいているんですが、それはまさに情報を発信する側のバリエーションを増やす取り組みなので、今回のように情報を受ける側のバリエーションを増やしていくという取り組みも、今後は注力していきたいと考えています。
専門家に限らず、広報の方々が「この人たちに情報を送っておくとメリットがある」と感じられるような対象者、さらには情報を必要としていて新たな活用を生み出すような方たちを、リリースを送る選択肢としてさらに増やしていきたいですね。
本日はありがとうございました。
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