<オピニオンvol.1>正しいデータに向き合わなければ、デジタル広告市場は崩壊する ― デジタルマーケティングの未来 ―
業界ニュースを取り上げ、解説や分析、意見を掲載する新コーナー「Opinion」。初回はメディアビジネス本部 執行役員 本部長の箕作聡が担当。メディアからプラットフォームへ変革を宣言するオールアバウト、その背景にある業界で起きているデジタル広告市場の不条理について取り上げます。
■ブランドが生活者の注意を引くのは難しい
デジタルコンテンツが私たちの生活に溶け込んだ今、生活者が1日に接触する広告は4,000以上と言われている。そのうち彼らの脳内に留まるメッセージはどれくらいあるだろうか。
参入障壁の低さゆえにあらゆるWEBメディアが乱立し、情報発信の場が増え続ける一方、商品やサービスの多様化により企業が発信するメッセージは膨大だ。生活者の需要よりも、コンテンツの供給が大幅に上回り、情報は氾濫している。
そこで生活者は情報を消化しきれず、自分に関係のない情報を無視し、邪魔な広告をブロックする。情報取得の主権が圧倒的に生活者へ移り、モノやサービスが溢れ、消費が成熟しているこの時代に、いくら大量にメッセージを流しても生活者の注意を引くことはできないのである。
メッセージが生活者に届かない今、考えるべきはいかに生活者に能動的な情報取得を促すかだ。そのために企業は、彼らの興味や関心に寄り添い、伝えたいメッセージを彼らが求める有益な情報に変換しなければならない上、生活者に望まれる形で継続的に発信する必要がある。
デジタル広告市場において刈り取り型広告領域はレッドオーシャン化し、顕在層が頭打ちになりつつある中、企業は「認知」と「獲得」の中間にいる潜在層にアプローチする手段を考えるべきだろう。
参入障壁の低さゆえにあらゆるWEBメディアが乱立し、情報発信の場が増え続ける一方、商品やサービスの多様化により企業が発信するメッセージは膨大だ。生活者の需要よりも、コンテンツの供給が大幅に上回り、情報は氾濫している。
そこで生活者は情報を消化しきれず、自分に関係のない情報を無視し、邪魔な広告をブロックする。情報取得の主権が圧倒的に生活者へ移り、モノやサービスが溢れ、消費が成熟しているこの時代に、いくら大量にメッセージを流しても生活者の注意を引くことはできないのである。
メッセージが生活者に届かない今、考えるべきはいかに生活者に能動的な情報取得を促すかだ。そのために企業は、彼らの興味や関心に寄り添い、伝えたいメッセージを彼らが求める有益な情報に変換しなければならない上、生活者に望まれる形で継続的に発信する必要がある。
デジタル広告市場において刈り取り型広告領域はレッドオーシャン化し、顕在層が頭打ちになりつつある中、企業は「認知」と「獲得」の中間にいる潜在層にアプローチする手段を考えるべきだろう。
■このままではデジタル広告市場は崩壊する
しかし、そのマーケティングを行うデジタル広告市場は健全ではない。生活者との接点がデジタルに急速に移行するなか、アドテクノロジーも目覚ましい進化を遂げた弊害として、生活者・企業・メディアのエコシステムで成り立つはずのデジタルマーケティングの世界は崩壊しようとしている。
漫画村の報道が記憶に新しいが、読了率や滞在時間などではなく、インプレッション(IMP)という一つの指標で取引されるオープンなデジタル広告市場では、IMPを稼ぐためだけに作られた悪質なメディアが有象無象に存在し、粗悪な広告在庫が流通している。
複雑化した市場の透明性は低く、企業は実際の価値を知らずに安価な在庫を購入する。こうして広告費は悪質なメディアに流れ、高いコストをかけてコンテンツを制作する良質なメディアの収益はあがらない。
「悪貨は良貨を駆逐する」
グレシャムの法則にあるように、淘汰されるべき悪質なメディアが生き残り、良質なメディアが市場からドロップアウトする、いわば逆淘汰の現象が今起きているのだ。
粗悪な広告在庫には、企業のブランド価値を毀損する反社会勢力のサイトへ掲載されるものや、生活者が発見できない場所に掲出されるもの、そもそも掲載されない場合もある。悪質なメディアはIMPを稼ぐためにあらゆる方法で生活者に情報を発信し、生活者はデジタルでの体験を阻害される。そんな邪魔な広告の効果が高いわけもなく、企業は広告費を無駄にしているわけだが、それを把握している企業は多くない。正しいデータが開示されていないために判断ができないのだ。
誰にとっても幸せではない、この不毛な市場の健全化なくしては、デジタル広告市場は崩壊する。この先長くデジタル世界で生きるであろう生活者に有益な情報を提供し、企業にとって適切な広告効果をもたらすことで、優良なメディアに収益を還元する持続可能なエコシステムの構築が不可欠だ。
漫画村の報道が記憶に新しいが、読了率や滞在時間などではなく、インプレッション(IMP)という一つの指標で取引されるオープンなデジタル広告市場では、IMPを稼ぐためだけに作られた悪質なメディアが有象無象に存在し、粗悪な広告在庫が流通している。
複雑化した市場の透明性は低く、企業は実際の価値を知らずに安価な在庫を購入する。こうして広告費は悪質なメディアに流れ、高いコストをかけてコンテンツを制作する良質なメディアの収益はあがらない。
「悪貨は良貨を駆逐する」
グレシャムの法則にあるように、淘汰されるべき悪質なメディアが生き残り、良質なメディアが市場からドロップアウトする、いわば逆淘汰の現象が今起きているのだ。
粗悪な広告在庫には、企業のブランド価値を毀損する反社会勢力のサイトへ掲載されるものや、生活者が発見できない場所に掲出されるもの、そもそも掲載されない場合もある。悪質なメディアはIMPを稼ぐためにあらゆる方法で生活者に情報を発信し、生活者はデジタルでの体験を阻害される。そんな邪魔な広告の効果が高いわけもなく、企業は広告費を無駄にしているわけだが、それを把握している企業は多くない。正しいデータが開示されていないために判断ができないのだ。
誰にとっても幸せではない、この不毛な市場の健全化なくしては、デジタル広告市場は崩壊する。この先長くデジタル世界で生きるであろう生活者に有益な情報を提供し、企業にとって適切な広告効果をもたらすことで、優良なメディアに収益を還元する持続可能なエコシステムの構築が不可欠だ。
■オールアバウトが創る「健全な広告市場」と「良質なメディア」の世界
オールアバウトは昨年、良質なメディアのみで構成し、RTBに接続をしないアドネットワーク「All Aboutプライムアド」を立ち上げ、アドベリフィケーションも導入した。2018年度はドコモとの資本業務提携によりネットワークを拡張し、まさに健全な市場の土台を作っているところだ。
総合情報サイト「All About」で18年かけて築いた生活者との関係性を基盤に、良質なメディアや企業と直接手を組むプラットフォームになる。その世界の実現に向け、我々は猛進している。
執筆者:箕作 聡(みつくり さとし) メディアビジネス事業部 メディア本部 本部長 明治大学卒業後、2004年にJTB法人東京に入社。2006年、オールアバウトに転職。新規事業での顧客開拓のほか、グループ会社での紙媒体の広告営業を経たのち、総合情報サイト「All About」のデジタル広告ソリューションの提案に長らく従事。現在は執行役員 メディア本部長として、多くの部下を指揮する。 |
--プラットフォーム構想に関する記事はこちらから
<リーダーズvol.13> 目指すべきは持続可能なエコシステムの構築
オールアバウトでは、2017年にアドベリフィケーションツールを導入し、優良メディアのみに絞ったアドネットワーク「All Aboutプライムアド」をローンチしました。次いで2018年5月よりNTTドコモと提携し、同社の膨大なユーザーデータと「All About」の3000万MAUのデータを掛け合わせて、新たなインサイトの発見や広告商品の開発などに取り組んでいく考えです。オールアバウトの現状のアセットと、今後に目指すプラットフォームの姿について、メディアビジネス本部の中島さんと佐々木さんに聞きました。
<リーダーズvol.14> 多様な価値観が溢れる時代にAll Aboutが目指す"One to One"の提案
『あなたの明日が動きだす』をスローガンに、信頼ある情報を提供し続ける総合情報サイト「All About」。今後、さらなるユーザーとのエンゲージメント強化に向けた新たな取り組みについて、編集長の大塚晋さんと、高橋幸代さんに詳しくお話を伺いました。
(写真:布村千夏)
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