■スペックで語るのではなく、消費者目線で語る
第3部では、ゲストのAll About「家電」ガイドの戸井田園子さんが登場。All Aboutの初期からガイドを務め、メディアにも数多く露出している戸井田さんに、日ごろのお仕事内容から、企業広報として専門家とどのように付き合うべきか、そのノウハウをお話いただきました。
All About「家電」ガイド 戸井田園子
家電で時間を産む『時産』を提唱する、家電コーディネーター
大手プレハブメーカーでインテリアコーディネートを担当し、インテリア研究所を経て商品企画部へ。そのとき身につけた性能・デザイン・価格などをトータルに比較し、商品の優劣を見極める技術をもとに、独立してフリーに。現在はインテリア&家電コーディネーターとして活動中。
――まず、戸井田さんの日ごろのお仕事を教えてください。
「雑誌や新聞、Web、ラジオやテレビなどで家電に関する企画があった際に、製品の選定・審査・検証などを行っています。いくつか連載を持っているので、実際に商品を使ってレビューを書く、記事として出力する仕事もあります。このようなメディア関連のお仕事が半分。
もう半分は、家電メーカーの製品開発のコンサル、カタログ内容や営業企画のアドバイスなどですね。たまにいただくお仕事としては、テレビドラマ内で使用する家電のセレクトや、クイズ番組で出題される家電ネタの正誤検証などもやっています。」
媒体比率で言うと、どちらが多いでしょうか?
「やはり紙媒体やWeb媒体が多いですね。雑誌・Web媒体が50%、新聞が25%、テレビとラジオで25%でしょうか。ラジオはレギュラーを持っているので。」
――紙媒体ではどのような雑誌に書かれているのでしょう。
「一番多いのは専門雑誌です。家電・モノ系の雑誌、ビジネス系、生活系、女性誌などの連載もあります。家電はシーズンごとに大きく変わるので、毎月ではなく3カ月に1回程度の頻度で書いていますね。」
――戸井田さんは生活者目線で語れることを武器にされていますよね。
「男性目線で家電を語るとスペックだけになってしまうことが多いので、選び方や使い方などの女性目線、消費者目線を大切にしています。」
■リアル店舗でしか得られない情報もある
――そんな戸井田さんが情報を収集するための手段とは?
「Webであったり紙媒体であったり、メディアの情報は毎日チェックしていますね。PR TIMESさんも昔から登録していて、活用しています。家電、インテリア、住宅など興味のあることを登録しておけばどんどん届くので、原稿の合間だったり移動時間だったり、ちょっとした空き時間にタイトルだけをざーっと見て、今現在のおおよその流れを把握するのに役立てています。その中に知らないメーカーさんの名前を見つけたときは特に、中身までよく読むようにしています。それから私の場合はリアル店舗に行くことも大切にしています。」
――家電量販店に行くということですか?
「ええ。これはとても大切なことですね。専門家が情報を受け取るタイミングと、生活者が情報を受け取るタイミングには少し差があって。私たちが知りえる情報だけで判断すると、やっぱりちょっと早すぎる場合があるんですよ。消費者の方がどんな商品に興味を持っているのか、実際に売場面積を見るとすごくよくわかります。リアルな消費者の動向を探るために、実店舗へ行くことは欠かせないですね。」
――リアルの大切さですね。
「そうですね。業界に関係のない身近な人、家族や友だちが、何を知っていて何を知らないのかということも、意識するようにしています。企業からの情報がどれだけ消費者に浸透しているか、というバロメーターになります。」
■事実と提案を切り分けたプレスリリースを
――情報収集として、プレスリリースを活用されている戸井田さんですが、プレスリリースに求めることはありますか?
「『事実』をわかりやすく伝えることですかね。取材依頼をいただくメディアの方は、専門家の知識を信用して頼ってくれていますから、私たちがしっかりとした情報を得ていないといけません。最近少し混同するのは、企業からのプレスリリースで事実と提案が混じっているものですね。」
――事実と提案が混ざっているというのは、例えばどのような?
「何月何日にどういった商品が出て、その機能はこうで……というのは事実ですが、『赤ちゃんのいるご家庭にぴったり』とか『2人暮らしの助けになる』といったことは事実ではなくあくまで提案や企業が訴求したい使用シーンですよね。それがリリースの中で事実と混在していると、読みにくいと感じてしまう。まずは事実を、そして別のシートで提案や商品への思いなどを語っていただけると、読みやすいと感じます。」
――読みやすさは重要ということですね。
「そうですね。専門家もメディアもそうだと思いますが、一発で読めないリリースは、読まなくなっちゃうんですよ。最近一番多いのは、ファイルが圧縮されて、さらに鍵がついているもの。これはそもそもスマホだと読めないので、後でパソコンで開いて読むことになるんですが、だいたい面倒で結果開かなくなってしまう。
私の場合、移動時間がとにかく多いので、その間に情報収集をしているわけなんですが、そういうライフスタイルもあってスマホでもタブレットでも簡単に内容が把握できるものが理想的です。たとえば、メール本文にリリースの要約を記し、添付でPDFと画像を送っていただくとか。環境によってはPDFすら開けないこともあるので、メール本文に概要を書いていただくのは重要なんですよね。
」
――リリースのタイミングについてはいかがでしょう。
「紙媒体への情報の出し方と、Web媒体、ニュース媒体への情報の出し方を切り分けてくださるとありがたいですね。速報性が重んじられるTVやニュースサイトと違って、紙の雑誌やWebマガジンなどの編集が入る媒体の場合、発行の1カ月前に情報が来ても載せられないんですね。間に合わない。特に紙の場合は顕著です。
けれど2カ月前なら載せられる。発売のタイミングと発行のタイミングを合わせられるんですね。種まきの時期をずらして、花が咲く時期をそろえる。もちろん、いただいた情報を漏らすようなことはありませんので、そこは信頼していただければと思います
。」
■11月発売商品の情報発信タイミングを見極めて
――年末に向けて現在アワード企画をいくつか抱えていらっしゃると思いますが、アワードの審査・選定基準を教えていただけますか。
「まず、専門家目線で選ぶのか、今年流行したものとして選ぶのか、アワードの趣旨を理解して選定することが一番ですね。専門家目線だと『この分野の商品は3年前から注目されているから、今さら表彰しなくても』と思うようなものでも、一般に認知されトレンドとなったのは今年かもしれませんよね。ですから独りよがりにならないよう気を付けています。
そしてもう1つ、11月発売の商品の情報を1つでも多く得ておくこと。今、その情報が手元にあれば、今年のアワードの中で言及することができます。しかし、来年のアワードでは古くて載せられない。そもそも情報のない商品は土俵にも上がれないわけですよね。年末商戦に向けて、11月に発売されるものは結構多い。それなのに、土俵に上がって落ちたんじゃなく、そもそも上がれない。その差は大きいと思います
。」
――ちなみに今年のトレンドは?
「今年のトレンドワードは『AI家電』です。一昨年ぐらいからすでに注目されてはいましたが、ようやく消費者の身近な言葉になった感があります。」
――専門家から見た、次に来るものを教えていただいてもよろしいですか?
「『AI』の次は『コネクト』ですね。単純にインターネットにつながるという意味ではなく、ネットを通じてモノ同士がつながる……例えば炊飯器とエアコンが、エアコンと冷蔵庫が、のように。海外ではそうした家電がすでに市民権を得ているので、1、2年遅れて、日本でも定着するのではないかと見ています。」
――ありがとうございました。
Rankingランキング
- MONTH
- WEEK