■客室清掃を見るとホテルがわかる。評論家はホテルのココを見る
ホテルに宿泊するときって、どういう所をチェックするのでしょうか?
独自で作った180項目のチェックリストに基づいてチェックをしています。最多で500項目くらいあるんですけど、チェックするのに時間がかってしまうので、「365日365ホテル」の時は、その中から厳選した60項目のチェックリストを使いました。
最多で500項目もあるんですね。500項目でチェックした場合、瀧澤さんが思う日本一のホテルでどれくらいの点数になるのでしょうか?
僕が日本一だと思うホテルは、群馬県にある「ホテルココ・グラン高崎」です。このホテルで、220ぐらいかな。
なるほど。ホテルに入ると、初めにどこを見るのでしょうか?
まずは、部屋の写真を何十枚も撮ります。写真を撮り終えたら、ベッドメイキングを見ますね。
瀧澤さんが撮影されたとあるホテルのベット
例えばシワとかそういうところでしょうか?
そうです。最近多いのは、写真のような羽毛掛け布団をカバーリングしてあるデュベスタイルのベッド。これだと、毎日カバーを変えるので清潔です。
ただ、デュベスタイルの問題は、ちょっとのシワが目立ってしまうこと。高級ホテルになるとこの辺も完璧なのですが、シワシワが目立っているホテルは多いですね。
ただ、デュベスタイルの問題は、ちょっとのシワが目立ってしまうこと。高級ホテルになるとこの辺も完璧なのですが、シワシワが目立っているホテルは多いですね。
シワって意識したらキレイにできるような気もするんですが、なんで目立っちゃうんでしょうか?
今ホテルは人材不足で特に部屋を掃除するハウスキーパーの人手が足りていないんですね。やはりハウスキーパーの質も低くなってしまうという傾向はあるのかもしれません。
なるほど。
ですので、逆に言うと、客室清掃を見るとホテルがわかります。
客室清掃を意識して見たことはなかったんで、次ホテルに泊まるときは意識してみます。ちなみに、僕ずっと気になっていたんですけど、このベッドにかかっている布というか、カバーってなんなんですか?
これは、ベッドスローと言います。もともとは、土足でベッドの上にあがったときに、ベッドカバーなどが靴で汚れないようにするためのものです。欧米の土足文化を想起しますよね。
ただ、日本ではそういった本来の目的じゃなくて、インテリア的なアクセントと、デュベスタイルのベッドメイキングをちゃんとしましたよというアクセントとして使われています。
ただ、日本ではそういった本来の目的じゃなくて、インテリア的なアクセントと、デュベスタイルのベッドメイキングをちゃんとしましたよというアクセントとして使われています。
たしかにこれがキチンと置いてあるとベッドメイキングされている気がします。
そうですよね。ただ、それが問題で……。
どういうことでしょうか?
ベッドスローがあれば、多少シワがあってもキレイに掃除したように見えませんか?それに、このベッドスローって、寝るときにどうしますか?
えっと……。正直に答えると、床とかイスとか、そこらへんにぶん投げてますね。旅行なんかでお酒を飲んで帰ってきてたらなおさら……。
ですよね。そうなってくると、ベッドスローを毎日ちゃんと洗っているかが大事になってきます。
たしかにそうですね!
ホテルに泊まるときは、こういうところもチェックしますし、問題だと思った場合は記事にして問題提起をしています。
なるほど。ちなみに他にも何かホテルの問題的なことってありますか?
スリッパですかね。ホテルのスリッパって何種類かあるんですけど、最近のブームは、持ち帰りもできるスリッパです。これを、使い捨てスリッパと呼ぶ人もいますが、1回履いて捨てるのはもったいないクオリティですし、僕はお持ち帰りスリッパと呼んでいます。
持ち帰りができるスリッパがブームなんですね。
そうです。清潔なので。旅館とかにあるビニールスリッパって、誰が履いたかわからないし、イヤじゃないですか。だから僕は旅館にいくときはお持ち帰りスリッパを持っていくようにしています。
凄く便利なんですけど、環境問題を考えると使い捨ては微妙。というわけで最近増えてきているのが、メッシュ素材で、洗えるウォッシャブルスリッパです。
凄く便利なんですけど、環境問題を考えると使い捨ては微妙。というわけで最近増えてきているのが、メッシュ素材で、洗えるウォッシャブルスリッパです。
でも、“本当にウォッシャブルスリッパを毎日洗っていますか問題”というのがあって。
なるほど。
ウォッシャブルっていうけどこれ洗ってるの?って疑問に思ったことがあって、調べてみようと思いました。
ホテルにインタビューしても絶対答えてもらえないので、チェックアウトギリギリまでいて、ルームメイドの人の清掃ワゴンを見てみたんですね。交換したり洗うんであれば新しいスリッパが清掃ワゴンの中に入っているはずですよね?
ホテルにインタビューしても絶対答えてもらえないので、チェックアウトギリギリまでいて、ルームメイドの人の清掃ワゴンを見てみたんですね。交換したり洗うんであれば新しいスリッパが清掃ワゴンの中に入っているはずですよね?
それで清掃ワゴンにスリッパはあったんでしょうか?
なかったんです。ウォッシャブルなのに……。それで、ルームメイド歴40年の知り合いに話を聞いてみたら「除菌スプレーでシュッシュで終わりですよ」みたいな話をされて。
……。
最終的に、この問題の記事を書きました。いいね!がハフィントンポストに3,000ぐらいついて。問題が可視化されたかどうかわかりませんが、「このスリッパは毎日洗っています」というような表記が目立つようになってきた気がします。
問題提起、大事ですね。
■批評をすることで、ホテルが進化する
評論家って、厳しいコメントや批判が多いイメージがあるのですが、褒めたりすることってやっぱり稀なんでしょうか?
評論家という職業柄、批判をして欲しいと期待されるんですが、そんなことないですよ。「All About」で書いている記事もそうですが、基本はポジティブな情報発信です。
というのも、批判に関しては、SNSで皆さんが「このホテルはここがひどい」とか「接客が悪い」「部屋が汚なかった」みたいな情報を発信されているので、僕が重複するようなネガティブな情報をあえて発信しなくてもいいのかなと。
というのも、批判に関しては、SNSで皆さんが「このホテルはここがひどい」とか「接客が悪い」「部屋が汚なかった」みたいな情報を発信されているので、僕が重複するようなネガティブな情報をあえて発信しなくてもいいのかなと。
たしかに、SNSで検索すればたくさん出てきますもんね。
SNSなどではみなさんが批判や問題点など発信されているのですが、ジャーナリスト・評論家の仕事は、なんでそうなったのかという原因を想像ではなく実際にホテル内部で取材し、情報を咀嚼したうえで発信することだと考えています。
そのためにはホテルとの関係性、お付き合いも重要になってきます。覆面取材だけでは見えない部分ですよね。そうした視座もホテル評論家として、大事な要素だと思っています。
そのためにはホテルとの関係性、お付き合いも重要になってきます。覆面取材だけでは見えない部分ですよね。そうした視座もホテル評論家として、大事な要素だと思っています。
先ほどお話してくれたスリッパ問題などはまさにそうですよね。ほかにも、ホテル評論家として大事にしていることってありますか。
取材させていただくということにも関係するのですが、ホテルの人との交流を大事にしています。
たとえば、初めて正式取材させていただいたホテルへはもちろんですが、覆面取材でもホテルマンからいいサービスを受けたら(名札を見て名前を覚えておいて)、家に帰ってからサンクスレターを書いてそれを総支配人宛で送るんです。
たとえば、初めて正式取材させていただいたホテルへはもちろんですが、覆面取材でもホテルマンからいいサービスを受けたら(名札を見て名前を覚えておいて)、家に帰ってからサンクスレターを書いてそれを総支配人宛で送るんです。
その方宛ではないんですね。
総支配人に突然呼ばれ、見られていないはずの自分の接客を褒められるとやはり嬉しいと思います。
実際にホテルマンから聞いた話なのですが、初めてもらったサンクスレターは一生持っていて宝物だと。こういう経験を経て、ホテルマンは見られている意識が芽生える。
モチベーションが上がることでもっとサービスが良くなるので、お客さんから評価されるというのはすごく良いことだと思います。
実際にホテルマンから聞いた話なのですが、初めてもらったサンクスレターは一生持っていて宝物だと。こういう経験を経て、ホテルマンは見られている意識が芽生える。
モチベーションが上がることでもっとサービスが良くなるので、お客さんから評価されるというのはすごく良いことだと思います。
凄い。そこまで考えられているんですね。サンクスレターをもらったら……僕もずっと捨てずに手紙を持っておくと思います。
あと、例えばテレビなどのメディアで、いいホテルを紹介するときは、有名なホテルや東京のホテルではなく、全国で取材しているという立場からできるだけ地方のホテルを紹介するようにしています。
みなさんが知っている大都市の有名なホテルは、僕が紹介しなくても多くのメディアで既に取りあげられていますよね。
また、全国メディアに取り上げられることのない地方のホテルが全国メディアにとりあげられることは、ホテルにとって大きなニュースだと言われることがあります。ホテルサービスがさらに良くなるとも。
みなさんが知っている大都市の有名なホテルは、僕が紹介しなくても多くのメディアで既に取りあげられていますよね。
また、全国メディアに取り上げられることのない地方のホテルが全国メディアにとりあげられることは、ホテルにとって大きなニュースだと言われることがあります。ホテルサービスがさらに良くなるとも。
どういうことでしょうか?
僕の記事を支配人が感動してバックオフィスにポスターのように記事を貼ってくれたんですね。
スタッフの方も「地方のホテルが全国メディアで取り上げられた」と喜んでくれました。そしてスタッフのモチベーションが上がってサービスが良くなったという話も聞くことがあります。
あと、『マツコの知らない世界』もそうですが、全国放送の番組に取り上げられると多くの予約が入ります。
結果、より注目されることになり、自ずとモチベーションも上がります。たくさんのお客さんの目に触れることでサービスの質もさらに良くなったと、放送後ホテルから感謝されることがとても多いです。
僕は、サービスのレベルアップの方法のひとつとして“見られること”が重要だと思っています。ホテル評論家としてホテルのサービスをチェックするのは当然なんですが、それ以上に、自分からいろんなアプローチをすることで“ホテルが進化する”ことが大事だと思っています。
スタッフの方も「地方のホテルが全国メディアで取り上げられた」と喜んでくれました。そしてスタッフのモチベーションが上がってサービスが良くなったという話も聞くことがあります。
あと、『マツコの知らない世界』もそうですが、全国放送の番組に取り上げられると多くの予約が入ります。
結果、より注目されることになり、自ずとモチベーションも上がります。たくさんのお客さんの目に触れることでサービスの質もさらに良くなったと、放送後ホテルから感謝されることがとても多いです。
僕は、サービスのレベルアップの方法のひとつとして“見られること”が重要だと思っています。ホテル評論家としてホテルのサービスをチェックするのは当然なんですが、それ以上に、自分からいろんなアプローチをすることで“ホテルが進化する”ことが大事だと思っています。
瀧澤さんのお話を聞いて評論家のイメージが変わりました。
本日はありがとうございました。
本日はありがとうございました。
■まとめ
ホテルの裏側や、ホテル評論家のお仕事を詳しく知ることができたインタビューとなりました。
今回、瀧澤さんが取材場所として選ばれたのは大森駅のすぐそばにある「HOTEL BAR GRANTiOS」。
今回、瀧澤さんが取材場所として選ばれたのは大森駅のすぐそばにある「HOTEL BAR GRANTiOS」。
理由は、コンセプトがしっかりしていて隠れ家的な要素もあるから。
ビジネスユースで泊まれる値段帯ながら、居心地の良さそうな部屋の作りや、
テレビも見られる広々としたお風呂などもありました。
フロントの奥には本格的なBarも!
フロントの奥には本格的なBarも!
同じく大森駅にある別館では、ラウンジに囲炉裏が。
インタビューを通して、評論家という仕事の見え方が大きく変わりました。厳しい批判もしつつ、ホテルへのアドバイスやサービス向上に繋がるアクションも行う。こういった姿勢は見習いたいなと思いました。
瀧澤さん、ありがとうございました。
瀧澤さん、ありがとうございました。
取材・文:砂流恵介
元エイサーの宣伝・広報。宣伝会議のWeb広報講座の講師。Engadgetやネタりかなど、いろんな媒体で記事を書いています。
元エイサーの宣伝・広報。宣伝会議のWeb広報講座の講師。Engadgetやネタりかなど、いろんな媒体で記事を書いています。
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