人生で一番辛いときだからこそ、「痛み」をわかってくれる人が必要。 日本初、離婚相談のプロフェッショナルに話を聞いてみた
日本初、離婚相談のプロ「離婚カウンセラー」という職業を作り出し、書籍出版45冊、メディアにも引っ張りだこの岡野あつこさん。 離婚カウンセラー28年の間に受けた離婚相談は3万件以上。離婚という夫婦が直面するもっともシビアな状況に向き合い続け、多くの人の人生に携わってこられた離婚相談のプロに、これまでなかった仕事を生み出し、拡大した経緯、離婚カウンセラーという特殊なお仕事内容について伺ってみました。
All About「離婚」ガイド 岡野 あつこ 夫婦関係の修復からベストな離婚まで、経験豊富なノウハウでサポート。夫婦問題を解決に導くカウンセラーのパイオニア。特に離婚問題においては28年間で35,000件以上の相談を手がけ、親身にアドバイス。的確で歯切れのよいコメントは、テレビ番組・ラジオ・講演などでも、多くの共感を得ている。離婚カウンセラー養成講座も開講中。 All Aboutでは離婚ガイドを担当し、2019年11月に「All Aboutモヤフォー研究所」が出版した書籍『すてても やめても うまくいく』では、アラフォー世代が直面する夫婦関係の内容を担当、夫婦のモヤモヤについて指南。 |
■どこにもない職業「離婚カウンセラー」を作ったのは自分に必要だったから
――岡野さんが離婚カウンセラーという、それまでなかったものを職業にしていこうと決められたのはどのようなきっかけからなのでしょうか?
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「どうしてこんなに理不尽な離婚になってしまうの」
離婚って切り出される側にとっては唐突と感じることが多いんです。いきなりのことで、びっくりしすぎて身動きがとれない。 辛い気持ち、これからどうしていったらいいのという不安、様々な感情が入り乱れるなか、現実的な問題に対応していかないといけないのは本当にきつい状態です。
家族が友人や愚痴や不安を聞いてくれる人はいるかもしれません、でも金銭的な問題、親権など実務的な問題の解決は出来ませんよね。じゃあ弁護士に相談すればいいかというと、単純にそうとも言い切れない。「本当は夫とまた心通う関係に戻りたい」「ひとりになるのは寂しい」そんな本心が置いてきぼりにされたままで、離婚への手続きだけが執り行わて行くことにもなりかねないのです。
「関係を修復したい」とご本人が望むなら、結果的に離婚になるとしても遠回りしてあげることが必要なんですね。
私が離婚した当時は今ほど離婚に強い弁護士もいなく、財産分与や養育費の支払いを含めて、仕事をしていない女性が離婚後どのように生きていけばいいのか知識をもらえなかったので、不安は高まるばかりでした。「精神面と実務面、双方を兼ね備えてケアしてくれるような人がいたら」と、強く感じたのがこの仕事を始めたきっかけです。「必要なものがないなら、自分がなろう」と。
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――離婚の際の苦しい心情を相談できるプロがいるって、とても心強いですね。
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修復を望んでいる方は、それこそ裁判したいわけではありませんから弁護士の先生の所へ相談するわけにもいかず途方にくれてしまうという方も本当に多いですね。
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どこに相談していいのかわからない。そんな方には「お会いできてよかった」と言って頂けることもあり、かつて自分が望んでいた仕事が必要とされる方に届いているのを感じ、やりがいにつながります。
精神面のケアにと、離婚の際に心理カウンセラーなど訪れる方もいらっしゃいます。心理カウンセラーはクライアントの心を一番に考える治療ですから、抱え込んだ思いを吐き出すことを推奨してくれる。
でも、離婚では思いのままの感情をぶつけてしまうとかえって事態をこじらせてしまうことが多いです。相手の気持ち、状況まで考えた上で気持ちを伝えなければならない。これをひとりでするのは至難の業です。
心に寄り添い、これからのことを共に考えたうえで、どう振舞っていけばいいのか法律面なども考慮しながらアドバイスをくれる人が、離婚には必要。 離婚はしようと決意する側も、突き付けられる側にとっても、「人生のどん底」というくらいメンタルをものすごく消耗することになりますから、日本で唯一の離婚相談のプロとして苦しんでいる方の力になりたいと日々思っています。
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■離婚カウンセラーに必要なのは相手の「痛み」の度合いをはかる力
――これまで2000人の離婚カウンセラーを育ててらした岡野さんが考える、離婚カウンセラーに必要な力とは何でしょうか?
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今まで2000人の離婚カウンセラーを養成してきましたが、キャリアが長いことや、多くのお客様に接してきたという数字がいいカウンセラーの証明ではありません。一番大事なのは「今、辛くて苦しい」目の前のその人の気持ちをどれだけ理解できるか。共感力の高さです。実はベテランになるほど、経験と知識、こういう場合はこうすればいいのと上の方から眺めたままの意見を言ってしまうことがあります。
相談者の多くは、今目の前にあることで苦しんでいて、そこに寄り添った言葉でないと届かない。解決方法やアドバイスも1m、2m先をみせてあげないといけないんですね。ところが、ベテランになると100m先まで見えているが故に、「そんなところでつまづかないで」という気持ちから相談者の意見を否定したり、いきなり100m先を見せようとしてしまうことがある。慣れやおごりがそうさせてしまうんです。
離婚について対話する際には、普通のコミュニケーションの感覚でいてはダメなんです。弱っている人とのコミュニケーションなんだ、ここをしっかりわかってお客様の前に座らなければ話をしてもらうことができません。心が弱っている方の「痛み」の度合いを計りながら、言葉を選びその方がどこへ向かいたいのが紐解いていくことはすごく難しい。私もつかんでいくのが大変でした。
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「相手の痛みを知ることができるか」、離婚カウンセラーはその力をいつも問われていると感じています。一番苦しくて辛い人生の局面に立たされて、藁をもつかむ思いでいらしてくださっているわけですから、何人目のお客様でも、初心を忘れてはいけない、自分自身を含めて、キャリアが長くなるほどに意識することが重要だと思っています。
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