人生における本当の意味でのキャリア形成とは。「かかりつけ医」のように、一人ひとりに寄り添う転職エージェント
20代・30代のキャリアデザインガイドとして、またモヤフォー研究所での頼もしきアドバイザーとして、活躍中の末永雄大さん。自らも転職ののち、独立起業して現在は大手とは違ったアプローチで若者たちの転職支援サービスを提供しています。そのアプロ―チとは?そして、転職を考えるときに知っておくべきことについても聞いてみました。
All About「20代・30代のキャリアデザイン」ガイド 末永雄大 転職エージェント、アクシス株式会社代表取締役社長兼キャリアコンサルタント。メディアでの執筆活動のほか、東京経済大学などでキャリア形成についての講義を行う |
■大手転職エージェントにはできないサービスを提供する
―いきなりですが、末永さんのAll Aboutガイドとしての肩書って、「20代、30代のキャリアデザイン」と、特に若手のキャリア支援に注力しているのがストレートにわかるものですよね。2011年に立ち上げられた転職エージェント「アクシス株式会社」でも、若手を中心にサービスを展開されているんですよね。
アクシスを立ち上げた背景は、人材業界は“負”がすごく大きいと感じたからです。大学を出てすぐ、某大手人材会社で企業の採用支援を担当していたのですが、自分ではすごくやりがいを感じていたものの、会社の外に出てみるとサービスへの評判は決していいものではなくて。要は大手はチェーンストアなんですよね。ものすごい数の企業と求職者のマッチングを行うわけですから、数の論理で求人情報を相談者にあてていく。一人に割ける担当者の時間も限られているので、じっくり面談して方向性見極めて……というよりも、確率論。打率をあげるために、エントリー数を増やすアプローチを行います。
―自分にあった求人情報をどんどん紹介してくれるんですよね。そんなに悪くなさそうですが。
もちろんそれはそれでひとつのやり方として間違っていないと思いますが、相談者にしてみれば初回面談で膨大な数の会社を紹介されても、迷ってしまいますよね。しかも驚くことに、書類選考通過率っていうのは大手ほど低く、手間暇をかけてマッチングを行う小規模なエージェントと比較し、1/7程度が水準。そんな中で、業界最低水準の書類選考通過率の数字をもとに、「1社面接に進みたいなら、10件以上のエントリーが必要だよ。」と言われる。そんなわけないんですけどね。
―数打てば当たるっていう考え方ですね。本来であれば、そんなにエントリーしなくてもいいのに。
そもそも転職エージェントって、インターネット上などで公開されている求人情報はどんどん増えて、求職者は選べない、方向性が定まらない、だからプロに相談したい、というニーズのなかで出てきたサービスなんですよね。それなのに、いざ相談に行っても、方向性が定まらないまま求人を70件紹介されるって本末転倒というか。
―私も20代のときに似たような経験あります。勧められるままにあんまり乗り気じゃないままエントリーして、選考が進んでしまって悩むみたいな。
いま日本でいちばん転職する人が多いのは27歳と言われているんですが、どんなにハイキャリアだろうと、転職は素人。人材業界は情報の非対称性が高いのでそこにつけこむエージェントも多いです。しかも、27歳って企業側のニーズも高いので、割と良さげな会社からオファーがあったりするんですが、70件以上も求人情報を見てると、社名とか給料とか、そういうところに目が行くのは当然で。なんで転職しようと思ったか、そもそもの理由を忘れちゃうんですよね。それに加えてエージェントのクロージングが強引なところもあって、気がついたら全然希望と違う会社に転職して、数年でまた転職活動する人も多いです。
―内定がでて無事に転職できても、方向性があわず、またすぐ転職することになっては意味がないですよね。
そういうこともあって、若手の内からのキャリア教育やキャリア支援は重要だなと。あとはやっぱり労働人口が減少していく日本のHR業界では、今後はより利用してもらう個人に支持されないと、生き残っていかないし発展もしない。そこで企業ではなく徹底的に個人を向いたキャリアエージェントを起業したというわけです。
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■キャリアの現実や正しい情報をメディアで発信
―個人に向き合えば向き合うほどヒアリングとリサーチにすごい手間がかかりますよね。今の会社ではどのようにサポートしているんですか?
僕らはオウンドメディアを運営して、プロのエージェントによる転職ノウハウをダダ漏れにしています。うちに相談に来る人は20代、転職初心者の方が多く、業種は大手商社やメーカー、メガベンチャーから、飲食店長、アパレル店員まで様々なんですが、だいたい皆さん同じ質問をしてきます。「今の会社に居続けながら転職活動したほうがいいか」とか「何社ぐらい応募したらいいか」とか。それに対してこちらもまったく同じ回答をしている。これってすごく非効率だなと思いまして(笑)。
じゃあログに残してURL送れば、予習復習にもなるし、いいんじゃないかと。最初1年ぐらい、150記事ぐらいコツコツ書き溜めたんですが。気づいたらアクセスが増えて、それを「転職エージェントが語るすべらない転職」というオウンドメディアにし、編集部を設ける体制に拡大しました。
―なるほど。相談者は事前にこのメディアで予習ができるし、コンサルタントの業務効率もあがるわけですね。
僕らはある種ライザップ方式というか。「覚悟がないとだめだよ。誰でもサポートをするわけではないよ」というハードルを設けています。こうして記事を読んでもらったり、ヒアリングをしてある程度方向性が定まってから、10件くらいを目安に求人を紹介する。実際に応募してもらうのは5件くらいまでですが、マッチング精度を高めているので、決定率は30%程度と業界平均と比較してかなり高いです。
―「すべらない転職」などの情報発信活動も、All Aboutガイドになったきっかけだったのでしょうか?
そうですね。普段ニュース記事などをプロの視点で見ていると、キャリアについての記事というのはキワモノというか、間違った情報がすごく多いなあと感じていて。例えば精神論に寄り過ぎていたり、「年収あげるには」とか「副業は」といったバズワードやトレンドに乗り過ぎていて極論だったり。だから、キャリアの現実や正しい情報をプロの視点で、より多くのユーザーさんに届けたいと思っても、自社のメディアだけだとどうしても発信力に限界があって。そんな中ご縁があり、現在もガイドをしております。
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