■上司が部下のキャリアコンサルをできる会社が生き延びる
―では改めて、「20代、30代のキャリアデザイン」ガイドとして、いまこの年代がキャリア形成において知っておいた方がよいこととは何でしょうか?
キャリア戦略や逆算型キャリア、自立するためのキャリア、専門性やマネジメント思考って、ハイキャリア志向の人向けだけのものと捉える人が多いんですが、終身雇用の時代でない今、すべての人にとって自身のキャリアデザインをしていくことが求められます。そのうえで、自分の中でのプライオリティを明確にすること。あとは、時間の尺を少し短くおいてみてもいいかもしれません。
―時間の尺とは?
20代にはすべてのニーズを兼ね備えたハイスペックな会社を求めて転職を希望する人が多いんですが、そんな会社はありません。それに転職先にあれもこれもぜんぶ求めるのは、その会社にできるだけ長く添い遂げようと内心思っているから。定年まで居続ける時代じゃない、と口では言いながら矛盾していると感じます。
キャリアは、多様化・複雑化・流動化していくはず。自分にとって、今本当にのばすべき優先順位は何かというところを見極めて、3年、5年単位で見ればいい。数年たってからまだ今の会社に居続けようと思えればそれでいいし、そうでなければステップアップすればいい。そういう意味で、方向性を見極めるキャリアデザインは重要です。
―一方で、企業側にとってみれば、がんばって育てた新人が、数年で旅立ってしまうという課題があります。決して企業もそれを望んでいるわけではないと思うのですが、企業はどうするべきなのでしょうか?
二つ言えると思います。ひとつは、企業側も個人の市場価値を見極める視点を持つということです。今辞めたいと言っているAさんは、他の会社に行ったらどんなオファーがついて、いくらの価値がつくかを常に意識して向き合う必要があると思います。「うちのやり方はこうだ。我慢しろ」と押し付けていても、それはもはや通用しないでしょう。
もうひとつは、ちょっと精神論っぽいですが「あなたの考え方は今の世の中から認められないよ」とか。やりがいが感じられないという理由でやめる20代は多いですが、仕事のやりがいは成果や習熟度の向上の先にあるわけで。「このタイミングで辞めたら、あなたにとって損をするかもしれないよ」ということを率直に伝えることができるかかなと思います。
もうひとつは、ちょっと精神論っぽいですが「あなたの考え方は今の世の中から認められないよ」とか。やりがいが感じられないという理由でやめる20代は多いですが、仕事のやりがいは成果や習熟度の向上の先にあるわけで。「このタイミングで辞めたら、あなたにとって損をするかもしれないよ」ということを率直に伝えることができるかかなと思います。
――その人の正当な評価を見極める客観的な視点と、上司がキャリアコンサルをしてあげるようなマネジメントが理想的ということですよね。
おっしゃるとおりです。今、企業で上司や先輩がきちんと人として伝えられていることって少ないんじゃないでしょうか。数字の話とかばかりで。もう少しコミュニケーションは貪欲に、ウェットにしても良いのかなと思います。人として、ビジネスパーソンとして、こういう考え方のほうがいいよねという共通軸を明確にして対話をする。きちんと話せば転職しなくてすむことも多いと思うんです。企業も業績というしたたかな方向にばかり向くから、個人も自分のキャリアや年収というしたたかな方向に向いていっちゃうわけで。数字以外の部分で大切なことは、先輩が語って教えてあげるべきなのかなと思います。
――ただ、そういうかなりウェットなコミュニケーションって、時代遅れで、嫌われるんじゃないかと先輩や上司も恐れているのではないでしょうか?
例えばですが、「とにかく会社員なんだから目標は必達しろ」ではなくて、あくまで対話のイメージ。先輩の視点で、「自分自身も若手時代に目標達成に対してノルマのような否定的なイメージで捉えていたけれど、見方を変えてみたら、目標達成にこだわる事で、仕事の視点や引き出しもすごく広がって成長実感を得られたんだよね」というレベルで伝え方を工夫する事が大事だと思うんですよね。経験のシェアであって、押し付けではない。伝え方の問題です。あと、先輩からのアプローチだけに頼らず、若手ももっと積極的にウェットなコミュニケーションを求めるべきだと思います。学べることは多いはずなので。
――ある種その先輩の役割を、今はエージェントがやっているわけですね。
そうなんです。本来なら勤務先の企業や上司がするべきだと思います。今後は管理職や人事部の必須科目になるのではないでしょうか。
■“キャリアのかかりつけ医”として頼ってもらえたら
――最後に、今後のお仕事の展望や実現したい夢について教えてください。
「誰もが自分なりの軸を明確にして、生き生きとまっすぐ生きられる社会にしたい」というのが、前提としてあります。アクシスという社名も「軸」という意味なんですよ。
そのために、軸を言語化するにはどうしたらいいか。職務能力を高めるにはどうしたらいいのかといったことも含め、だれでも身近に無料でキャリアについてのノウハウが得られるような情報発信をしていくこと。それから、キャリアメンターって僕らは呼んでいますが、キャリアについて、かかりつけ医院のように、気軽にメンターに相談できるような社会インフラを創りたいというのが、今後僕らがやっていきたいことです。
キャリアのかかりつけ医って、とても頼もしくてありがたいですね。ご活躍を楽しみにしています。今日はありがとうございました。
■末永さんが登場する「モヤフォー研究所」キャリア編はこちら
ーまんがで読む、モヤフォー研究所「キャリア編」
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人生100年時代、アラフォー世代の漠然とした「不安」を探る『モヤフォー研究所』私たち、いつまで働くの? 給与は上がる? 職はある?「アラフォー女性の人生後半戦の働き方」に関する調査を実施~40代のうちに「年収ベース」か「働く年数」で逆算し、“売れるキャリア”を。何歳まで働くか、現40代女性「ノープラン派」と「60歳以降も働く派」と二極化~
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