■ お菓子の知識を深め、アンテナを立て、専門性を高める
―― 平岩さんはその専門性をより高めるために、どのような努力をしていますか?
ひとつは、お菓子の知識をより深めることです。そのために製菓の専門学校に通って、基本の作り方から勉強をしました。そのほうがもっとパティシエたちの想いや言っていることがわかるのではないか?と思ったんです。私のような動機で入学している人は他にいませんでしたけど(笑)。現在も、フランス人のMOF(フランス国家最優秀職人章)パティシエの来日講習会に、国内トップパティシエの講習会やトークイベント、素材の勉強会などに、可能な限り参加しています。知り合いのシェフにも「どこに行ってもいるよね」と言われるくらい。
―― これだけアウトプットが多いのに、それを上回るインプットなんですね。
お菓子だけではなく、食まわり全般にもアンテナを張っています。今度、私の母のルーツである熊本で「日本洋菓子協会連合会」と「熊本県洋菓子協会」主催の講習会があって取材を兼ねて行くのですが、せっかくなので有田にもまわり、焼き物をみて来たいと思っています。
―― スイーツの世界からどんどん広がりつつも、軸はスイーツにあり。
外食産業や大手食品メーカー、流通の動きはもちろん、食関連に限らず、そのほかトレンドチェックは欠かせません。最先端に左右される必要はないけれども、今のトレンドを理解して、その上で作り手は何をすべきか選択肢を増やすお手伝いはできるかなと思っています。
■ 情報発信は特性を踏まえて発信内容を変える工夫を
―― 情報発信は、ご自身のSNSでも積極的にされていますね。
それぞれ使い分けをしています。Twitterでは140字しか書けないので、工夫しています。ユーザーが見てすぐ買いに行けるように営業時間や定休日は入れるようにするとか。インスタでは、「こんなに書く人いないよ」ってくらい文章もたくさん書いています(笑)。フェイスブックでは、やはり、Twitterで書ききれないところを書きますね。
―― 平岩さんのインスタ見ました。本当にコメント長いですね(笑)。とても詳細で、ケーキに対する愛を感じます。
平岩理緒@幸せのケーキ共和国さん(@rio_hiraiwa)
「スイーツジャーナリスト」としてお菓子の様々な情報を発信しています。
―― 他には、どのような工夫をされていますか?
投稿ひとつとっても実験と検証を繰り返していますよ。たとえば、チョコレート系やお取り寄せ系情報は、夜のほうが反応がいいとか、新店オープンなどの情報は、朝8時までが反応がいいとか。曜日や天気や気温なども踏まえ、日々仮説をたてて実験して検証。結果がでるのが面白くて。
前職がマーケターなので、どうしてもそういうアプローチをしてしまうし、実際そういうのが好きみたいです。変わり者ですね(笑)
■ 月に200種類食べるってホント?それでも太らないその秘密は?
―― ところで、平岩さんは毎日毎日ケーキばっかり何個も食べて、よく太りませんね。試食のときも、一口食べるだけではなく完食すると伺いましたが、本当ですか?
審査などは別で、もともと数人で分ける想定で用意されていることも多いですし、数十種類を一度に食べなくてはならない時は、最初と最後で満腹度によって評価がぶれないことが優先です。でも、取材で1つ用意いただいている時や、自分のリサーチとして選んで食べる時はそうですね。ケーキって、一口目の舌触りから始まって、食感であったり、甘味であったり食べ終わったときのトータルのバランスを考えて作られているんです。だから完食しなければそのケーキを本当の意味で理解はできません。作り手の方や素材の生産者さんにも申し訳ないですし……
―― それはパティシエの人たちもうれしいですよね。でもカロリーが心配。
摂取カロリー分をジムで消費するよう心掛けたり、家での食事は野菜とタンパク質中心にして、炭水化物は控えています。それでも以前と同じだけジムで運動をしても基礎代謝が落ちているせいか、体重が落とせなくなっていますねえ。
■ 20種類のアイスクリームの試食でも味ははっきり識別!
昨日は、アイスクリームの試食だったんですよ。20数種類。
―― え!?おいしそうだけれど、味がわけわからなくなりそうです。
試食のときは淡泊な味のモノから次第に濃い味になるように、順番を考えるのが基本ですが、同一カテゴリーの時は、順不同でも概ね問題ないです。「おいしい」という感覚より、常に頭に甘味と酸味とかのバランスといった評価基準があり、軸で分けられた象限に味をあてはめて考えるところがありますね。
―― 「なんだかわからないけれど、おいし~い」というわけにはいかないですもんね。ところで、和菓子には興味はありますか?
和菓子は今とても面白いと思っています。和菓子というのは、非常に歴史があって何百年と続いている老舗が、新しい試みにもチャレンジしていたりします。それが面白いですね。
私はもともと歴史の教師を目指していたくらいなので、歴史を感じさせるものは大好きなんです。また、同じお饅頭でもなぜこのお饅頭は売れるのか?といった観点で見ると、興味深いですよ。
私はもともと歴史の教師を目指していたくらいなので、歴史を感じさせるものは大好きなんです。また、同じお饅頭でもなぜこのお饅頭は売れるのか?といった観点で見ると、興味深いですよ。
―― なるほど。とことん調べるこだわりと、なぜおいしいか、なぜ売れるのかというアンテナを常に磨いていることが、スイーツの紹介に役立っているんですね。 平岩さんの紹介は、シェフの人となりから、お菓子の付帯情報について細かく調べて情報を出してくれるので、スイーツに対する理解がすごく深まりますし、それを知ってから食べるとよりおいしく感じます。
おいしく食べるには、どんどんお店の人とコミュニケーションをとっていろいろ聞いてみるのもいいと思いますよ。
■ 専門用語を入れつつ、まわりに説明をちりばめる
―― All Aboutでは70本近く記事を書かれていますが、意識していることを教えてください。
お菓子の専門誌とは違って、All Aboutの読者はとても幅広いですよね。ですから、より読みやすさを心がけています。専門用語は、そのまま書くとわからないけれど、無理に翻訳してもわかりにくい。そこで、そのまま書き、それが何を意味するのかを分かるような書き方にしています。
たとえば、「ビスキュイ・ジョコンド」という言葉があります。アーモンド入りの別立てのスポンジ生地を意味する専門用語なんですが「アーモンドが香るビスキュイ・ジョコンドがしっとりとしているので」と書けば、「ああ、生地にアーモンドが入っていてしっとりとしているのかな」とイメージがわくでしょう?専門用語をあえて残すことでスイーツ好きな人が「この言葉はなんだろう」と一つの発見にしてくれればそれはうれしいなと思います。
たとえば、「ビスキュイ・ジョコンド」という言葉があります。アーモンド入りの別立てのスポンジ生地を意味する専門用語なんですが「アーモンドが香るビスキュイ・ジョコンドがしっとりとしているので」と書けば、「ああ、生地にアーモンドが入っていてしっとりとしているのかな」とイメージがわくでしょう?専門用語をあえて残すことでスイーツ好きな人が「この言葉はなんだろう」と一つの発見にしてくれればそれはうれしいなと思います。
■ スイーツの歴史をきちんと残したい
―― 今後、さらに展開していきたい活動はありますか?
昨年は、監修本を2冊出してとてもいい経験になりました。今後は、お菓子業界の大御所たちにロングインタビューをして、自伝を書くお手伝いができたらいいなと思っています。日本のお菓子業界の歴史を残すという意味でも、意義のある事だと思っています。
―― わあ。それは楽しみです! 歴史好きのスイーツ専門家として、ぜひ実現してくださいね。今日は長時間にわたり、ありがとうございました!
平岩さんの著書の数々……
ガイドプロフィールページからもご覧いただけます。
まとめ
平岩さんは、一見クールビューティーなお嬢様風ですが、内に秘めたる情熱、とことん調べて伝えたいというエネルギーは熱くて、とってもパワフル。
健康にもとても気を遣い、すべてをスイーツに捧げているその一端をみせていただきました!これからもますますスイーツの魅力を発信し続けてください。ありがとうございました。
健康にもとても気を遣い、すべてをスイーツに捧げているその一端をみせていただきました!これからもますますスイーツの魅力を発信し続けてください。ありがとうございました。
取材・文:宗像陽子
ライター・All About「歌舞伎」ガイド・子育てサイトココフル♪編集長。インタビュー記事や子育て記事、日本芸能についてなど、様々な媒体で情報発信中!
ライター・All About「歌舞伎」ガイド・子育てサイトココフル♪編集長。インタビュー記事や子育て記事、日本芸能についてなど、様々な媒体で情報発信中!
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