■介護はゴールの見えないマラソンのようなもの。「親ケア.com」やAll Aboutがその一助となれば
――横井さんご自身がそうだったように、身近に要介護者がいない人の場合、介護を「自分ごと」としてとらえるのは難しいことではないでしょうか。現時点では始まっていない介護に対し、どのように対策していくのがいいのでしょうか?
そうですね。両親が健在かどうか、兄弟はいるのか、結婚しているかなど、このように介護のパターンは8種類あります。まず、自分にはいくつのパターンが存在するのかチェックしてみてください。
介護はある日突然やってきます。もちろん前兆をとらえられる場合もあるでしょう。しかし、誰の身にも、ほぼ確実に訪れることとして覚悟しておくことが必要です。親が要介護になったら、兄弟が、もしくは配偶者が……と一通りシミュレーションしておけば、どんな問題が表面化するか、ある程度見えてくるはずです。
介護はゴールの見えないマラソンのようなもの。長く続くケースが多く見られます。厚生労働省の調査から割り出すと、平均介護期間は男性が13.58年、女性が15.19年です。ときには子育てと介護を両立させることも求められます。
持続可能な介護のために何が必要なのか。ただ頑張るだけでは介護する側もされる側も疲れるだけです。頼れる人・制度を知り、利用できるものを活用するために、「親ケア.com」やAll AboutというWebサイトがあるじゃないか!と思い出していただけたらうれしいですね。
介護はゴールの見えないマラソンのようなもの。長く続くケースが多く見られます。厚生労働省の調査から割り出すと、平均介護期間は男性が13.58年、女性が15.19年です。ときには子育てと介護を両立させることも求められます。
持続可能な介護のために何が必要なのか。ただ頑張るだけでは介護する側もされる側も疲れるだけです。頼れる人・制度を知り、利用できるものを活用するために、「親ケア.com」やAll AboutというWebサイトがあるじゃないか!と思い出していただけたらうれしいですね。
――自分がどのパターンに当てはまるか理解したところで、今のうちにしておいた方がいいことは何でしょうか。
家族とのコミュニケーションですね。離れている家族とは、最低でも、週に1回、1分でもいいので電話で話すようにしましょう。心の距離を近くしておくことが大事です。特に親は、子供に「元気?」「大丈夫?」と聞かれたら「元気」「大丈夫」と答えます。親は子供にウソをつく生き物なんです。そして子供も、親が大丈夫と言っているからと甘えてしまう。多少調子が悪そうだなと思っても、見て見ぬふりをしてしまう。それでは介護の初手を誤る危険があります。
何でもない会話の中で、ウソを見破れる程度にはコミュニケーションをとっておく。そうすれば、親の心身の変化に聡くなるばかりか、介護の際に必須となるお金の話に対するハードルも下がるでしょう。介護は、要介護者の財布で行うことが大前提です。そのためには、親の収入・支出について把握しておく必要があります。「資産はどこにいくらあるの?」なんて、年の一度の帰省で子供から急に尋ねられても驚くだけですよね。金銭的な行き詰まりは、即、介護の破綻につながります。無用な悲劇を生まないためにも、親とのコミュニケーションを密にすることからまず始めてほしいと思います。
何でもない会話の中で、ウソを見破れる程度にはコミュニケーションをとっておく。そうすれば、親の心身の変化に聡くなるばかりか、介護の際に必須となるお金の話に対するハードルも下がるでしょう。介護は、要介護者の財布で行うことが大前提です。そのためには、親の収入・支出について把握しておく必要があります。「資産はどこにいくらあるの?」なんて、年の一度の帰省で子供から急に尋ねられても驚くだけですよね。金銭的な行き詰まりは、即、介護の破綻につながります。無用な悲劇を生まないためにも、親とのコミュニケーションを密にすることからまず始めてほしいと思います。
横井さんのお仕事に密着~介護セミナーを取材 この日、横井さんはふれあい健康事業推進協議会が主催する「介護準備のためのセミナー」に講師として登壇。今回は協議会に加盟する企業の複数社から約60名が参加しました。 会場いっぱいに集まった参加者たちに、まずは自分自身がどのような経緯で介護アドバイザーになったのか、遠距離介護から始まったご両親の介護エピソードを交えながら紹介。遠距離介護の大変さを語る横井さんの話に大きくうなずく方も参加者の方も多数いらっしゃいました。 出典:横井氏の講演資料より 選択肢を提示し、ただやってみてください、で終わらないところが横井流。介護のことを親と話すための準備として、日々のコミュニケーションが大事。という話では、参加者に「毎週1分でいいから親に電話してみましょう」と宿題を出しました。あわせて、「どんなことを話したら良いかわからないですよね? 例えば今日、介護のセミナー行ってみたけど介護ってちょっと心配なんだよね……とか、最近の天気や花粉の話題など、本当に些細なことでいいので、自分から話を切り出してみてください。そうすると親からの話を聞くきっかけにもなるんです。」などと、普段あまり話さない親とどんな話をしたら良いかのヒントも伝えていました。 取材協力:ふれあい健康事業推進協議会/公益財団法人 総合健康推進財団 URL:https://fureai-k.com/ |
■介護は3世代で考える。将来、我が子にさせたくないことは、自分もしない
――横井さんのアドバイスはとても具体的で、ぐっとハードルが下がるのを感じます。
よく「要介護者の心に寄り添って」と言われます。もちろん介護者は、要介護者の希望を叶え、要介護者が心身共に満ち足りた環境で過ごしてほしいと願うでしょう。しかし、要介護者は心身が弱っている状態ですから、いろいろと無茶なことも言います。健全な頃には決して言わなかった、自分本位な願いもぶつけてきます。
私の場合もそうでした。両親が元気なころは常々「自分たちで施設に入るから世話はしなくていい」「同居なんて必要ない」と言っていたのに、介護が始まった途端「なんで離婚して世話してくれないんだ」「仕事も辞めて同居して」と泣いて懇願するのです。見事なまでの手のひら返しでした。大阪で生計を立てていた私が、突然三重の実家で同居し、両親のすべての世話をできるはずもないですし、そもそも離婚する気などありません。子供もかわいい盛りです。それをどうにかしろと言ってくる両親や周囲の人たち。私が我慢すればすべて丸く収まるのか?と追い詰められました。そこで試してみてほしいのは、「3世代で考える」ことです。
私の場合もそうでした。両親が元気なころは常々「自分たちで施設に入るから世話はしなくていい」「同居なんて必要ない」と言っていたのに、介護が始まった途端「なんで離婚して世話してくれないんだ」「仕事も辞めて同居して」と泣いて懇願するのです。見事なまでの手のひら返しでした。大阪で生計を立てていた私が、突然三重の実家で同居し、両親のすべての世話をできるはずもないですし、そもそも離婚する気などありません。子供もかわいい盛りです。それをどうにかしろと言ってくる両親や周囲の人たち。私が我慢すればすべて丸く収まるのか?と追い詰められました。そこで試してみてほしいのは、「3世代で考える」ことです。
「将来、我が子にさせたくないことは、自分もしない」という判断基準をもって親の介護にあたりましょう。将来、我が子に離職してもらってまで同居して介護してほしいのか。我が子の貯蓄に頼ってまでキレイでサービスがよく利用料金の高い老人ホームに入りたいのか。そう考えることで、要介護者の要求の取捨選択がラクになります。
――要介護者の気持ちにより添うことは大事だけど、介護者が犠牲になっては意味がないということですね。横井さん、本日は介護に関する貴重なお話をいただきありがとうございました。
取材・文:西尾 真澄
横井さんほか介護ガイドが解説<親の介護に関するアンケート調査>はコチラ
人生100年時代、生活者が漠然と感じている「不安」を探る 第1弾は「アラフォー世代×親の介護」「まだ先?」は大間違い。40代から準備すべき「親の介護」~介護経験者の4割が40代前半までに親の介護へ。「準備はアラフォーのうちに」と7割が断言。 一方で、現アラフォー世代の準備率はわずか1割。9割が「親と介護話をしたことが無い」~
■これまでの「ガイドと●●シリーズ」はこちらから
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