専門家

女性だけの問題ではない。意外と身近な「不妊治療」、専門家とオープンに話してみた。

All Aboutの専門家(ガイド)に色々聞いてみるコーナー。 今回は、爆笑問題・太田光も絶賛の人気Podcast番組「バイリンガルニュース」でMCを務めるMamiがレポーターとして登場!日本と海外ではあらゆる点で捉え方や情報量が異なる不妊治療。日本における現状と、その先の「もしできなかったらどうするか?」まで、All About「妊娠・出産」ガイドの竹内先生に聞いてきました。

みなさん、はじめまして!「バイリンガルニュース」のMamiです。
第5回目を迎える今回のテーマは、私もトライしている不妊治療。
治療を受ける人が増えている一方、なんとなくタブー視されている不妊の話題。欧米ではメディアでもオープンに話されることが多いけど、日本ではなかなか日常レベルで話題になりません。

私も30歳になり、そろそろ子どもが欲しいなーと、タイミング法で8ヶ月間子作りするも一向に妊娠せず・・・。検査を受けると、夫が10代のときに受けた抗がん剤治療の影響で、自然妊娠がほとんど不可能であることが発覚。まさに今月から不妊治療を開始することになりました。

不妊治療の現状と実態、その先の「もしできなかったらどうするか?」まで、不安や疑問に思うことを産科医の竹内正人先生に聞いてきました!



All About「妊娠・出産」ガイド 竹内正人先生

学生時代より世界諸国を放浪。“Accept&Start”をテーマに、より優しい「生まれる」「生きる」をめざして、今も世界を旅しながら、地域、国、医療の枠をこえ、さまざまな取り組みを展開する行動派産婦人科医。著書、監修書多数。
公式HP http://www.takeuchimasato.com/

■不妊治療における意識に男女差。女性は生殖器について考えることに慣れている

不妊治療について調べていると、基本的に女性側に原因があることが前提になっている情報ばかりで、そこにまず驚きました。社会もメディアも、不妊=女性の問題、と捉えがちな印象を受けます。
確かにそういう風潮はありますね。実際は三種類あって、女性側に問題がある場合、男性側に問題がある場合、そして両方に問題がある場合。男性に問題がある場合と男女ともに問題がある場合を足すと、全体の約5割は男性側にも原因があるんですね。
最近は徐々に男性も、しばらくトライしてできなかったら「自分に原因があるのかな」と疑問を抱くようになってきてはいると思います。ただ社会全体で見ると、やっぱりまだ「女性に原因があるに違いない」という意識の人が多いのは確かですよね。
私は婦人科の先生から「あなたは問題ないから旦那さんを検査したほうがいい。旦那さんアメリカ人でしょ?じゃあ大丈夫。日本人だと嫌がるから難しいんだよね。」と言われて。男性は、なにか引っかかるところがあってなかなか踏み込めない人が多いのかなと思ったのですが、実際のところはどうなんでしょう?
男性側のリテラシーも高まってきていて、昔と比べて良くなってきてはいるけど、「自分ごと」になるとなかなかね。
検査が恥ずかしいとか抵抗があるというのは、その背景に「精子が少ない・精子がない」と言われるかもしれない不安もある。実際にそうであれば、自分のプライドや男性性を否定されたような気持ちになってしまう。誰に責められているわけじゃなくても、人間としての能力までダメだしされた感じがしてしまう、という人は多いですね。まあそれは女性だって同じなんだけど。

あと男性の場合、「検査とか治療とか、そこまでして妊娠しなくても」と思っている場合もあるでしょう。
女性のほうが「問題があるなら早く把握して、治療したい」という意識が強いと思います。 男性も年齢が上がれば精子の質は下がるんだけど、なんとなく50歳、60歳まで大丈夫なんじゃないかという漠然とした感覚があったりするんだよね。女性側はタイムリミットをはっきり認識しているので、そういったところで差が出てくるのかな。
女性は10代の時から毎月生理もあるし、子宮頸がんの検診もあって、ある意味自分の生殖器について考えることに慣れていますけど、男性はあまりそういう機会がないですもんね。
そうなんですよね。今は雑誌でもネットでも、専門家や医師が発信している科学的な情報があるし、東京だと不妊治療専門クリニックもたくさんあって、夫婦で一緒に行けるセミナーも開催されています。奥さんから言われるとプライドが傷ついて拒否反応を示してしまう人でも、医師から根拠とともに科学的に説明されると受け入れられる、という人もいる。セミナーで周りを見渡すとほかにも男性が来ていて、「じゃあ治療受けてみようかな」となるとか。

■不妊治療は「いつやめるか」を考えておくのも大切

不妊治療に関してはメンタルヘルスのケアも重要だなと、「自分ごと」になった今、すごく痛感していて。私が行っているクリニックは初診だけ、30分間無料のカウンセリングがセットでついてきたんですね。そこでカウンセラーと話して、たった30分でもすごく楽になりました。
自費診療だから、人気のあるところや成績のいいところは経済的にも潤っていて、カウンセリングなどのサービスにも力を入れられますよね。医師だけではやっぱりそこまでは手が回らないので。
まさにそのカウンセリングで、「いつやめるか」を夫婦で話しておくのも大事だといわれて。金銭的にも身体的にも負担がある中で「あと一回やったら今度こそできるかもしれない」というのをいつまで繰り返すか……。
やめるところっていうのはフォーカスされないけど実はすごく大切で。治療を始めるのも大変だけど、やめるのはもっと大変なんです。技術が発展していると言っても限界があるからね。

体外受精や顕微授精さえすれば簡単に妊娠できるんではないかと思っている人も多いけど、出産率を見ると、実際は年齢によってはかなり低くなっていきます。※ 出典:ARTデータブック 2013年 PPTX版
体外受精1回で妊娠率は3割ぐらい。ただ、年齢により妊娠率は下がり流産が増えていくから出産率で見ると40歳で8%、42歳で4%、44歳では1〜2%。5回6回とトライして授からないとなれば、かなり厳しい。ただ、ゼロではないんだよね。

時々50歳ぐらいの芸能人が妊娠した!とニュースになって騒がれるけど、実際の出産率についてはあまり話題にならない。だから、長く治療を頑張ってきた人ほど、「次こそはもしかしたら」という気持ちになるし、諦めがつきにくいのは当然ですよね。
もはや確率の問題というか、ゼロではないから余計難しいですよね。お医者さんからしても「もうやめたほうがいいよ」とか「まだやったら?」とか言えることでもないから、自分で判断しないといけない。
治療をやめる基準みたいなものが基本的にはないからね。正直クリニックもビジネスだから、来てもらえば収入になるわけで、「やりたい」という人に対して「やらないほうがいい」とはなかなか言えないですよね。ただ、実績があって自信のあるクリニックほど、ちゃんと終結の話もしていると思います。あと日本の場合、費用は高いんだけど、頑張ればぎりぎりなんとかなる値段ですからね。アメリカはものすごく高額だから、何回もできるもんじゃなくて、ある意味諦めもつきやすいということもあるでしょうね。

■“できるだけ自然に“を好む日本。海外と比較すると体外受精の成功率は低い

実は日本は世界でも有数の体外受精国なんですよね。実施回数でいうとトップに入るぐらい。なのに、海外と比較すると体外受精から無事出産に至るまでの成功率は少し低めと言われています。

データを見ると、排卵誘発剤できちんと刺激して一度にたくさん卵をとって体外受精させ、受精卵をできるだけ多く作り凍結、というほうが成績はいい。でも日本は「できるだけ自然に」という価値観を持ち込むのか、そこまで積極的な排卵誘発を行わない傾向にあるんです。たとえば自然周期だと卵が一個しかとれませんよね。どの卵でもみんな受精能力があるわけじゃないので、受精能力がない卵しかとれなかった場合、その周期は無駄になってしまう。
不妊治療はのんびりやっていたら出産率はどんどん低くなっていくし、お金もよりかかる。なので、治療をするのであればできるだけ効率的で可能性が一番高い方法でやってほしいな、という気持ちはあります。
不妊治療のクリニック選びって、成功実績や使っている治療法などを全部調べて、自己責任でクリニックを選ばないといけない。自分にとってなにが本当にベストなのか、ある程度自分自身で見極めないといけない状況ですよね。
情報を見極めるリテラシーは患者にも必要とされます。それでいうと、残念ながら欧米と比べて日本はリテラシーが低い。論文などのエビデンスよりも、知恵袋の回答のほうを信じてしまったり、ソースを確認せずにネットで書かれている情報を鵜呑みにしてしまう人が多いです。患者さんに「〜というのは本当ですか」って言われて「誰がそんなこと言ってるの?!」と聞くと「わからないけれど、ネットにそう書いてあったんで」・・・なんて事はよくあるよね。
リテラシーが高い人が増えてきていると思うけど、情報も玉石混合だから当然間違ったものも蔓延していて……なかなか難しいですよね。

■情報を見極めるリテラシーは重要。不安があるなら臆せずに聞いてみたほうがいい

情報を見極めるのが難しい場合、不安や疑問に思った事をクリニックにいったときにお医者さんに質問するのも大切ですよね?
どんどん質問すべきだと思います。
知恵袋なんか見ていても、「私はこういう診断されたんだけど、これってどういうことですか?どうすればいいですか?」といった投稿がよくあって。せっかくクリニックに行ったなら、僕たち医者に直接聞いてよ〜って思うよね(笑)。ネットで声をかけるより、自分の担当医に聞いたほうがいい。

もちろんクリニックによっては常に混雑していたり、医師が冷たい態度をとったり、聞きにくい雰囲気を醸し出してしまっていることがあるのも確かなんですけどね……。ただ医師は患者の質問に答えるのも仕事なので、不安があるなら臆せずに聞いてみたほうがいい。
うちの場合は、最初から最終手段である顕微受精をするしかないと言われてしまって。私も不安なので論文を読み漁って、先生にも色々聞きました。 不妊治療って見えないから怖いというか。だから疑問も多くなるんだと思います。私たちの卵子と精子を、知らない誰かがラボのなかで人為的に選定する。患者からするとできれば全プロセスを見せて欲しいぐらいの勢いです(笑)。
実際精子と卵子を取り違えるという事件も起こってるし、怖くなったり疑問に思うのは自然な感覚だよね。どんな治療もそうですが、特に不妊治療の場合、患者さん自身がよくわからないまま始めて、いつまでもやめられないでいると、生殺しのようになってしまうからね。聞くのはすごく重要。
私の場合ですが、そういう不安も含めて医者に聞いたり、不妊治療をしている友人とオープンに話すことで、怖い思いも薄れてくる。不妊治療をやっている人って実はたくさんいるのに、日本では「なるべくなら人に言いたくない」という風潮がある気がしています。
友人同士でお互い話せると、それだけで気持ちがだいぶ楽になるのにね。意外と周りにも似た境遇の人がいたりして「自分だけじゃないんだ」と安心できることもあるだろうし。ただそこは個人差も大きい。オープンに話すのが嫌な人も多いからね。
特に男性同士だと「俺精子が少なくってさー」「俺も少ないんだー!」とはなりにくいよね。
確かに、女性同士でも言いにくいときっていうのはやっぱりあって。みんなが子持ちとか妊娠中で、その話で盛り上がってるときに、以前なら「私も早く欲しいなー」とかガンガン話題に入っていけた。でもいまは、もし自分に注目されて「まみは?」と聞かれたとき、「これから不妊治療するんだ」と言ったら、せっかく盛り上がってるのにみんなが気を使ってしまって変な空気になりそうとか。それでなるべく注目を集めないように気配を消してみたり(笑)。

■不妊治療がだめだったときの、養子という選択肢

オープンに話さないといえば、養子縁組もその一つ。私も夫も、身近に養子の人がいることもあって、もともと養子を受け入れることに抵抗がなくて。もし不妊治療してもできなかったら選択肢として養子も考えよう、という話をしているんですが、日本の現状って?
日本だと特別養子縁組の件数は、増えてきてはいるもののまだ少ないんですよね。年間400件とか500件とか。日本は血のつながりを重視する傾向にあってオープンにしないから、周囲だけでなく子ども本人にすら養子だということを隠していることもある。
年間500件!アメリカの約12万件に比べると件数がここまで違うんですね。
そう、まったく違うんです。文化の違いが大きいのでしょうが、日本の場合、子どもを支えるシステムも欧米とは違ってるんです。
母親がなんらかの理由で赤ちゃんを育てられない場合、欧米だと基本的には「家庭養護」といって、血のつながりはなくても家庭の中の安定した環境で育てていくべき、という考えが自然ですよね。でも日本では、まず乳児院に入れて、そこから18歳、20歳まで施設で育てるという「施設養護」が普通の認識です。

でもこの「施設養護」って、大抵の日本人は気づいてないけど、子どものための福祉でなく、大人の事情を優先したものでしょ。国際社会からは、「子どもを施設に入れっぱなしにして家庭を与えないというのは国家のネグレクトである」と散々批判されてきて、2011年ぐらいからようやく政府も「できるだけ家庭養護」でという方針を出して、法律も整えようとしている段階。国民の意識も含めてまだまだこれからですよね。

■オープンアダプションで養子をタブー化しない

欧米だと小さい時から自分が養子だと普通に知っているケースが多いですよね。「私養子なんだー」って周囲にオープンにしている子も多い。
そうだね。そもそも養子として受け入れる子どもの人種が違う場合も多いので、見た目からして明らかに違うケースもあるしね。

これまで日本では、養子に出す側の実親にも、「全て隠すのが善」という考え方が強かったんですよね。
例えば養子に出す子を出産する場合、母親は子どもと会えないことが普通だったんです。生まれた瞬間に赤ちゃんは連れていかれる。目隠しをしてお産をさせられることもあったようです。「赤ちゃんを見ると忘れられなくなるだろう」という考えのもと、見せないことで「なかったこと」にしようとする考えからそんな風にするんです。
えっ目隠しで出産?!信じられない。妊娠・出産を実際に体験しているわけで、視覚的に赤ちゃんを見なければケロッと平気になれるという問題ではないですよね。
そう。女性からすれば当然「なかったこと」になんてならないし、わけもわからないまま目隠しされてお産するという異常な状況によって、のちのちにPTSD(心的外傷後ストレス障害)になったりもする。

僕は民間の養子あっせん団体「アクロスジャパン」に顧問として関わっているんですが、オープンアダプションといって、隠すんじゃなくて全部オープンにしましょう、という形をとっています。
だからお産も普通で、カンガルーケアといって出産直後の抱っこや希望があれば授乳もしてもらっています。もちろん強制ではないので嫌であればしなくてもいい。

女性は、お産すると幸せや愛情などの感情にも影響するホルモン、オキシトシンが出るから、望まない妊娠で養子に出す子であっても、自然と愛情がわいてくる。だから、育てられない現状に変わりはないんだけど、そうして出会うと離れる時は悲嘆にくれてワーッと泣いてしまうことが多い。でも感情が出ることは自然なことなんです。見せないで感情に蓋をさせるのでなく、きちんと出会ってから別れるからこそ次のステージへと進んでゆける。実親のそうしたプロセスまで僕たちはサポートしています。

希望すれば、養子先の生活の様子を知ることも、子どもの写真を見ることもできるんですが、「この子はこんなに大切にされてるんだ」と実際に知ることで、自分自身までもが大切にされているような感じがする、と言う実親も多いんですね。望まぬ妊娠・出産をすることで多大なストレスにさらされてきたし、育てられない罪悪感もある。実親自身が愛情をかけられてこなかったなど成育歴に問題があるケースも多い。養子縁組は予期せぬことだったけど、結果として命がつながって自分が産んだ子が大切にされて元気で幸せに育っていることで自分も救われた、という声をよく聞きます。

産んだという記憶は消えないわけだから、全部隠してなかったことにすれば、すっかり忘れて気楽に生きられるなんていうわけにはいかないんです。
こうやって、養子縁組のシステムだけじゃなく、“隠す”のではなくて、”受け入れる“というあり方が拡がってゆけば、もう少し日本でも養子という選択肢が一般的になってゆくと思います。
不妊治療しているカップルにとっても、妊娠出産できない=絶対に子どもが持てない、と考えるのと、いやいや出産できなくても子どもは持てる、というのでは大きな差がありますよね。
そうそう。血は繋がってなくたって、親子関係はしっかり築ける。反抗期になったらどうする、とか、親が虐待したらどうする、とよく言われるんだけど、それは血の繋がった親子だって同じリスクがあるわけで。
それ、ゼロリスク重視の日本だとすごい言われそうですね・・・ 「もしかしたら問題になるかもだから、もう全部やめときましょう」みたいな。
そう、日本人はゼロリスク大好きでしょう。「もしこうなったらどうするんですか」と。
子宮頸がんワクチンなんかもそうだけどね。なにかあるとそれは気の毒ですが、メリットもすべて度外視して全部やめてしまおうと情緒的になってしまう。こうなるとエビデンスが揃ったとしても理解を得るのに時間がかかるんです。

養子でも普通の親子関係を築いている人たちのことを社会がもっと知るようになって、「そういう形もありだよね」となっていかないと、なかなか数は増えていかないと思います。取り組みは少しずつ増えているけどね。夫婦だって血は繋がってないけど家族になれるでしょう。子どもも同じなんですけどね。

■他人を受け入れる唯一の臓器、子宮

先生のサイトに書かれている「子宮的に生きる」というコンセプトが素敵だなと思いました。
ありがとうございます。例えば臓器移植って、実の親子でも拒絶反応を起こしてしまうでしょ。でも子宮って全て受け入れるんだよね。代理母なんてまさにそうですけど、閉経していても、ホルモンを投与して環境を整えれば、他人の卵子と精子を使った誰の受精卵でも受け入れて育てちゃう。

異質のものであっても子宮のようにそのまま受け入れることから全てが始まるんじゃないかと。排他的になって相手を否定したり、切り捨てたり、対立して押さえつけたりすることからは始まらない。命の原点がそうだからね。まずは受け入れてみる。それを「子宮的に生きよう」と言っています。
最近マインドフルネスや瞑想が科学的にも注目されることが増えてきましたよね。
科学や医学が進むほど、マインドフルネスや瞑想だけでなく、プラシーボや自己治癒力などが注目されるようになるのはおもしろいですよね。当たり前なんだけど、体って「産む機械」ではない。テクノロジーが全てではないんですね。

瞑想では、「無になる」と言われるけど、「無」って頭と心の中を真っ白にするということではないですよね。もともと空っぽになんてできないですしね。 内側から湧き出てくる感情や思考を無理やり抑えようとしないで、逆にそのまま受け入れて流してゆけること。雑念にとらわれないようになる状態ですよね。不妊治療もね、いろんな感情が生まれてくるのは自然なので、いかにそれを受け入れて流してゆけるかが大切です。
仮に授からなかったとして、じゃあ不妊治療の時間が無駄だったのか、というとそんなことはないわけです。不妊って喪失ですよね。「結婚して子どもができて」など昔から漠然と思い描いていたイメージとは違う現実になっている、という喪失。その喪失の時期をどう過ごしてゆけるか。

感情を抑えて「明日からがんばろう!」なんて、無理があるわけで。どんなにつらい結果であっても子宮のようにまずはそのまま受け入れてみる。辛い喪失の時間が続いたとしても、この時間があるからこそどこかで折り合いをつけて諦められる。そして新たな人生、物語を生きていこうと思えるようになってくる。それが「喪失の完遂」です。こんな喪失も乗り越えられたんだから、次になにか起きてもまあ大丈夫かな、と。受け入れることから、そのままの自分で豊かに生きてゆけるようになる。それを僕はAccept & Startと呼んで自分のテーマにもしています。

あとは、幸せの多様性を考える、というのも重要なことでしょう。「絶対にこうじゃないとダメ!」と決めちゃっていると、想定外のことが起きた時の衝撃が大きいし、修正も難しい。もし思い描いていたものと違う人生になったとしても、「これはこれでいいんじゃないか」と思えて、そこからまた新たな物語を生きてゆけるたくましさが育まれていくといいですね。幸せやゴールはひとそれぞれですから。

■あとがき

こうして竹内先生とざっくばらんにお話する機会をいただいたことで、「なんとなく怖い」「できなかった時に自分がどう感じるのか不安」といったモヤモヤが晴れてきました。もちろん不安はまだまだあるけど、それは当たり前。人生コントロールできるものじゃないんだし、そういう弱い自分も受け入れて、「えいっ、なるようになれ!」と流れに身をまかせる。まずは数週間後に控えた治療に、ポジティブな気持ちで臨んできます。
(取材・文 Mami)
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