■オールアバウトがグループとして打ち出す次の一手
—オールアバウトは、グループ戦略としてメディア以外の事業にも進出していると思いますが、具体的にどのように展開されているのでしょうか。
話題の商品を定価の半額から3分の1の価格でお得に試せる「サンプル百貨店」というサンプリングサイトも子会社のオールアバウトライフマーケティングが運営しており、売上がすごく伸びています。コンビニやスーパーで売っているような飲み物・お菓子・食べ物から始まって、今はお酒・薬・ファッションなど、さまざまなジャンルにまで広がっていて、さらに今後はサービスECの領域、具体的には宿やレストランの予約やコンサートチケットなどにまで広げていくこともできます。
伸びている要因のひとつとして会員の方がお試しした結果をクチコミとして拡散してくれるということがあります。そこで影響力の強いプロシューマーと呼ばれる人が生まれていて、企業に対する影響力を出し始めているんです。プロシューマーの方のクチコミやフィードバックが商品の改善につながったり、他の人のお試し買いを後押ししたり。この方たちも一種のスキルワーカーです。
サンプル百貨店では年に4回、「RSP(リアルサンプリングプロモーション)」という体験型イベントを行っています。招待した会員1,000人に対して、企業の商品開発の担当者が直接自社商品のプレゼンテーションをしたり、実際に商品を試食してもらったりします。会場では、プロシューマーが市民記者と化し、記者会見さながらにスマホで会場の様子を撮影。メーカー担当者の話と共に、商品を使ってみた(食べてみた)感想を即座にブログやSNSで紹介し、その投稿はネット上で拡散されていきます。このイベント会場の後方では、小売店のバイヤーの皆さんも、その様子をご覧になっていて、生活者の反応を見るトライアルマーケティングの機会にもなっています。
このように企業が消費者と直接的に対峙する場を作るということは、企業にとって新しいマーケティング手法になりますし、生活者にとっては商品を知って試せることで“失敗しないで買う”きっかけになると考えています。
このように企業が消費者と直接的に対峙する場を作るということは、企業にとって新しいマーケティング手法になりますし、生活者にとっては商品を知って試せることで“失敗しないで買う”きっかけになると考えています。
第56回「リアルサンプリングプロモーション」が行われました - About All About
メーカーの商品開発担当者が自ら登壇し、女性生活者に自社商品をプレゼンした上で、実商品をお試しいただくリアルイベント「リアルサンプリングプロモーション(RSP)」について詳しくはこちら!
—インターネット上のメディアだけでなく、リアルにも進出されているのですね。
はい。リアルに進出している事業として、もうひとつ、生涯学習を領域としたオールアバウトライフワークスが手がける「楽習フォーラム」というサービスがあります。成熟した超高齢社会の日本で、人にものを教えるとか、人からものを学ぶことは一生続く重要なことだと思っています。このサービスは、生涯学習を支援するために、主に子育てが終わった主婦のみなさんに、好きなカリキュラムで技能を習得してもらったあと、自宅の空き部屋などを利用して教室を開いていただき、近所から生徒を集めて一緒にコミュニティを作ってもらうというものです。カリキュラムは現在50分野ほどあり、中でも主力はジュエリー作りやお花などのハンドメイド。“好きを仕事にする”というのがビジョンワードです。私たちが育成・輩出した先生が、現在、全国で15,000人ほど活動しています。
主婦の方が社会に戻る構造として、自分で先生になることで月々数万~数十万を継続的に稼げるようになると、自立できますよね。そうした動きがマイクロで、全国に網目状に増えていくと、大げさに言えば今の日本政府が提唱している「地方の活性化・女性の活躍・モノづくり」、これらをすべて草の根で実現していけるプラットフォームとなっています。
主婦の方が社会に戻る構造として、自分で先生になることで月々数万~数十万を継続的に稼げるようになると、自立できますよね。そうした動きがマイクロで、全国に網目状に増えていくと、大げさに言えば今の日本政府が提唱している「地方の活性化・女性の活躍・モノづくり」、これらをすべて草の根で実現していけるプラットフォームとなっています。
楽習フォーラム
生涯学習の普及推進を活動の大きな目標に掲げ、各分野のプロフェッショナルを育成・輩出することを目的としてオールアバウトライフワークスが企画・運営。
各分野の技能や知識を体系化し講座にすることにより、その分野を「学び」「教え」「伝え」ていきます。
このようなやり方で社会課題を解決して、日本を豊かにしていく。また、世界の国々も日本のように成熟化していくのは時間の問題なので、いずれ世界でも同じ問題が起きていく。そのときにトップバッターとして課題解決するしくみを持っていれば、将来的にはグローバルでも事業展開できますよね。こんな夢を持って、スキルワーカーの創出を軸に、今の事業を展開しています。
—江幡さんがオールアバウト創業当時に思い描かれたビジョン通りに進んでいるように見えますが、まだできていないことはあるのでしょうか。
たくさんありますよ。メディアの「All About」でいうと、月間ユーザーが3,000万人以上いるので、「不安なく・賢く・自分らしく」生きることを支援する“知の交流”はある程度できていると思います。昨今インターネット業界で「ネットメディアは情報の信頼性がない」と言われる中で「All About」のようなメディアが再注目されてると思っていますし、2000年代から先進的な構造で信頼感を損なわないでやってきたという点において、情報レベルでは大きな影響力を持っていると思います。が、実際にコンテンツを読んだ後に行動に結びついているかというと、まだまだ不十分だと思っています。
3年前に変えたサイトスローガン「あなたの明日が動きだす」にもある通り、行動を促すフェーズへと移行しているところです。もっともっと、そこはやっていかないといけません。
一方で、メディア以外の領域には着手して日が浅いですし、掲げている目標が高邁すぎるので、まだまだ2合目くらいじゃないですか。僕が死ぬまでに、終わらないかもしれませんね。でも、約300人のグループ社員、約900人のガイドをはじめとした1万人を越えるスキルワーカーの皆さん、3,000万人以上のユーザーなど、多くの人がこのビジョンに共感して、うねりを起こしてくれれば、社会システムを変えることも決して夢じゃないと思っているんです。
3年前に変えたサイトスローガン「あなたの明日が動きだす」にもある通り、行動を促すフェーズへと移行しているところです。もっともっと、そこはやっていかないといけません。
一方で、メディア以外の領域には着手して日が浅いですし、掲げている目標が高邁すぎるので、まだまだ2合目くらいじゃないですか。僕が死ぬまでに、終わらないかもしれませんね。でも、約300人のグループ社員、約900人のガイドをはじめとした1万人を越えるスキルワーカーの皆さん、3,000万人以上のユーザーなど、多くの人がこのビジョンに共感して、うねりを起こしてくれれば、社会システムを変えることも決して夢じゃないと思っているんです。
(取材・文 野本 纏花)
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