<リーダーズvol.13> 目指すべきは持続可能なエコシステムの構築
オールアバウトでは、2017年にアドベリフィケーションツールを導入し、優良メディアのみに絞ったアドネットワーク「All Aboutプライムアド」をローンチしました。次いで2018年5月よりNTTドコモと提携し、同社の膨大なユーザーデータと「All About」の3000万MAUのデータを掛け合わせて、新たなインサイトの発見や広告商品の開発などに取り組んでいく考えです。オールアバウトの現状のアセットと、今後に目指すプラットフォームの姿について、メディアビジネス本部の中島さんと佐々木さんに聞きました。
中島 大輔(なかじま だいすけ) メディアビジネス本部 プラットフォーム開発部 ジェネラルマネジャー 制作会社でWebディレクターとして勤務後、Webサービス事業会社において、ブログ、アクセス解析、アドネットワークなどのプロダクトマネージャーとして勤務。オールアバウトにおいては、メディア企画を担当後、現在はジェネラルマネジャーとしてアドネットワークをはじめとした広告プラットフォームの開発を推進。 |
佐々木 望(ささき のぞむ) メディアビジネス本部 商品企画部 ジェネラルマネジャー 大手旅行会社で法人営業として勤務後、2006年にオールアバウトに入社。広告営業として5年従事したのち、グループ会社の株式会社オールアバウトライフマーケティングの営業、マーケティング、オペレーションを担当。2015年よりオールアバウトに戻り、コンテンツオペレーション部のジェネラルマネージャーに就任。2018年4月より商品企画部のジェネラルマネージャーを務める。 |
■コンテンツマーケティングの成否を握るのは“誠実さ”
――コンテンツマーケティングを主力製品とするオールアバウト。数年前からこの手段は広がっているように思いますが、なぜ今そこを強みとするのでしょうか。まず、現状をどう捉えていますか?
――佐々木 コンテンツマーケティングは「ユーザーにとって有益な情報を提供して潜在層を獲得する」手段として考えられています。情報があふれ、広告として一方的に発信するだけではもはや生活者に届かないので、コンテンツとして届けて接点を持ち、そこから徐々にエンゲージメントを築いていく手法ですね。この言葉が流行り始めたころは、コンテンツによるSEO対策という側面も大いにあり、似たような記事が量産されました。 ただ、2016年末に起こったメディアの信頼性が問われる事件をターニングポイントに、今改めて「本当に効くコンテンツマーケティングとは何か?」という観点に企業が注目し始めています。
――改めてコンテンツマーケティングに注目が集まっているのは、なぜなのでしょう?
――佐々木 大きく、ユーザー環境の変化と、広告主企業の変化という2つの理由があると考えています。まずユーザー側からすると、画面の小さいスマートフォン上で広告に画面を占有されることや、リターゲティング広告など広告手法の発展と細分化によって、ますます広告が“嫌われ者”に思われる傾向が強くなっていること。前述の事件は、普通にネットを使っている一般ユーザーにもニュースとして広がったため、私見ですが以前より情報の信頼性を気にするユーザーも増えたと思います。それに伴って、「企業が一方的に発信する情報は信じられない」という見方も以前より強まったため、コンテンツ風に仕立てていても、“売らんかな”という姿勢が透けているとほとんど効果が得られなくなっています。
――以前より、誠実なコンテンツマーケティングが求められているということですね。
――佐々木 まさに、そうですね。ユーザーに誠実であろうとすることは、同時に情報の質が問われることでもあります。もちろんマーケティング手法である以上、企業には意図があって当然ですが、コンテンツマーケティングの成果が上がっている例はいずれも、ユーザーが情報価値を得て納得した上で企業と関係を構築できているものが多いです。
■企業が避けて通れないアドベリフィケーション
――もうひとつの、広告を出稿する企業の変化についてうかがえますか?
――佐々木
企業側には、ユーザー側の変化を受けての変容もありますが、昨年広告マーケティング業界で大きな話題になったアドベリフィケーションの影響がまず挙げられます。反社会的勢力のサイトなど、望んでいないプレイスメントへの広告掲出による企業のブランド毀損リスク(ブランドセーフティ)や、広告のビューアビリティー(広告の視認性)、そしてアドフラウド(広告詐欺)の問題は、実は以前からあったことですが、アメリカの流れを受けて日本の大手企業がこの問題の対策に本腰を入れたのが、昨年でした。
ディスプレイ広告に対する企業の信頼性が薄れ、それに反比例してコンテンツマーケティングを重視する企業が増えているのだと思います。同時に、企業が自身のメッセージを託す場としてのメディアの信頼性を問う側面も増しています。
ディスプレイ広告に対する企業の信頼性が薄れ、それに反比例してコンテンツマーケティングを重視する企業が増えているのだと思います。同時に、企業が自身のメッセージを託す場としてのメディアの信頼性を問う側面も増しています。
また、これはもう少しスパンが長い変化ですが、そもそも刈り取り施策として広まったネット広告がもはや刈り取り切った状態となり、オンラインでもファネルの上位から、つまり認知や関心喚起の段階から取り組む必要が出始めているのも大きいですね。併せて、デジタルマーケティングの重要性が増し、大手ナショナルクライアントなどブランド企業もブランディングやエンゲージメント強化を目的にデジタル施策に力を入れ始めているので、その点でもコンテンツマーケティングが有効な手法として浮上してきているとみています。
――今指摘されたアドベリ対策としては、オールアバウトは昨年アドベリツールを導入していますよね?
――中島 ええ。オールアバウトが主体として提供しているのはディスプレイ広告ではなくネイティブ広告ですが、ネイティブ広告にもやはりこの対策は重要だと考え、グローバルでメジャーな存在であるインテグラル・アド・サイエンス(IAS)のアドベリフィケーションツールを導入しました。同時に、IASが基準とする透明性と安全性を担保する媒体社として、同社のCertified Partnerに国内で初めて認定されています。
「All About」が国内媒体で初めてIAS社のアドベリフィケーションツールを正式導入
総合情報サイト「All About」が国内媒体で初めてIAS社のアドベリフィケーションツールを記事型ネイティブ広告に正式導入~不正インプレッション(アドフラウド)への対策をはじめ、ブランドセーフティ、ビューアビリティへの取り組みを強化し、高品質な広告在庫の提供を実現~
これは、同じく昨年にリリースしたインフィード型のアドネットワーク「All Aboutプライムアド」を実現するための準備でもありました。これは当社が独自の基準で選定したメディアのみで構築するネットワークで、当社のコンテンツマーケティングの力を最大化する一翼を担っています。
独自の配信システムによって、RTBに接続せず、かつ広告主のデータと当社のデータを掛け合わせることでユーザーの興味関心軸を把握し、個別に最適化したレコメンド機能により、One to Oneの高度なターゲティングが可能です。同時に、信頼性の高い良質なメディアに新たなマネタイズの道を提供することで、そういったメディアが存続し、業界全体がよい方向に活性化していくよう貢献したいという意図もあります。
独自の配信システムによって、RTBに接続せず、かつ広告主のデータと当社のデータを掛け合わせることでユーザーの興味関心軸を把握し、個別に最適化したレコメンド機能により、One to Oneの高度なターゲティングが可能です。同時に、信頼性の高い良質なメディアに新たなマネタイズの道を提供することで、そういったメディアが存続し、業界全体がよい方向に活性化していくよう貢献したいという意図もあります。
コンテンツマーケティングプラットフォーム「All About PrimeAd(プライムアド) 」
All About PrimeAdは、60の一次情報メディアがアライアンスを結び、コンテンツ制作から広告配信、レポートまでを支援するコンテンツマーケティングプラットフォームです。
元々当社では、All Aboutのメディア内で提供している運用型コンテンツマーケティングにおいて、複数のタイアップ記事の反応データを使ったコンテンツの最適化に取り組んできました。プライムアドは、その一段階前に提携メディアのインフィード広告が入る形となり、そこからAll About内のタイアップ記事に誘導することで、最終的に広告主のサイトに誘導するユーザーを質と量ともに高めることができます。
オールアバウトがネイティブアドネットワーク『All Aboutプライムアド』を開始
オールアバウトがネイティブアドネットワーク『All Aboutプライムアド』を開始〜インフィード型のアドネットワークを構築し、効果の高いコンテンツマーケティングを支援〜〜IAS社アドベリフィケーションツールも導入し、透明性・安全性の高い配信環境を提供~
■月間3000万MAUから質の高いユーザーを送客
――なるほど。オールアバウトのコンテンツマーケティングの力、というフレーズが上がりましたが、そもそもその力の要因とは何でしょうか?
――佐々木 大きくは、質の高いユーザーへのリーチ、編集制作力、インサイトの把握の3点があると考えています。 まず、他のコンテンツマーケティング提供事業者にない当社ならではの特徴として、18年にわたって純粋なメディア事業を展開していることが真っ先に挙げられます。1300のテーマと18万本の記事に、今も月間3000万以上のアクティブユーザーが訪れています。この量と同時に、どの記事も各分野の専門家による信頼性の高い情報提供にこだわって、協力いただいている専門家は約900人に上ります。メディアの性質として新聞をはじめとするマスメディアとは異なる部分もあると思いますが、信頼性の高い情報を届ける点においては劣っていないという自負があります。
地道に信頼性にこだわった情報発信を続けた結果、現在ではユーザーが能動的に摂取する一次情報サイトとして、一定の地位を築けているのではないかと考えています。その結果、クライアント企業への質の高いユーザー送客が実現できています。
――メディア事業を運営しているという強みは、2つ目の編集制作力とも関連していますか?
――佐々木 その通りです。オールアバウトのコンテンツマーケティングの力は、メディア事業で培った編集制作力と表裏一体です。自前のメディアを持っているからこそ、読者に響く切り口やフレーズについての知見を蓄積しており、それを前述の運用型コンテンツマーケティングにおいても十分活かしています。
特に以前からこだわっているのは、誘導枠からのクリック率、記事の読了率、広告主サイトへの送客数、コンバージョンポイントへの遷移率です。コンテンツの反響を測る指標としてはPVが未だ一般的かもしれませんが、仮に刺激的なタイトルによってPVが伸びたとしても、すぐに離脱されたら「情報がユーザーに届いた」とはいえません。つくり込んだコンテンツが本当にユーザーの役に立ったのか、心に響いたかどうかを把握するのは、これらの複数の指標をもって記事の総合的な満足度を見るべき。コンテンツマーケティングにおいてもその部分を含めたノウハウを反映しています。
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