<リーダーズvol.12> 不確実な世の中で”長く続く会社”になるために
今年3月の決算説明会にて、7期連続増収・過去最高売上高更新を発表したオールアバウト。2020年に迎える創業20周年に向けて、今、順調に業績を拡大している背景について、代表の江幡さんに、改めて振り返ってもらいました。
■2020年になりたい姿であるために
——2005年の上場以降、リーマンショックや東日本大震災など、数々の困難がありましたが、これまでどのように経営の舵を切って来られましたか?
そうですね。リーマンショックまでは広告ビジネスを中心に、順調に伸びていたのですが、2009年頃を境に、広告業界全体が大きな打撃を受けました。そのままのやり方では立ち行かなくなったので、会社の体制も含め、これから仕掛けようとしていた様々な取り組みもいったんリセットせざるを得なくなりました。
そこから約2年をかけて立て直しに入ったわけですが、具体的に行ったことは3つです。まず1つめは、スマートフォンの登場による利用環境の大きな変化へ対応すること。2つめは、他社にはない価値を生み出せる特色のあるEC、つまり「サンプル百貨店」を始めること。そして3つめは、事業領域ごとに会社を切り分けたグループ経営にシフトすることです。
そこから約2年をかけて立て直しに入ったわけですが、具体的に行ったことは3つです。まず1つめは、スマートフォンの登場による利用環境の大きな変化へ対応すること。2つめは、他社にはない価値を生み出せる特色のあるEC、つまり「サンプル百貨店」を始めること。そして3つめは、事業領域ごとに会社を切り分けたグループ経営にシフトすることです。
そのようにして、やっと明るい兆しが見え始めた頃に、東日本大震災が起きました。しかし、「専門家のネットワークをベースに信頼性の高い情報を届ける」という大きなやり方は絶対にぶらすことなく、じっくり取り組んできた結果が、今回の7期連続増収につながっているのだと思います。
この6〜7年の間に、事業のポートフォリオが大きく変わりました。かつて広告ビジネスがほぼ100%に近い状態だったところから、個人からお金をいただくコマース事業や生涯学習事業などへと収益源が広がっています。この多様化したポートフォリオは、変化に対応する力が増えた表れですね。なりたい自分たちになってきていると感じています。
この6〜7年の間に、事業のポートフォリオが大きく変わりました。かつて広告ビジネスがほぼ100%に近い状態だったところから、個人からお金をいただくコマース事業や生涯学習事業などへと収益源が広がっています。この多様化したポートフォリオは、変化に対応する力が増えた表れですね。なりたい自分たちになってきていると感じています。
——順風満帆に見えますが、現時点での課題はありますか?
私は2020年をひとつの節目と捉えているんですね。日本経済の区切りとなるのが2020年であり、その後の日本経済、もしくは世界経済の中で置かれた日本の状況は、不確実性の高いものになると予測しています。他国に類を見ない超少子高齢化という人口構造、戦後の日本を支えてきた社会システムの破綻など、様々な問題を抱えているからです。
そんな不確実な社会の中でも長く続く、価値を提供できる会社にしたいという思いで、この6〜7年の間、経営をしてきました。私たちは「個人を豊かに、社会を元気に。」というビジョンを掲げていますが、それはまさに社会構造の変化によって、国や企業が中心の社会システムから、個人が主軸となる社会システムにしていきたい。その実現のために私たち一人ひとりが自立する必要があり、それを支援したいという思いからきています。
そんな不確実な社会の中でも長く続く、価値を提供できる会社にしたいという思いで、この6〜7年の間、経営をしてきました。私たちは「個人を豊かに、社会を元気に。」というビジョンを掲げていますが、それはまさに社会構造の変化によって、国や企業が中心の社会システムから、個人が主軸となる社会システムにしていきたい。その実現のために私たち一人ひとりが自立する必要があり、それを支援したいという思いからきています。
そう考えると、2020年にあるべき理想の姿と現状の間には、大きく3つの課題があると思っています。1つめは、非連続な影響力の拡大です。「All About」は月間3,000万人にご利用いただいている日本最大級の総合情報サイトですし、今グループを牽引しているお試し買いサイト「サンプル百貨店」も利用者数は約200万人と、どちらもそこそこの規模感はあります。しかし、利用者の人数だけでなく、関係性の深さや利用する必然性の度合いといった影響力を考えると、私たちが目指す社会構造を変えられるほどのレベルに到達するには、まだまだ弱い。
次に2つめは、データ資産の強化です。影響規模を拡大するためには、どうしてもテクノロジーの進化に対応する必要があります。1,300の分野で18万本の記事を保有している「All About」では、3,000万人分の閲覧データが蓄積されていますが、会員制をとっていないため、ユーザー属性を独自に収集しているわけではないんですね。一方「サンプル百貨店」の購買データが網羅しているのは200万人くらいなので、もっとデータの規模と深さを拡大しなければなりません。
まずはこの2つが飛躍的に拡大しなければ、2020年以降に私たちがなりたい姿になるための準備が整わないと思っています。最後に3つめの課題は、今メディア系とコマース系の2本柱でやっていますが、3本目の柱を作ることですね。
次に2つめは、データ資産の強化です。影響規模を拡大するためには、どうしてもテクノロジーの進化に対応する必要があります。1,300の分野で18万本の記事を保有している「All About」では、3,000万人分の閲覧データが蓄積されていますが、会員制をとっていないため、ユーザー属性を独自に収集しているわけではないんですね。一方「サンプル百貨店」の購買データが網羅しているのは200万人くらいなので、もっとデータの規模と深さを拡大しなければなりません。
まずはこの2つが飛躍的に拡大しなければ、2020年以降に私たちがなりたい姿になるための準備が整わないと思っています。最後に3つめの課題は、今メディア系とコマース系の2本柱でやっていますが、3本目の柱を作ることですね。
■柱を太くするために今やるべきこと
——「非連続な影響力の拡大」と「データ資産の強化」を課題に感じているということですが、既存の2本の柱であるメディアとコマース事業をどのように太くしていく予定ですか?
5月10日に発表したNTTドコモとの資本業務提携がまさに2本柱を強くするためなんですね。ご存知の通り、NTTドコモが保有する利用者の数は、国内最大級です。そしてさらに「dメニュー」などの様々な自社サービスを展開される中で、多くのユーザー接点をお持ちです。こうしたNTTドコモの強みと、オールアバウトが持っているコンテンツマーケティングの知見やコンテンツの生成力、人のネットワークが組み合わせれば、2本柱を太くすることができると考えています。
もっと具体的に言えば、NTTドコモは、マーケティングファネルの「リーチ」「理解促進・態度変容」「アクション」のうち、「リーチ」と「アクション」つまり入口と出口は強く、我々は真ん中の「理解促進・態度変容」のところが一番強いところです。互いの強みを持ち寄って、両社のデータを掛け合わせることで、個々の生活者に対する情報流通の最適化と、企業向けマーケティングソリューションの進化を図ろうというのが取り組み内容の1つ。
2つめは、お互いにいろいろなメディアを持っていますので、メディア間の相互送客をするとともに、新たな共同メディアの立ち上げを検討していく予定です。そして3つめは、訪日旅行関連事業です。両社ともに海外向けのメディアを持っていて、オールアバウトは「All About JAPAN」で旅マエの情報を、NTTドコモは「WOW! JAPAN®」で旅ナカの情報を提供していますので、ちょうど補完関係にあります。これは一緒にやったほうが面白いですよね。
これら3つの取り組みを皮切りに、ヘルスケアや金融・決済など、多方面の分野で一緒に取り組めるのではないかと思っています。
もっと具体的に言えば、NTTドコモは、マーケティングファネルの「リーチ」「理解促進・態度変容」「アクション」のうち、「リーチ」と「アクション」つまり入口と出口は強く、我々は真ん中の「理解促進・態度変容」のところが一番強いところです。互いの強みを持ち寄って、両社のデータを掛け合わせることで、個々の生活者に対する情報流通の最適化と、企業向けマーケティングソリューションの進化を図ろうというのが取り組み内容の1つ。
2つめは、お互いにいろいろなメディアを持っていますので、メディア間の相互送客をするとともに、新たな共同メディアの立ち上げを検討していく予定です。そして3つめは、訪日旅行関連事業です。両社ともに海外向けのメディアを持っていて、オールアバウトは「All About JAPAN」で旅マエの情報を、NTTドコモは「WOW! JAPAN®」で旅ナカの情報を提供していますので、ちょうど補完関係にあります。これは一緒にやったほうが面白いですよね。
これら3つの取り組みを皮切りに、ヘルスケアや金融・決済など、多方面の分野で一緒に取り組めるのではないかと思っています。
あと、柱を太くしていく上で、もうひとつ外せないのが、動画とソーシャルメディアの活用です。「All About」は、もともと何かを調べたい時や困った時に使うメディアなので、生活者のみなさんが目的を持って検索をしたら、検索結果の上位に「All About」のコンテンツが出てきて辿り着くという流れがあります。これは我々からするとプル型のユーザー接点なんですね。それに対して、ソーシャルメディアは、ながら利用するテレビに近いプッシュ型です。例えばFacebookであれば動画は自動再生されますので、プッシュ型のソーシャルメディアと動画は、非常に高い親和性を持っています。
この領域は子会社のオールアバウトナビが担当しており、1年前にオールアバウトが日本テレビとの資本業務提携を行ったことを機に、オールアバウトナビにも出資をいただいて、一緒に取り組みを進めているところです。
この領域は子会社のオールアバウトナビが担当しており、1年前にオールアバウトが日本テレビとの資本業務提携を行ったことを機に、オールアバウトナビにも出資をいただいて、一緒に取り組みを進めているところです。
Back Number
Rankingランキング
- MONTH
- WEEK