<リーダーズ Vol.5>WEBメディアのコンテンツ流通に新たな形を生む「citrus」の挑戦
2016年4月にスタートした分散型メディアプラットフォーム「citrus(シトラス)」。立ち上げとともにオールアバウトナビ社へ出向し、「citrus」の編集長を務める荒井 洋平さんは、現在20の提携メディアとともに、新たなメディアの形を模索し続けています。紙出身の編集者である荒井さんならではの着眼点で、Webメディアの未来をどう築いていけるのでしょうか。話を聞きました。
荒井 洋平(あらい ようへい) 株式会社オールアバウトナビ 「citrus」編集長 1971年生まれ。出版社を経て、2006年オールアバウト入社。ウェブマガジン『For M』『For F』『News Dig』の編集長を歴任。2016年よりオールアバウトナビ『citrus』『Facebook navi』編集長に就任。 |
■紙出身の荒井さんが仕掛けた新たなメディア「citrus」
—まずは荒井さんのこれまでのキャリアと現在のお仕事について教えてください。
—「citrus」を立ち上げた背景について教えてください。
「All About」の最大の流入元は検索エンジンなのですが、それ以外の流入を増やすために、トラフィックバーター(提携メディアに自社の記事を提供するのと引き換えに、記事内に自社メディアへのリンクを掲載し、提携先からPVを獲得する)のしくみで記事を提供したり、ソーシャルメディアへの投稿を積極的に行ったりしていました。しかし、そのやり方では、提携先のサイトデザインや運営方針の変更などによって、流入数が乱高下してしまうという課題がありました。5年後、10年後を見据え、オールアバウトグループとして、インターネット全体を“ひとつのメディア”と捉える中で、今後どうやって成長していくべきか考えていました。
ちょうどその頃、オールアバウトナビでも、新しいメディアビジネスの展開を検討していたところでした。2011年にオープンしたオールアバウトナビが運営する世界唯一のFacebook公認ナビゲーションサイト「Facebook navi」には、450万人ものFacebookファンを抱えているという大きなアドバンテージがあります。そこで、この資産を最大限に活用しビジネス拡大を図ることを考え、「Facebook navi」という器をベースに、良質なコンテンツを持つ様々なメディアと手を組みました。それによって生まれたのが、それぞれが独自に作るオリジナルコンテンツに加えて、記事広告までも自社サイトへリンクバックをせず、相互に流通させる新たなメディア「citrus」です。
—グループ会社をまたがっての想いが合致して生まれたのが「citrus」だったのですね。
そうですね。「citrus」の立ち上げには、「オールアバウトグループのビジネス上の課題を解決する」という目的と、僕らの「編集者として、パブリッシャーの価値、オリジナルの記事の価値を維持したい」という想いも大きく影響しています。
僕は編集者として20年くらいメディアビジネスに携わっていますが、昔はオリジナルの記事を作ることにこそ価値があるというか、メディアがオリジナル記事を作るのが当たり前でした。そこからキュレーションメディアやバイラルメディアのような、オリジナルコンテンツを加工して流す人たちが出てきたことにより、相対的にオリジナルの記事を作っているパブリッシャーの地位が下がってきていると思っていて、それを危惧していました。
僕は編集者として20年くらいメディアビジネスに携わっていますが、昔はオリジナルの記事を作ることにこそ価値があるというか、メディアがオリジナル記事を作るのが当たり前でした。そこからキュレーションメディアやバイラルメディアのような、オリジナルコンテンツを加工して流す人たちが出てきたことにより、相対的にオリジナルの記事を作っているパブリッシャーの地位が下がってきていると思っていて、それを危惧していました。
各メディアが独自に作る良質なコンテンツはもっと見られるべきだと思う。だからこそ、パブリッシャー同士で手を取り合い、ドメインにこだわらず編集・広告どちらのコンテンツも自社サイトへのバックリンクを設けずに見せていくという、分散型の時代の波に乗っていきたい。そのため「citrus」ではトラフィックバーターの形はとらず、「450万人のアセットをフル活用してもらう代わりに、互いにビジネスメリットを享受できる仕組みを作っていきましょう」と提携メディアを口説いていきました。
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