■ケース2:「サンプル百貨店」のビジネスモデル
ネットビジネスで大きなマーケットといえば、メディアのほかにECもあります。創業時から、いつかECをやろうと決めていましたが、普通のECではスケールしません。
そこで「サンプル百貨店」というサンプリング事業を手がけていた会社を2011年に買収しました。その会社は当時年商2億円ほどで、一度も黒字化したことがなかったのですが、大きくビジネスモデルを変革することで、今となっては売上高100億円を突破するまでに成長を遂げています。
このオールアバウトライフマーケティングの買収を、僕がなぜ決めたのか。先ほどのフレームワークを当てはめながら、お話ししましょう。
そこで「サンプル百貨店」というサンプリング事業を手がけていた会社を2011年に買収しました。その会社は当時年商2億円ほどで、一度も黒字化したことがなかったのですが、大きくビジネスモデルを変革することで、今となっては売上高100億円を突破するまでに成長を遂げています。
このオールアバウトライフマーケティングの買収を、僕がなぜ決めたのか。先ほどのフレームワークを当てはめながら、お話ししましょう。
(1)「サンプル百貨店」における“新しい価値の創造”
「サンプル百貨店」は、主に飲料やお菓子、日用雑貨などを取り扱う“サンプリングサービス”です。お試しなので1回きりという制約はあるものの、定価の1/3~半額で商品を手にすることができるのが、新しい価値となっています。
企業からすると、お試しいただいた生活者からフィードバックをもらえたり、ネット上でポジティブなクチコミを生成してもらえたりすることも、新しい価値です。
企業からすると、お試しいただいた生活者からフィードバックをもらえたり、ネット上でポジティブなクチコミを生成してもらえたりすることも、新しい価値です。
(2)「サンプル百貨店」における“圧倒的なコストイノベーション”
通常のサンプリングは、企業が我々に代金を支払って、リサーチを依頼します。このやり方では配送料がかかるので、たくさん配ることができません。そこで、送料とうちの利益を乗せた価格設定を行って、たくさんの生活者の手に取ってもらおうという発想の転換をしました。“どこよりもお得に試せる”という事業モデルに変えたことにより、サンプリングコストやリサーチコストを下げるという圧倒的なコストイノベーションを生み出したのです。
(3)「サンプル百貨店」における“レバレッジ構造”
「サンプル百貨店」をご利用いただいているメーカーさんに聞いてみると、実は新商品だけでなく、流通在庫を処分するのに相当な費用がかかっていることがわかりました。そこで、その流通在庫をうちが安く仕入れることで、生活者にお得に試していただき、生活者の生の声を収集する仕組みも取り入れました。
メーカー各社では、広告宣伝費・営業担当の人件費・商品開発費・販促費・配架/物流費といった様々なコストをかけてマーケティングを行っています。どこの企業でも同じようなことをするのであれば、サンプリングや滞留ソリューションのところは、競合他社との非競争領域であると割り切り、僕らがまとめて請け負ったほうが効率いいのは間違いない。非競争領域の横串化によって、プラットフォームポジションを狙っていこうと考えました。
メーカー各社では、広告宣伝費・営業担当の人件費・商品開発費・販促費・配架/物流費といった様々なコストをかけてマーケティングを行っています。どこの企業でも同じようなことをするのであれば、サンプリングや滞留ソリューションのところは、競合他社との非競争領域であると割り切り、僕らがまとめて請け負ったほうが効率いいのは間違いない。非競争領域の横串化によって、プラットフォームポジションを狙っていこうと考えました。
なお、「サンプル百貨店」については、前述の“コストイノベーション”に始まり、様々な新規サービスの投入、NTTドコモとの協業……など、“ニーズを把握する現場力”と、“環境にあわせた事業構造の進化”、そして“スピード感のある推進力”によって、売上規模は100億円を突破し、現在ではグループを牽引する立ち位置になっています。
<リーダーズ Vol.10>オールアバウトグループ成長の牽引役、『サンプル百貨店』の取り組み - About All About
2011年に資本業務提携をした後、2012年3月にオールアバウトのグループ会社となったオールアバウト ライフマーケティング。話題の商品がお得に試せる「サンプル百貨店」を主力サービスとして急成長する同社を率いるのは、オールアバウトで長らく広告ビジネスを担当していた土門さん。そんな土門さんが見据えるサービスの未来や、実現したい世界観について話をうかがいました。
■大事なのは「これをやりたい!」という強烈な意思
このように「All About」と「サンプル百貨店」の2つのケースで、僕が編み出したフレームワークの有効性を見てきましたが、前編でもお伝えのとおり、新しい事業プランを持ってきた人がいた場合に、まず何よりも僕が重視するのは、「それ、本当にやりたいの?」「どのくらいやりたいの?」というところです。
たとえ3つの成功条件と肝を満たしていたとしても、強烈な意志を持ったエネルギーが感じられなければ、新規事業として認めることはありません。まず、強烈な意志ありきです。その上で、今回ご紹介したフレームワークを活用して、考えている事業プランを精査してみてください。ひとりでも多くの人が新規事業の立ち上げを成功させ、日本を元気にしてくれることを、僕も応援していきたいです。
たとえ3つの成功条件と肝を満たしていたとしても、強烈な意志を持ったエネルギーが感じられなければ、新規事業として認めることはありません。まず、強烈な意志ありきです。その上で、今回ご紹介したフレームワークを活用して、考えている事業プランを精査してみてください。ひとりでも多くの人が新規事業の立ち上げを成功させ、日本を元気にしてくれることを、僕も応援していきたいです。
(取材・文 野本 纏花)
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