ヒト

CAO森田が向き合う「成功」の定義 <リーダーズ Vol.6>

オールアバウトの創業初期メンバーとして、上場に至るまでのオールアバウト第一次成長期を牽引したひとりである森田恭弘さん。2009年に一度退職した後、2014年にChief Administrative Officer(最高経営管理責任者)としてオールアバウトに復帰しました。社員の幸せや企業文化を大切にされている森田さんの価値基準を探ります。


森田 恭弘(もりた やすひろ)
株式会社オールアバウト 経営管理部 CAO

1991年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。イギリス・ランカスター大学、ロンドン大学インペリアル・カレッジ(現インペリアル・カレッジ・ロンドン)マネジメントスクールにて学び、MBA取得。王子製紙株式会社入社。人事、経理、経営企画など担当。2000年11月に株式会社リクルート・アバウトドットコム・ジャパン(現オールアバウト)入社。マネジメントグループジェネラルマネジャー等歴任後、2009年6月退職。新興企業のCFO、コンサルティング、大学非常勤講師等を経て、2014年11月に株式会社オールアバウトChief Administrative Officerに就任。

■創業当初のオールアバウトを振り返る

—オールアバウトに入社された当時のお仕事について教えてください。

入社したのは、まだサイトが立ち上がっていないどころか、「All About」という名前すら決まってないときでした。そんななか、「受注してから売上を把握して入金するまで」といった基本的な業務フローを作ることから始まり、サイト開設以降は、事業計画の策定とその運用のフォローアップ、ときにはサービスの設計を行うなど、とにかく会社がうまく回り、よくなるためなら何でも、という思いで奮闘していました。当時、エンジニアの人達と一緒に作った受注管理や広告配信システムのなかには、今もなお使われているものがあります。

—なぜ創業まもないオールアバウトに入社しようと思ったのですか?

創業時からオールアバウトグループの普遍的なバリューとして健在の「システムではなく、人間。」という言葉が響いたんです。もちろんテクノロジーの進化はいいことだけど、人が機械に使われるような世界であってはならず、あくまでも人が中心でなければいけないと思っていました。そこに、「システムではなく、人間。」なんてコンセプトを打ち出している会社が今立ち上がろうとしている、というのを目にして、それは心躍る瞬間でした。

それまでは社員が1万人以上いるような大企業で仕事をしていたのですが、会社の規模が大きすぎて、自分の仕事がどう売上や利益につながっているのか見えづらかったんですよね。実家が自営業で、家業を継ぎたい気持ちもあったので、もっと全体が見えて自分の貢献度合いがわかる「手触り感のある仕事」がしたいと思って、オールアバウトへ入社しました。

—大企業からベンチャーへ転職されて、カルチャーショックが大きかったのではないですか?

すごくありましたよ(笑)でも、いい意味ですね。音楽を聞きながら仕事していたり、年齢や役職を全く気にせず、あだ名で呼び合い、発言し合ったりしているのを見て、こだわるべきは成果で、形式にとらわれなくていいんだ、ということを痛感しました。

会社文化はともかく、転職後、私生活も含めて一変した状況に悪戦苦闘しました。当時は、「大企業を捨ててきたんだから…」みたいな、どうでもいいプライドもあり、まさに“背水の陣”という気持ちで必死でした。代表の江幡にも「あの頃の森田は怖かったよな」と、いまだに言われるんですよ(笑)

—2009年に一度オールアバウトを退職されて、再び2014年に戻って来られたのは、なぜですか?

上場して、だんだんと会社の規模が大きくなってきて、会社のステージの変わり目のなかで、自分に期待される役割が固定化してきたと感じ、ひと区切りつけようと思い退職しました。

戻ってきた理由は、この数年で、オールアバウトが、メディア単一事業だったところから多様なビジネスを手がけるように進化していて、その状況が新たなチャレンジになると思ったからです。

■CAOの仕事観を培ったターニングポイント

—現在のChief Administrative Officer(最高経営管理責任者)のお仕事について、教えてください。

いわゆる経営企画・経理・人事・法務・広報・財務・総務といった管理部門全体を担当していますが、この部門は、プロフェッショナルが集まっていて、個々の業務には信頼を置いています。重要なのは、それらが全体として筋が通っており、うまく機能するようお膳立てすることです。自分が一番大事にしている視点は、オールアバウトグループ全体として、中長期的に世の中にどんな価値を提供すればいいのか、グループとしての成功をガイドすることです。

「成功」と言いましたが、単に利益が出ればいい、といった数字ありきの考え方ではありません。成功とは何なのか、そして単に会社の成功だけでなく、お客様や、そこで働く人など、オールアバウトに関係する人々みんなの幸せとは何なのか、といった命題と向き合っているところですね。

—数字だけでなく、「成功の定義」「幸せ」とも向き合うのはなぜですか?

自営も含めどんな会社で仕事をするか、といった「働き方の選択」は、その人の人生全体に関わると考えているからです。働く場所や、働き方次第で、ビジネスキャリアはもちろん、私生活や、家族、友達など周囲の人にも影響を与えます。反対に、周りの状況が働き方に影響を与えることもあります。だから、働く上での成功とは何かを考えるのに、単純に仕事のことだけを考えてはいけないと思うんです。

結局、「成功」や「幸せ」は、一義に定義できず、その人なりの形があります。オールアバウトで働くことを決めた人たちも、「その人なり」の成功や幸せの定義を背負って、今ここにいるわけです。その、それぞれの定義を受け止めて、できるだけ幸せの総和を大きくしていくことが、私の使命であり、思いをもった一人ひとりの集まりであるオールアバウトの成功ではないかと思っているのです。

—最初に入社した会社でイギリスへMBA留学をされたそうですが、そこではどんな気づきが得られましたか?

MBAでは、『Exploring the images of Japanese organizations through universal paradigm of thought.(直訳:普遍的な思考パラダイムを通して日本企業のイメージを探る)』という卒論を出しました。“Japan as No.1”と言われた1980年代に、「カイゼン」や「カンバン方式」など、日本発の経営手法が外国企業にもてはやされたときがありました。しかし、ただ上っ面の方式だけを真似ねてもうまくいかないのを目の当たりにして、そもそもの文化や価値観、人間観が異なっていると、本質的にモノにすることはできないのではないかという問題意識から書いたものです。

この論文を書くにあたり、『新しいシステムアプローチ―システム思考とシステム実践』などの著書をはじめとする、イギリス・ランカスター大学名誉教授ピーター・チェックランド氏の「ソフトシステム方法論」の考え方には、大きな影響を受けました。とりわけ、要素間の関係や全体としての動き、引いては全体としての目的や意味に注目するHolism(ホーリズム:全体論)は、自分の思考のベースになっています。

このHolismの考え方が、先ほどの「成功の定義」の話において、数字だけでなく、幸せに向き合う姿勢であったり、短絡的に“How”の話に入らずに、その大元にある“What”や“Why”を探ることを大切にする、今の自分につながっています。

■人の価値を最大化させる森田さんの挑戦

—現在、森田さんを筆頭に進めている「“気楽にまじめに”オールアバウトのことを考えていく会」、通称「考える会」について教えてください。

2014年にオールアバウトに戻って、久しぶりに友達に会うかのような感覚で「オールアバウト」と対面したときに、「なんかちょっと変わったな」と感じたんです。事業内容をはじめ、会社が「やっていること」は、その時々の世の中のトレンドを踏まえていて素晴らしいんですが、その「やっていること」に対する心持ち、すなわち、人に例えるなら「性格」が変わると、より力を出せるんじゃないかと思ったのです。

会社の「性格」を形作るのは、社員一人ひとりの意識や行動の日々の積み重ねです。だから、それらの素になる考え方、平たく言うと「人事ポリシー」みたいなことをもっと突き詰めて考えてみようよ、という思いで始めたのが、「考える会」です。

経営層も交えて一泊二日で実施した合宿形式の「考える会」の様子
今いる社員は、数多ある会社の中で、オールアバウトで働くことを自ら選択しているわけです。せっかく一緒に働くのだから、会社と自分のベクトルが合っているほうがよい。

だからこそ、会社のベクトルをみんなで確認し合ったり、自分のベクトルをしっかり表明したり、ときには、会社や自分、それぞれのベクトルをチューニングしながら進めていくことが、会社と個人の成長や幸せの維持につながるのだと考えています。

こうした意見交換から前向きのエネルギーを生み出し、小さな変化の積み重ねで、少しずつでもいいから、社内を活性化させたいんです。

—目には見えない成果を追究していらっしゃるのですね。

社内で“クルージングモード”と呼んで自戒している言葉があります。今まで築いてきた企業力の上にあぐらをかき、そのままただ流れに乗って仕事をする状態のことです。それでも、今この瞬間は、とりあえず前に進むかもしれない。でもそういった目に見えない劣化をとても危惧しています。

この先オールアバウトが、もっと世の中によい影響を与えたいならば、その価値を提供する自分たち自身が、流れに身をまかせるのではなく、自分で漕がないといけないよね、という思いがあります。

実際、社員一人ひとりと話してみると、みんなオールアバウトのことが好きで、思いを持って仕事をしています。その思いが全体としてうまくかみ合うことで、グループ全体の力を大きく引き出したいんです。

—会社を離れていたときに見えた、オールアバウトの良いところと悪いところを教えてください。

みんなのオールアバウト愛が強い。 学校のクラブのような風土があり、退職した人たちは「OB・OG」、現社員の人たちは「現役」みたいな表現がよくされていますが、現役もOB・OGもオールアバウトのことが好きなんじゃないかな。
この「愛」が、いい仕事をするための原動力になっていると感じます。

All About開設15周年パーティーの様子。創業メンバーはじめOB・OGも一緒になってお祝い。
人の結びつきも強く、あちこちで活躍するOB・OGとも一緒にたくさん仕事をしますし、OB・OG・現役混ざっての飲み会も頻繁(笑)。会社に雇われている・いないを超えて、同じ思いで仕事をする姿は、世の中に対して、「自立」をキーワードとする新しいワークスタイルを提案しているのではないかと思います。

逆に悪いところは、お行儀が良すぎるところでしょうか。「儲かればいい」という発想で手当たり次第にやるという感じがないので、それゆえグッと伸びている感じはない。それが、「らしい」といえばらしいんですけどね。真面目とか愚直といった言葉が似合う会社だし、だからこそコンテンツの真面目さやクオリティの高さにつながっているところなので、一概に悪いとは言えないのですが。

—最後に、座右の銘をお聞かせください。

“determined”という言葉が好きです。「覚悟している」とか「決心した」という意味合いの言葉です。イギリスに留学していた1996年にオリンピックがあり、テレビで見ていたんですけど、女子走り高跳びの選手が自ら観客に手拍子を求めて、リズムを作り出して、さあ今にも走り出そう、というときに、アナウンサーが“She looks determined.”と言ったんです。

この「心を決めて、まさに行こうとしている緊張の瞬間」がとても印象的でした。一方で、“determined”という言葉は受動態でもあり、「(自分の意思によらず)決められている」というニュアンスが入っているように自分は感じます。
生きていくうえで、自分ではどうにもできない事象は多々ありますが、それを受け止めて、それでも前に進んでいく姿勢を表しているようで、この言葉が好きです。
(取材・文 野本 纏花)

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