■最終形を考えながらデザインし、会話をしながら楽しく作る
―実証研究は、具体的にどのように進められているのでしょう?
2020年から東京都健康長寿医療センターと2つの実証研究を行っています。
健常者を対象としたものは、川崎市の健常な高齢者(CDR0)49名を対象に、ものづくり講座を週に1回、12回継続して受講していただきました。教えるのは、ライフワークスの講師陣です。
健常者を対象としたものは、川崎市の健常な高齢者(CDR0)49名を対象に、ものづくり講座を週に1回、12回継続して受講していただきました。教えるのは、ライフワークスの講師陣です。
ライフワークスのさまざまな講座の中から、男性でも親和性の高いマクラメや、東京都健康長寿医療センターの先生おすすめのデコ巻寿司で、各6種類を選び、12回の講座を一通りこなしてもらいました。その結果、受講前と後で、認知機能の低下抑制効果が認められるデータを取得することができました。
東京都健康長寿医療センターとの共同研究に関するプレスリリース
オールアバウト、東京都健康長寿医療センター高齢者を対象とした認知機能低下抑制のための“ものづくりプログラム”を開発し、認知機能への介入効果を日本公衆衛生学会総会にて発表~ものづくり技術の習得は高齢者の生活機能と関与する認知機能の低下抑制に寄与することを示唆~
もうひとつは、MCIの方と軽度認知症の方を対象に、楽しめるものづくりのオリジナルプログラムを作って本人の心理や認知機能低下の抑制効果を科学的に実証する研究です。
オリジナルの教材を作って果たして楽しんでいただけるのか? QOLの向上や認知機能の低下を少しでも抑制できるのか? そういった検証を続けています。
教材は、楽習フォーラムのノウハウを生かしながら、認知症の作業療法や地域共生社会の構築に向けた実践的研究を専門分野とされている京都橘大学教授の小川敬之先生に監修を依頼。カリキュラム化して年度ごとの実証研究の中に取り入れました。
オリジナルの教材を作って果たして楽しんでいただけるのか? QOLの向上や認知機能の低下を少しでも抑制できるのか? そういった検証を続けています。
教材は、楽習フォーラムのノウハウを生かしながら、認知症の作業療法や地域共生社会の構築に向けた実践的研究を専門分野とされている京都橘大学教授の小川敬之先生に監修を依頼。カリキュラム化して年度ごとの実証研究の中に取り入れました。
―どんな講座だったのですか?
1時間半程度で、会話をしながら完成するもの。決まった最終形にしなければいけないのではなく、自分で完成する形やデザインを考えながら作業できるようなものを選んでいます。たとえば、液体を入れて形を整えるハーバリウム、きれいな紙を折って作る箸入れ、針を刺して制作するアーティフィシャルフラワー、フォトフレームなどです。
決まった形をただつくるだけではなく自分の好きなようにデザインする
共同研究を進めた結果、参加することに満足感を得ながら、失敗に対する不安感の低減に寄与することがわかりました。現在も実証研究を継続しているところです。
また、個人の好き嫌いがありますよね。アクセサリーが好きな人がお花が好きとは限らない。多様な性格や嗜好をお持ちの方々それぞれに最適な教材を提案できるようにしたい。
自分の好きな趣味になるハンドメイドであれば楽しいし、体力が落ちても継続できます。また、必ずしも大勢で取り組む必要もなく、「新しい生活様式」に適したプログラムとしても期待しています。
また、個人の好き嫌いがありますよね。アクセサリーが好きな人がお花が好きとは限らない。多様な性格や嗜好をお持ちの方々それぞれに最適な教材を提案できるようにしたい。
自分の好きな趣味になるハンドメイドであれば楽しいし、体力が落ちても継続できます。また、必ずしも大勢で取り組む必要もなく、「新しい生活様式」に適したプログラムとしても期待しています。
■褒められることがやりがいにつながり、認知症予防になる
―プログラムに参加された方やそのご家族からは具体的にどんな反応がありましたか?
健常な高齢者を対象とした受講後アンケートでは、ご夫婦間、お子様夫婦、孫、知人に制作物を褒められたという回答が83%もありました。実は高齢者の方って普段、褒められる機会がほとんどないんです。そんな中「これ、本当に作ったの?」「すごい!」と褒められる。それが生きがいややりがいにつながり、普段むずかしい世代間交流のきっかけにもつながると嬉しく思いました。いい影響を与えられているのも報告書からみてとれるので、最終の分析結果が待ち遠しいところです。
また、アンケートで、9割以上の人が「認知症を発症しにくくする可能性があるのなら、治療費にお金をかけるより、予防にかけるほうがよい」と答えました。楽しみながら健康を維持したい。息子や娘の世話にはなりたくないという人も多くいらっしゃいました。好きな趣味を一生懸命やって認知症予防になればそれが一番良いですよね。
また、アンケートで、9割以上の人が「認知症を発症しにくくする可能性があるのなら、治療費にお金をかけるより、予防にかけるほうがよい」と答えました。楽しみながら健康を維持したい。息子や娘の世話にはなりたくないという人も多くいらっしゃいました。好きな趣味を一生懸命やって認知症予防になればそれが一番良いですよね。
―ライフワークスの講師の方は、もともと認知症の方を教える専門ではありませんが、MCIの方と軽度認知症の方を対象にした講習はスムーズに進められたのでしょうか?
このプロジェクトを始める際に講師の方に希望者を募ったところ、60名募集のところ300名も集まりました。もともと教えるスキルは大前提としてお持ちの方ばかり。認知症についての基礎的な知識や、寄り添って教えるハウツーマニュアルはしっかり準備しました。講師の皆様には現場で活躍していただき、感謝しています。
また、「こうやるとよかった」「こんな会話をした」と講習から生まれたノウハウを講師間でやり取りし、気づきを報告したりと講師も安心してアプローチできるよう工夫しています。
また、「こうやるとよかった」「こんな会話をした」と講習から生まれたノウハウを講師間でやり取りし、気づきを報告したりと講師も安心してアプローチできるよう工夫しています。
―通常の講座と違う、認知症の方だからこそのポイントがありそうですね。
認知症の方の中には、自分が認知症とは思っていない方がいらっしゃいます。でもなんとなく今までできていたことができなくなっていることに気づいてはいるが自分で認めたくない。できないことへの不安が、行動や言葉に出ることもあるようです。講座の最初では知らない人を排除するという傾向が見られた方も、継続することで講師との信頼関係も生まれ、自分でもできたという達成感にもつながります。そういった特性を踏まえたうえで、寄り添い方のコツがあるのだと思います。
―今後の取り組みについてお聞かせください。
今後は研究成果やアンケート結果を活用して全国の自治体や、介護施設を経営している企業団体、高齢者が対象となっているような商品を取り扱う企業団体に「ものづくり介入プログラム」や教材を提供、認定講師を派遣するなど2023年度の社会実装を目指していきます。
■「個人を豊かに、社会を元気に。」に直結する事業
―このような新規事業を推進する上でのライフワークスの強みはなんでしょうか?
なんといっても既に「楽習フォーラム」に多くの講師の皆様がいるということ。今回の実証研究では、教材もキーですが、きちんと教えられる講師がいることは非常に重要であると強く感じました。
今まで培ってきたものづくりをカリキュラム化したり、教材を制作するノウハウはもちろん、複数の資格を保有する講師が1万人以上所属する「楽習フォーラム」のような会員組織は他にはなかなか見当たりません。そこを強みにして頑張っていきたいと思っています。
今まで培ってきたものづくりをカリキュラム化したり、教材を制作するノウハウはもちろん、複数の資格を保有する講師が1万人以上所属する「楽習フォーラム」のような会員組織は他にはなかなか見当たりません。そこを強みにして頑張っていきたいと思っています。
―単に教材を提供するだけではなくて、寄り添い方もインプットし、学びを改善に活かすこと+講師自身の持つ力というのは、ライフワークスがこれまで2002年から質と量を兼ね備えた講師育成をしてきたからこそできたのでしょうね。
最終的には、高齢者向けの教え方講座といった資格講座にしたいと思っています。
ものづくりを継続することで認知機能低下抑制になることや、認知症になっても豊かな人生を送ることができることを科学的に実証して、エビデンスとなるよう今後も活動を続けます。近い将来社会実装し、共生社会づくりの一役を担えれば最高です。それはオールアバウトの掲げるビジョン「個人を豊かに、社会を元気に。」に直結する内容だと考えています。
ライフワークスは「共生」と「予防」をキーワードに、日本ひいては世界が元気になっていくような社会を目指していきたいと思っています。
ものづくりを継続することで認知機能低下抑制になることや、認知症になっても豊かな人生を送ることができることを科学的に実証して、エビデンスとなるよう今後も活動を続けます。近い将来社会実装し、共生社会づくりの一役を担えれば最高です。それはオールアバウトの掲げるビジョン「個人を豊かに、社会を元気に。」に直結する内容だと考えています。
ライフワークスは「共生」と「予防」をキーワードに、日本ひいては世界が元気になっていくような社会を目指していきたいと思っています。
―未来を考える上で欠かせない事業ですね。今日はありがとうございました。
■本研究結果との連携をご希望される自治体・事業者の方々からのお問い合わせ先
E-mail:wellness@gakusyu-f.jp
E-mail:wellness@gakusyu-f.jp
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