ものづくりを通じて認知症を予防~"共生社会"の実現に向けたライフワークスの挑戦
オールアバウトライフワークスは2020年より、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターと、ハンドメイドを題材とした“ものづくり介入プログラム”の開発と、それによる認知機能への介入効果に関する共同研究を行っています。 認知症の方と共に生活をしていく「共生社会」と、認知症になるのを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにする「予防」を行うことが、今後の日本において重要なテーマになると考えられています。オールアバウトライフワークス副社長の三宅学さんにいま進めようとしている取り組みについて聞いてみました。
■「好きを仕事に」。セカンドキャリアで社会貢献
―まずはオールアバウトライフワークス(以下、ライフワークス)の事業についてお聞かせください。
2002年よりライフワークスは「好きを仕事に」を企業理念として、生涯学習分野の講師養成を行ってきました。主にビーズジュエリー、編み物、染織、アーティフィシャルフラワーといった「好きなものづくり」で講師を養成し、女性の起業支援の役割を担ってきました。現在全国47都道府県で約1万3000人の技能資格者が弊社運営の会員組織「楽習フォーラム」に所属しています。会員は子育てが一息つく40代から60代の方が多いですね。そのうち多くの方が講師として活躍いただいています。
―まさに、女性のセカンドキャリアとしての社会進出に寄与しているのがライフワークスなんですね。そして、その講師から学ぶ人たちがさらにたくさんいる。
■楽しみながら健康になる「ものづくり」プログラムの提供
―ライフワークスでの三宅さんの役割やお仕事内容を教えてください。
新領域推進室という新しい組織の責任者を任されています。新領域推進室は、2つのテーマを持っています。
1つは、中国市場へ資格講座のコンテンツや教材を提供し、市場と売り上げの拡大を図ることです。
もう1つは、「ものづくり」による認知機能低下抑制や生きがいの創出、QOLの向上につながることを科学的に実証して、楽しみながら健康になる「ものづくり」プログラムの提供を実現することです。
後者はまだ実証研究をしているフェーズで、2023年度の事業化を目指しています。
1つは、中国市場へ資格講座のコンテンツや教材を提供し、市場と売り上げの拡大を図ることです。
もう1つは、「ものづくり」による認知機能低下抑制や生きがいの創出、QOLの向上につながることを科学的に実証して、楽しみながら健康になる「ものづくり」プログラムの提供を実現することです。
後者はまだ実証研究をしているフェーズで、2023年度の事業化を目指しています。
―ハンドメイド分野で講師育成を行っているライフワークスが、なぜ中国進出や認知症の方との共生や予防分野への参入を決めたのでしょうか?
ハンドメイド分野は、流行り廃りがあり、その影響が会社の業績に直結してしまうことがあります。会社としてバランスをとるため既存の資産を新規分野に展開することにしました。そのひとつが、海外(中国)への進出でした。
中国をターゲットにしたのは、人口が日本の12倍という市場性。そして、“日本の機関が発行している認定資格制度”や“日本の企業が作った教材”に高い評価をいただいていることもあり、進出を決定しました。
2020年より、国立大学の中国・上海商学院にライフワークスが運営する「楽習フォーラム」のカリキュラムが認められ、学院のマスターキャンプで採用されています。代理店での指導者育成も進められており、既に何人かの生徒さんたちが独立した教室をお持ちなので、コロナ禍の状況を見ながら、もっとサポートできるよう展開していきたいです。
中国をターゲットにしたのは、人口が日本の12倍という市場性。そして、“日本の機関が発行している認定資格制度”や“日本の企業が作った教材”に高い評価をいただいていることもあり、進出を決定しました。
2020年より、国立大学の中国・上海商学院にライフワークスが運営する「楽習フォーラム」のカリキュラムが認められ、学院のマスターキャンプで採用されています。代理店での指導者育成も進められており、既に何人かの生徒さんたちが独立した教室をお持ちなので、コロナ禍の状況を見ながら、もっとサポートできるよう展開していきたいです。
ライフワークスの中国進出に関するプレスリリース
ライフワークス、コロナ禍でも日本の高い手芸技能を世界に発信するため、中国・上海商学院へのオンライン技術指導を開始
もうひとつの新領域は、オールアバウトのウェルネス事業推進室と取り組みを始めた「ものづくりによるウェルネス領域へのアプローチ」です。
日本は世界に先駆けて超高齢化社会に突入し、認知症の社会的コストが増大しています。厚生労働省発表資料によれば、2025年には日本の高齢者(65歳以上)の5人に一人は認知症になると予想されています。
これをできるだけ抑えるためには、健常者が認知症にならないための研究が必要です。介護保険サービスだけではなく、認知症の人に向けたアプローチを考えていくことは大きな社会貢献につながると考えました。
また、日本の介護における課題や2018年にオールアバウトが行った親の介護に関するアンケート調査も介護の重要性を再認識したひとつのきっかけになっています。
一般的に「手先を動かす」「運動をする」「栄養をとる」などが認知症予防に良いと言われていますね。「運動」や「栄養」に関しては、既に多くのエビデンスがあるのですが、実は知的活動の分野、私たちの場合で言うと「手先を動かすことが認知症の予防になるのか」という、この分野の明確なエビデンスは世界を見渡してもまだほとんどないということでした。
認知症の程度を示すCDRという尺度では、0が健常者、0.5がMCI(軽度認知障害、正常な状態と認知症の中間)、1.0が軽度認知症、2.0が中等度認知症、3.0が重度認知症という5段階に分けられます。中等度や重度になると、ものづくりをすることもなかなか難しいといわれていますので、CDRが0の人の認知機能低下抑制と、MCIから軽度の人を対象として、ものづくりが生きがいやQOLの向上に役立つのではないかというところから研究をスタートしました。
日本は世界に先駆けて超高齢化社会に突入し、認知症の社会的コストが増大しています。厚生労働省発表資料によれば、2025年には日本の高齢者(65歳以上)の5人に一人は認知症になると予想されています。
これをできるだけ抑えるためには、健常者が認知症にならないための研究が必要です。介護保険サービスだけではなく、認知症の人に向けたアプローチを考えていくことは大きな社会貢献につながると考えました。
また、日本の介護における課題や2018年にオールアバウトが行った親の介護に関するアンケート調査も介護の重要性を再認識したひとつのきっかけになっています。
一般的に「手先を動かす」「運動をする」「栄養をとる」などが認知症予防に良いと言われていますね。「運動」や「栄養」に関しては、既に多くのエビデンスがあるのですが、実は知的活動の分野、私たちの場合で言うと「手先を動かすことが認知症の予防になるのか」という、この分野の明確なエビデンスは世界を見渡してもまだほとんどないということでした。
認知症の程度を示すCDRという尺度では、0が健常者、0.5がMCI(軽度認知障害、正常な状態と認知症の中間)、1.0が軽度認知症、2.0が中等度認知症、3.0が重度認知症という5段階に分けられます。中等度や重度になると、ものづくりをすることもなかなか難しいといわれていますので、CDRが0の人の認知機能低下抑制と、MCIから軽度の人を対象として、ものづくりが生きがいやQOLの向上に役立つのではないかというところから研究をスタートしました。
■軽度認知症のQOLの向上に役立てるだけではなく、健常者の認知機能低下を予防する
―ウェルネス領域へのアプローチについて詳しく教えてください。
「認知症になっても楽しみながら継続できる趣味ものづくり講座」と、「健常者向けの認知機能低下抑制のためのものづくりプログラム」の2つの方向性において、ライフワークスの講師が指導する仕組みを考えました。前者は経済産業省の補助事業として採択されました。
・採択事業者一覧
認知症共生社会に向けた製品・サービスの効果検証事業 採択事業者一覧(令和2年度公募分)
・採択事業者一覧
認知症共生社会に向けた製品・サービスの効果検証事業 採択事業者一覧(令和2年度公募分)
―ウェルネス領域の新規事業への取り組みには、どんな苦労がありましたか?
世界的に認められた調査方法できちんと調査をしないといけないし、必要な被験者の数なども考えないといけない。とにかくどこから始めていいのかわからない状態でした。人づてで、東京都健康長寿医療センターの藤原佳典先生と知り合うことができ、「ライフワークスでやっているようなものづくりは、日常生活に溶け込みやすいのでぜひ共同研究でやっていこう」と前向きにお返事をいただくことができ、やっと第一歩を踏み出すことができました。
先生が所属されている東京都健康長寿医療センターでは、高齢者が未就学児や小学生に読み聞かせをしたり、囲碁を行うことが認知機能低下抑制になるかといった実証研究を積み重ねてエビデンスをとられており、我々が飛び込んでいったような形でした。
先生が所属されている東京都健康長寿医療センターでは、高齢者が未就学児や小学生に読み聞かせをしたり、囲碁を行うことが認知機能低下抑制になるかといった実証研究を積み重ねてエビデンスをとられており、我々が飛び込んでいったような形でした。
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