専門家

街を楽しみ、人と触れ合い、 健康を得て、豊かな人生を彩る。 言うことなしの「お散歩」の楽しさを伝えたい。【散歩ガイド 増田 剛己】

目的地が山手線の内側ならばすべて歩くというウワサの「散歩」ガイド増田さん。その歩き方は、バシッと身支度をしてまっすぐに前を向いて歩く「ウォーキング」ではなく、のんびりきょろきょろと景色を楽しみながら歩く「お散歩」。「お散歩」の魅力を最大限に伝える増田さんのガイドの原点と散歩術を伺った。

All About【散歩ガイド 増田 剛己】

「歩けばわかる!」を合言葉に、東京中を踏破する散歩ライター。 これまでさまざまな雑誌に散歩に関するコラムを多数執筆。ペンネームである下関マグロ名義で散歩に関する書籍「歩考力」(ナショナル出版)も著している。

フリースタイルの楽しい散歩

増田さんの「散歩」記事を読むと、まるで目の前の増田さんとお話をしながら散歩をしているようなリアリティと楽しさがある。そんなリアル増田さんを体感すべく、散歩に同行してみた。

待ち合わせの日暮里駅から歩き始めてすぐ、「ほらこちら」とか「ちょっとこれを見て」だの「おもしろいねえ」と指差されるままに見れば、都会に埋もれた名所旧跡、人々の生きざまの数々が見え隠れする。
お店を覗いて店主とおしゃべりしたり、ちょっとした路地に入り込んでみたり、足をとめ耳をすまし、じっと眺めたり。増田式散歩は、本当に記事のままのフリースタイルだった。
まずは増田さんが「散歩」にはまったきっかけから伺った。


カメラはすぐに構える。花、名所旧跡から標識、街の地図に至るまで。

歩かなくなり、110キロの巨漢になる

子どもの頃から、あちこち行っては迷子になり、親に怒られていたという増田さん。好奇心が旺盛で、次から次へと面白そうなものを求めて走り回る少年だったのだろう。
高校、大学のころも家の近辺を歩き回るのは好きだったというが、ぱったりと歩くのをやめたのは仕事が忙しくなってきた35歳のころ。
そのころから増田さんは「下関マグロ」というペンネームを持ったライターだ。ちょっぴりあやしげなことも書いていたらしい。仕事に没頭するうちに、次第に太り始めた。
45歳のときに健康診断を受けると、体重は110キロとなっており糖尿病と診断されてしまう。医者に「運動をしなさい。まずは歩くこと」と言われ、再び歩くことを決意する。

今でこそ軽快なフットワークで何時間でも何キロでも歩ける増田さんだが、歩き始めたころは、一駅分歩いても息があがり、帰りは電車に乗って帰ってくるような始末。それでも、毎日少しずつ、昨日より今日、今日より明日と歩き続けていたところ、半年余りであっという間に体重は減り、糖尿病の数値も下がった。それから12年たった今では、体重は70キロ台をキープ。軽やかな精神と肉体を手に入れた!


毎日8~10キロは歩くようになり、スリムなボディに!

散歩で劇的に人生が変わる

110キロの巨漢を脱するために歩き始め、その楽しさを味わえるようになったころのこと。タイミングよくAll Aboutから「散歩ガイドにならないか」と声をかけられ、ますます歩くようになる。それから「散歩」ガイドとして12年。

「ちょっとあやしげな分野のライター」が「おてんとうさまに恥じない健康的なライター」として知名度も上がってきた。ガイド記事ももうすぐ300本、趣味と実益を兼ねた散歩の楽しみ方も多岐にわたるようになった。

実際に体が健康的になっただけではなく、仕事の内容も「健康的」になり、8年前に結婚もし、今は公私ともに充実。劇的に人生が変わったのはまさに「散歩」のおかげだと、増田さんは感じている。その散歩術の一端をのぞかせてもらった。


散歩ライフを支える靴たち。時には下駄のお散歩もまた楽し

テーマを持って歩くか、持たずに歩くか

「たとえば『オムライスのおいしいお店を探そう』と思って歩いているとオムライスの店が見つかるんだ、不思議なもんでね」
「今は街中華を探して歩くから、すぐに中華ばかりが目に入っちゃう。ほら、あそこにあった」

何も考えずに歩くより、テーマを持って歩いていたほうがずっと楽しめる。けれども、行きあたりばったりの散歩もまた楽しいという。いろいろなハプニングや思わぬ出会いもまた、車の移動などではわからないお楽しみだ。


「あそこであれを食べよう!」という目的があれば、モチベーションもグッとアップ。。

人と歩くか、一人で歩くか

一人で歩けば自由気ままに楽しめる。けれども誰かと歩けば、それもまた楽しい。同じ方向を見ながら歩くことで、面と向かって話す緊張から解放され会話が弾む。

「楽しいのは、全く違う属性の人と歩くことですよ」。え?そうなんですか?意外な感じがする。
「いえいえ、親子ほど年の違った人と街を歩いてごらんなさい。同じ場所を歩いていても、自分とは全く違った視点で見ますからね、おもしろいんだ」。

詳しくは、最後にあるお気に入りの記事も参考にされたい。その様子が載っている。


カメラは必需品。サッと撮影できるよう手軽なデジカメで。半年に1個は買い替える消耗品。


小さ目で、肩から下げるタイプのバッグがお気に入り。リュックではないので背中が汗でべとつくこともない。


水筒に氷を入れて持つ。水は公園で補給すれば荷も軽い。

小道具を持って歩くか、持たずに歩くか。

増田さんは、仕事のアイデアをまとめるために歩くときには、デジカメを持ち、録音機器を持ち、音楽を聞きながらメモを取りつつ散歩をしていたという。それはそれで、仕事ができるのでいい。けれども今では荷物は最小限にとどめる。
「音楽を聞きながら歩くのも楽しいけれど、イヤホンをはずして歩けば、街の音や鳥の声、さまざまな音が聞こえてきて楽しいと気付いたんですよ」。

どうやら結論は、お散歩は何をどうやっても楽しいよう。つまりは「歩けばわかる」ということらしい。
けれども、なかなか散歩をする時間がとれない多忙な人間はどうしたらいいのだろうか?

忙しい人にもおすすめのお散歩術

増田さんによれば、「1時間PCの前に座っているなら、そのうち30分は散歩したほうが、頭の整理になるよ」とのこと。忙しいなら、散歩をしながら仕事をすればいいと増田さんは言うのだ。

歩きながらできる仕事は、電話の対応やアイデアの整理などなど。今は、便利なことに電話・メモ・撮影、歩いたデータの記録など、すべてスマホひとつでできてしまう。歩きながら仕事をすれば、あとでPCの前に座ったときに無駄時間ゼロではかどるという。

増田さんは、多くの場合山手線内側の移動は徒歩。電車の遅延も関係ないので、打ち合わせに遅刻することもない。歩いてみると意外と近いことに気付くことも多い。散歩術は、実は忙しい人にもおすすめなのだった。


「今日はどの飴にしようかなあ」なじみのお店でお土産を買う。


「どこを切っても同じ顔」昔ながらの飴を売る小石川金太郎飴。

歩けばわかる「お散歩」の魅力

街の歴史をたどりながら、
落語や小説の舞台になった場所を歩きながら、
花を愛でながら、猫をからかいながら、
おいしいラーメンを求めて、たい焼きを食べながら
橋を渡り、坂を上り、
ズンズン歩いたり、のんびり歩いたり。
散歩の楽しさは無限に広がる。

それをもっと読者に知ってほしいと感じている増田さんは、方向音痴であるが故に散歩に二の足を踏む筆者のためにも温かいアドバイスをくれた。
「方向音痴の人ほど散歩を楽しめますよ。お散歩はふらふらと知らない街を道に迷いながら歩くのがいいんです。道がわからなくなったら人に聞けばいいじゃない。ちょっとしたドラマも生まれますよ」

思えば筆者を含めスマホ依存の現代人は、リアルを忘れてデジタルな世界に頼りがちだ。乗り換えアプリを一番の早道だと信じ、景色も眺めず人にも聞かず、地図アプリの矢印ばかりを見つめて、ますます迷う袋小路。
増田さんはガイド記事を通して、スマホの恩恵にはもちろん預かりつつ、目の前の景色や人を信じて、もっと散歩を楽しんでほしいと伝えてくれている。
取材協力:小石川金太郎飴
谷中銀座商店街http://www.yanakaginza.com/
文/むなかたようこ 写真/平林直己
※本記事の内容は取材時点(2014年7月)の情報です。
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