マレーシアごはんを味わえば、多民族国家の魅力が見えてくる【マレーシアガイド 古川 音】
マレーシアの魅力を知るライターの古川さんは、「マレーシアごはんの会」を立ち上げ、私たちを食文化からマレーシアにいざなう。より深くマレーシアを知ってもらい、人と人をつなげる活動を広げているその理由とは……
All About【マレーシアガイド 古川 音】
古川 音(ふるかわ おと) 滞在経験を通して、多民族マレーシアの魅力を伝える編集ライター マレーシアの首都クアラルンプールに4年間暮らす。現地情報誌『パノーラ』『ハローマレーシア』(ともにCEM.ASIA)の編集担当として活動。帰国後は、マレーシアでの実体験をもとにした執筆、講演。また「マレーシアごはんの会」を立ち上げ、マレーシア人とコラボしたイベント、マレーシア人シェフに習う料理教室を主催。 |
ブルーの民族衣装に身を包み、ロングヘアーをさらりとたらし、古川さんはマレーシアレストランの奥まった席で、少し緊張した面持ちで待っていてくれた。
レストランの雰囲気にしっとり溶け込んでいて、食事を楽しむ人たちを見ながら「おいしいって。よかったね」「広まっているんだ。うれしいね」とマレーシア人のシェフと語っている様子はマレーシア愛にあふれ、まるでオーナーのよう。マレーシアの魅力について語る話は尽きないが、決して押し付けがましくなく聞いていると耳に心地よい。いつの間にか筆者もマレーシアの魅力にとりつかれてしまった。
レストランの雰囲気にしっとり溶け込んでいて、食事を楽しむ人たちを見ながら「おいしいって。よかったね」「広まっているんだ。うれしいね」とマレーシア人のシェフと語っている様子はマレーシア愛にあふれ、まるでオーナーのよう。マレーシアの魅力について語る話は尽きないが、決して押し付けがましくなく聞いていると耳に心地よい。いつの間にか筆者もマレーシアの魅力にとりつかれてしまった。
帰国後、マレーシアの魅力を実感
古川さんが、初めてマレーシアに渡ったのは2005年のこと。夫が海外赴任となったためだった。
当時フリーでライターをしていた古川さんは、マレーシアに住むことをきっかけに、現地でライターの仕事を探すことに。ほどなく在住の日本人向けのフリーペーパーを制作している会社を見つけ、現地採用枠で就職。最終的にフルタイムで勤務し、2009年に帰国した。駐在前は不安がなかったわけではないが、思いもかけず楽しい4年間を過ごすことができたという。
マレーシアの一番の特色は多民族国家であることだ。マレー系、中国系、インド系といる中では、同じマレーシア人であっても顔も違えば宗教も違う。正月もそれぞれ異なれば食べられるものも異なる。そんな中で生きてきた知恵は「みんなちがってみんないい」。価値観を押し付けず言いたいことをいい、違うことを認めながらも大きくつながる。それがマレーシアという多民族国家の魅力だという。
ただそんなマレーシアの良さをはっきりと感じたのは、実は日本に帰ってきてからだとか。マレーシアなら楽しくできたことが、日本だと息苦しくなったり行き詰まったりということにしばしば遭遇した。「個」より「皆同じ」を尊重する日本の価値観に違和感を感じることも。
古川さんは改めてマレーシアとはおもしろい国だったと振り返り、あまり知られていないマレーシアという国の魅力をもっと日本に伝えたいと考えるようになった。
当時フリーでライターをしていた古川さんは、マレーシアに住むことをきっかけに、現地でライターの仕事を探すことに。ほどなく在住の日本人向けのフリーペーパーを制作している会社を見つけ、現地採用枠で就職。最終的にフルタイムで勤務し、2009年に帰国した。駐在前は不安がなかったわけではないが、思いもかけず楽しい4年間を過ごすことができたという。
マレーシアの一番の特色は多民族国家であることだ。マレー系、中国系、インド系といる中では、同じマレーシア人であっても顔も違えば宗教も違う。正月もそれぞれ異なれば食べられるものも異なる。そんな中で生きてきた知恵は「みんなちがってみんないい」。価値観を押し付けず言いたいことをいい、違うことを認めながらも大きくつながる。それがマレーシアという多民族国家の魅力だという。
ただそんなマレーシアの良さをはっきりと感じたのは、実は日本に帰ってきてからだとか。マレーシアなら楽しくできたことが、日本だと息苦しくなったり行き詰まったりということにしばしば遭遇した。「個」より「皆同じ」を尊重する日本の価値観に違和感を感じることも。
古川さんは改めてマレーシアとはおもしろい国だったと振り返り、あまり知られていないマレーシアという国の魅力をもっと日本に伝えたいと考えるようになった。
マレー系の方が着るおしゃれ着のジェバ。マレーシアで購入した。古川さんはイベントには民族衣装を着る。 |
マレーシアごはんの会設立、食を通じて文化を伝える
さて、現在古川さんは、All Aboutなどで記事を書くほか、マレーシア関連のイベントや定期的な料理教室を主催している。その会の名前は「マレーシアごはんの会」。
http://www.malaysiafoodnet.com/
帰国後、マレーシアで食べていた屋台料理を食べられず残念に思っていたところ、マレーシア料理を出すレストランが日本にもいくつかあることを知る。深い味わいのある料理を日本人にもっと知って欲しくて、シェフ直伝の料理教室やイベントを定期的に企画するようになる。次第に在日のマレーシア人にもクチコミが広がり、マレーシア人が「故郷の料理を広めてくれてありがとう」とサポートしてくれるようになったのは、思いがけないうれしい出来事だった。
たとえば料理教室では、古川さん自身が料理を教えるわけではない。もっぱら集客やチラシ作り、レシピの書き起こしといったいわば裏方に徹している。その理由を聞いてみた。
http://www.malaysiafoodnet.com/
帰国後、マレーシアで食べていた屋台料理を食べられず残念に思っていたところ、マレーシア料理を出すレストランが日本にもいくつかあることを知る。深い味わいのある料理を日本人にもっと知って欲しくて、シェフ直伝の料理教室やイベントを定期的に企画するようになる。次第に在日のマレーシア人にもクチコミが広がり、マレーシア人が「故郷の料理を広めてくれてありがとう」とサポートしてくれるようになったのは、思いがけないうれしい出来事だった。
たとえば料理教室では、古川さん自身が料理を教えるわけではない。もっぱら集客やチラシ作り、レシピの書き起こしといったいわば裏方に徹している。その理由を聞いてみた。
古川さんの作ったマレーシアごはんの会のチラシ。マレーシアの地理やミニ知識も入れて楽しく。 |
五感をフルに使って、マレーシアを体感する
それには2つわけがある。
ひとつには、シェフであるマレーシア人から学ぶことを大切にしたい、ということ。マレーシア人が、故郷の味を教える。それは、その人の育った環境や家族の思い出など、個の歴史を共有することと同じ。参加者には料理教室に参加しながら、マレーシアにタイムトリップをして欲しい、と考えている。
ふたつめには、料理を作るシェフの横にいるとさまざまな話を聞くことができること。食材の話、お母さんの話、子どもの頃に食べていたごはんの話。面と向かったインタビューではなかなか引き出せないリアルな話が聞けて楽しい。それは古川さんのマレーシアガイドとしての引き出しに大事にしまわれることとなる。
マレーシアの文化を伝えるには、食文化から入るのが一番わかりやすい。マレー・中国・インドの料理は本格的、さらにそれらがミックスされたオリジナル料理をも味わえるのはマレーシアならでは。たとえば、マレー系マレーシア人がたべるのがナシレマ。チャイニーズ系のマレーシア人が好きなのは、ハンナンチキンライス。言葉で説明するよりも、目で見て、香りで感じて、味をみて、五感をフルに使うことで、マレーシアを体感して欲しいと考えている。バリエーション豊かなごはんこそ、マレーシア文化の象徴なのだ。
ひとつには、シェフであるマレーシア人から学ぶことを大切にしたい、ということ。マレーシア人が、故郷の味を教える。それは、その人の育った環境や家族の思い出など、個の歴史を共有することと同じ。参加者には料理教室に参加しながら、マレーシアにタイムトリップをして欲しい、と考えている。
ふたつめには、料理を作るシェフの横にいるとさまざまな話を聞くことができること。食材の話、お母さんの話、子どもの頃に食べていたごはんの話。面と向かったインタビューではなかなか引き出せないリアルな話が聞けて楽しい。それは古川さんのマレーシアガイドとしての引き出しに大事にしまわれることとなる。
マレーシアの文化を伝えるには、食文化から入るのが一番わかりやすい。マレー・中国・インドの料理は本格的、さらにそれらがミックスされたオリジナル料理をも味わえるのはマレーシアならでは。たとえば、マレー系マレーシア人がたべるのがナシレマ。チャイニーズ系のマレーシア人が好きなのは、ハンナンチキンライス。言葉で説明するよりも、目で見て、香りで感じて、味をみて、五感をフルに使うことで、マレーシアを体感して欲しいと考えている。バリエーション豊かなごはんこそ、マレーシア文化の象徴なのだ。
ごはんツアーを企画、マレーシア料理を堪能
最近では「マレーシアごはんツアー」を決行。古川さんが企画し、ツアー会社、マレーシア航空に提案して実現したこのツアーでは、9人の日本人とともに、大いにマレーシア料理を堪能してきた。
「『クアラルンプールに行ったけれど、おいしいお店が見つけられなかったんです』などという声を聞くともう、もったいなくて!」と古川さん。「確かに民族ごとにレストランは違うし、注文方法ひとつとっても現地独特の方法がある。ならばぜひ私がおいしいお店をご案内しましょうというわけです」
とにかく人が楽しんでくれることが何よりうれしい。マレーシアを知ってもらう活動と、人がつながる活動はずっとやっていきたいと言う。
ごはんの会は2ヶ月に1度のペースで継続中。年に1~2回は屋外のイベントを開催し、2012年のBBQ、2013年のカレー祭りでは、参加者が100人を超えた。その輪は広がりつつある。
「『クアラルンプールに行ったけれど、おいしいお店が見つけられなかったんです』などという声を聞くともう、もったいなくて!」と古川さん。「確かに民族ごとにレストランは違うし、注文方法ひとつとっても現地独特の方法がある。ならばぜひ私がおいしいお店をご案内しましょうというわけです」
とにかく人が楽しんでくれることが何よりうれしい。マレーシアを知ってもらう活動と、人がつながる活動はずっとやっていきたいと言う。
ごはんの会は2ヶ月に1度のペースで継続中。年に1~2回は屋外のイベントを開催し、2012年のBBQ、2013年のカレー祭りでは、参加者が100人を超えた。その輪は広がりつつある。
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個性を大切にしてくれるAll About
さて、古川さんがAll About のガイドになったのは、2010年のこと。帰国後、All Aboutガイドになりたくてメルマガに登録。マレーシアガイドに空きができるのを待ち、募集が出るとすぐに応募した。
ガイドになって驚いたことがあったという。All Aboutの江幡社長が「ガイドの個性を大切にしていきたい」と発言していたことだった。インターネットで発信する情報は、ともすれば「没個性」を求められることも多かった古川さんにとって、個性を大切にしたいという社長の発言は奮い立つほど感激することだった。そこで、記事を作る際には古川さん自身の個性を出すことを心がけている。
それは、自分が体験したことを必ず入れること。自分が体験したことは、ほかのガイドブックには絶対ないことだ。なぜこの記事を書いたのかということに絡めて、体験談や感想は必ず少しだけ書くようにしている。
古川さんの記事が人間味にあふれて温かいのは、マレーシアへの愛に「自身の個性」というスパイスをピリッと効かせているからのようだ。
ガイドになって驚いたことがあったという。All Aboutの江幡社長が「ガイドの個性を大切にしていきたい」と発言していたことだった。インターネットで発信する情報は、ともすれば「没個性」を求められることも多かった古川さんにとって、個性を大切にしたいという社長の発言は奮い立つほど感激することだった。そこで、記事を作る際には古川さん自身の個性を出すことを心がけている。
それは、自分が体験したことを必ず入れること。自分が体験したことは、ほかのガイドブックには絶対ないことだ。なぜこの記事を書いたのかということに絡めて、体験談や感想は必ず少しだけ書くようにしている。
古川さんの記事が人間味にあふれて温かいのは、マレーシアへの愛に「自身の個性」というスパイスをピリッと効かせているからのようだ。
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