建築士と建築家には違いがある つなげていく、記憶されるデザインをつくり続けたい【家を建てるガイド 佐川 旭】
佐川さんにとって“建築士”と“建築家”には大きな違いがある。建築家は哲学や思想を必要とし、技術や経済的なことだけでなく、意匠性も高くなくてはならない。建築家、佐川旭の原点とは。
All About【家を建てるガイド 佐川 旭】
佐川 旭(さがわ あきら) 一級建築士、インテリアプランナー。株式会社 佐川 旭建築研究所代表取締役/女子美術大学非常勤講師。用と美を兼ね備えた作品を得意としており、これまで180軒以上を設計、街づくり、公共建築などを中心に講演・雑誌執筆活動をする傍らテレビにも出演。 |
きっかけは高校の卒業設計
現在、東京・西麻布にオフィスを構える佐川さんだが、生まれは福島県南の山間部にある小さな田舎町。中学の担任の先生の薦めで工業高校へと進んだものの、自分がこの道に合っているのかさえわからないまま3年の秋を迎える。
「卒業設計にとりかかる際、いわき市の図書館をデザインしたんです。いわき市の地形や風土をイメージしてかたちにしていく。そんな中で、はじめてデザインのおもしろさに目覚めました」
この卒業設計が県の工業高校生対象のコンクールで6位に入賞。大学に進んで建築を学びたいと進路が見えたものの、クラスで大学に進学するのはわずか2人か3人、ましてや受験勉強もしていない。しかし佐川さんは諦めず、高校卒業後は上京し、働きながら夜間の予備校に通ってお金を貯めた。そして2年遅れて大学に進学。
卒業後に就職したのは有名なデザイン建築事務所。ここで衝撃的な住宅建築を目にする。
「前衛的な作家が手掛けた住宅は、家中が階段だらけで、まるで寝るところもないようなデザインでした。それが模型から実際にできあがるのを見て、衝撃的でもあり、住宅建築がこんなにもデザインできるんだとはじめて知りました」
これがきっかけとなり、佐川さんは住宅建築に魅了されていく。
「卒業設計にとりかかる際、いわき市の図書館をデザインしたんです。いわき市の地形や風土をイメージしてかたちにしていく。そんな中で、はじめてデザインのおもしろさに目覚めました」
この卒業設計が県の工業高校生対象のコンクールで6位に入賞。大学に進んで建築を学びたいと進路が見えたものの、クラスで大学に進学するのはわずか2人か3人、ましてや受験勉強もしていない。しかし佐川さんは諦めず、高校卒業後は上京し、働きながら夜間の予備校に通ってお金を貯めた。そして2年遅れて大学に進学。
卒業後に就職したのは有名なデザイン建築事務所。ここで衝撃的な住宅建築を目にする。
「前衛的な作家が手掛けた住宅は、家中が階段だらけで、まるで寝るところもないようなデザインでした。それが模型から実際にできあがるのを見て、衝撃的でもあり、住宅建築がこんなにもデザインできるんだとはじめて知りました」
これがきっかけとなり、佐川さんは住宅建築に魅了されていく。
力の伝わりが素直にでる筆ペンを愛用。自身で削って20cmにした定規は、30年以上使い続けている。 |
目指したのは“建築家”
佐川さんにとって“建築士”と“建築家”には大きな違いがある。
「私の中で建築士は、士(さむらい)のごとく歩きまわって、不動産の下請けから書類作りまであらゆることを手掛けるもの。でも建築家は哲学や思想を必要とし、技術や経済的なことだけでなく、意匠性も高くなくてはならない。私は、建築家として施主と直接契約を結んで仕事をする、そんな働き方を目指そうと決めたんです」
29歳で建築事務所を退職し、独立。その間、ヨーロッパ、アメリカを約5ヵ月間放浪した。旅では世界各国の建築物を見るだけでなく、その土地の風や空気を感じとりたかったという。そのため、路地裏まで足を運び、その地域を支えている人々と会話し、暮らしぶりや人々の背景を聞いた。それは、後の佐川さんが目指す建築家の哲学-言葉の中から、その人の生き方を見出し、かたちにしてつなげていく-の原点となる。
「私の中で建築士は、士(さむらい)のごとく歩きまわって、不動産の下請けから書類作りまであらゆることを手掛けるもの。でも建築家は哲学や思想を必要とし、技術や経済的なことだけでなく、意匠性も高くなくてはならない。私は、建築家として施主と直接契約を結んで仕事をする、そんな働き方を目指そうと決めたんです」
29歳で建築事務所を退職し、独立。その間、ヨーロッパ、アメリカを約5ヵ月間放浪した。旅では世界各国の建築物を見るだけでなく、その土地の風や空気を感じとりたかったという。そのため、路地裏まで足を運び、その地域を支えている人々と会話し、暮らしぶりや人々の背景を聞いた。それは、後の佐川さんが目指す建築家の哲学-言葉の中から、その人の生き方を見出し、かたちにしてつなげていく-の原点となる。
建築家と名のれるようになった理由
佐川さんが建築家と名のるようになったのは、45歳を過ぎた頃。その理由はふたつある。
ひとつは住宅建築に加え、小学校や駅舎など公共建築を手掛けるようになったからだ。さらにコンペで勝ち取った岩手県紫波町立星山小学校の建築では、文部科学大臣奨励賞である「うるおいのある教育施設賞」を受賞し、社会的にも認められた証となった。もうひとつは、これまでで一番満足した個人住宅ができたからだという。
「100年ほど前に建てられた平屋を壊して住宅を建てることになったんです。ただ、当時の立派な大黒柱や梁はどうしても残したかった。そこで古い家屋をうまく解体し、かつての木材を再生して新しい家に使用したんです。この個人住宅の建築は、私が目指す次世代につなげていくコミュニティデザインのきっかけとなりました」
ひとつは住宅建築に加え、小学校や駅舎など公共建築を手掛けるようになったからだ。さらにコンペで勝ち取った岩手県紫波町立星山小学校の建築では、文部科学大臣奨励賞である「うるおいのある教育施設賞」を受賞し、社会的にも認められた証となった。もうひとつは、これまでで一番満足した個人住宅ができたからだという。
「100年ほど前に建てられた平屋を壊して住宅を建てることになったんです。ただ、当時の立派な大黒柱や梁はどうしても残したかった。そこで古い家屋をうまく解体し、かつての木材を再生して新しい家に使用したんです。この個人住宅の建築は、私が目指す次世代につなげていくコミュニティデザインのきっかけとなりました」
地鎮祭では、工事が安全に進むことと、施主家族の繁栄を願う。 |
「つないでいく、記憶されるデザイン」が、佐川さんの建築家としての哲学だ。 |
木を使うことで、職人たちがつながるように
建築家にとって、どんな材料と付き合っていくかも大切なことだ、と佐川さん。常に時代の先をいくスタイリッシュなデザイン建築にこだわり、コンクリートを主に扱っていたが、2000年頃を境に木を巧みに使った温かみのあるデザインにシフトする。それは、もう一度自分の生き方を見直したとき、小さな村で育った自分がいたからだという。
「森林に囲まれた村で育ち、いつも身近に“木”があった。だからこそ、本来扱うべき材料は “木”なのではないか。“木”を使うことで、日本の再生にもつながるのではないか」と考えるようになった。そんな思い抱くうちに、頻繁に山へ足を運ぶようになり、山の職人さんとも話しをするようになる。どんどん木に魅了され、次第に木を使う建築へと変わっていった。また、木を使うことは職人を育てることにもつながっているという。
「たとえば町の小学校を建築するときに、70歳から30歳まで地域の大工さんみんなを集めるんです。すると、そこで年配の大工さんの知恵や技を若い大工さんが受け継ぐことができる。木を使うことで、人と技術がつなげられることを知りました」
「森林に囲まれた村で育ち、いつも身近に“木”があった。だからこそ、本来扱うべき材料は “木”なのではないか。“木”を使うことで、日本の再生にもつながるのではないか」と考えるようになった。そんな思い抱くうちに、頻繁に山へ足を運ぶようになり、山の職人さんとも話しをするようになる。どんどん木に魅了され、次第に木を使う建築へと変わっていった。また、木を使うことは職人を育てることにもつながっているという。
「たとえば町の小学校を建築するときに、70歳から30歳まで地域の大工さんみんなを集めるんです。すると、そこで年配の大工さんの知恵や技を若い大工さんが受け継ぐことができる。木を使うことで、人と技術がつなげられることを知りました」
独立して30年。 最近は“木”を使った、包み込むようなデザインが多い。 |
東南アジアでの小学校建築を通して
佐川さんが約10年前から取り組んでいるのが、東南アジアでの学校建築。認定NPOアジア教育友好協会の理事として、100校を超える建築に携わっている。
「アジアに学校を建築する団体はたくさんある。でも私が所属している団体では学校を建築するだけでなく、必ず日本の学校と交流させるんです。貧しい国の子どもたちほど、勉強意欲が強く、目が輝いているし、家族への感謝の気持ちがとにかく深い。日本の子どもたちは彼らと交流することで、感謝の気持ちや自己有用感にも気づけるのです」
また、年に数回、現地にも足を運ぶ。村の人々の言葉はわからなくてもその誠実さが伝わり、心がブラッシュアップできると話す。
「アジアに学校を建築する団体はたくさんある。でも私が所属している団体では学校を建築するだけでなく、必ず日本の学校と交流させるんです。貧しい国の子どもたちほど、勉強意欲が強く、目が輝いているし、家族への感謝の気持ちがとにかく深い。日本の子どもたちは彼らと交流することで、感謝の気持ちや自己有用感にも気づけるのです」
また、年に数回、現地にも足を運ぶ。村の人々の言葉はわからなくてもその誠実さが伝わり、心がブラッシュアップできると話す。
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