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30代前半までは「子どもはいらない」と思っていた。 でも、働きながら子どもを持つことは、想像以上に楽しい【マタニティガイド 高沖 清乃】

「働く女性のためのマタニティサイト『ニンプス』」の運営する会社の社長でもあり2児の母親でもある高沖清乃さん。派遣社員、契約社員、正社員という雇用形態を体験し、離婚、事実婚(夫婦別姓)など、自分にあった生活を手にし続けている彼女の原点。

All About【マタニティガイド 高沖 清乃】

高沖 清乃(たかおき きよの) 雑誌編集者、webプロデューサーを経て、2006年、ポーラスタァ(北極星)のように、迷った時の道しるべになるような記事作りを目的に、企画・編集を手掛ける株式会社ポーラスタァを設立。代表取締役。2008年「働く女性のためのマタニティサイト『ニンプス』」の運営を開始。翌2009年、月数別に届けるマタニティ誌『ninps』を創刊。

綺麗なお母さんと、活躍する女性の両立は難しい?

現在、4歳と1歳の息子を持つ高沖さん。幼いころの理想の母親像は、“若くて綺麗な”お母さん。

「小学生の頃、クラスのお母さんたちの中で、うちの母が一番若くて綺麗で、ちょっと自慢だったんです。他のお母さんたちは、みんなおばちゃんだったから(笑)」

母のようになるためには、早く結婚して、早く子どもを産まなければ…。小学生ながらにそんなことを思っていたという。

中学生になると、若くて綺麗なお母さんに憧れる一方、活躍する女性にも魅かれるようになった。進学校を志望して勉強をするも、ひとつの大きな疑問にぶちあたる。一生懸命勉強をしていい大学に入ったとしても、若くて綺麗なお母さんになるには、働く期間はたった2年。かといって、活躍する女性になるには2年程度では絶対無理。綺麗なお母さんと、活躍する女性の両立はむずかしいのではないか―。その答えはみつからず、保留にしたまま高校、大学へと進んだ。

若くて綺麗なお母さんと活躍する女性に憧れていた中学時代

結婚しても、子どもはいらない

この疑問は解決されないまま、25歳で結婚。専業主婦になったものの、何かモノを作っていないと落ち着かず、1年後には派遣の仕事を始めた。すると、仕事はおもしろく、それなりのお金も手に入るようになった。もしも今、子どもが産まれたら、仕事もお金もなくなってしまう。それなら、結婚は残しても、子どもはいらない。そう決めた高沖さんは、周囲にも断言。すると、思いのほかスッキリし、人生が見渡せたような気さえしたという。

20代後半の時、派遣先になったのがリクルート。そこで目にしたのは、同世代の女性が活躍し、お金を稼ぎ、表彰される姿。まさに中学生の頃に抱いていた、“活躍できる女性”そのものだった。

また、この時に仕事への考え方が一変する。「それまでは“仕事=お金が手に入ればいい”程度にしか思っていなかったんです。でも、この職場の人や仕事を通して、ダラダラと働いていたらもったいない、旦那さんの付属の人生ではつまらない、と思えてきたんです」

本当にやりたい仕事とはなにか。そう自分に問うたときに出てきた答えが「編集」の仕事だった。小さな出版社で働き出すと仕事がどんどん楽しくなり、子どもを持つことは、ますます遠のいていった。

離婚、起業、妊娠へ

30歳を過ぎた頃、オールアバウトに転職。子どもはいらないと思いながらも、心の片隅には迷いはあった。そんな時、新規媒体を作る話が持ち上がる。

「私は、働くことと、子どもを持つことで迷っている人、自分と同じような人に向けた媒体をどうしても作りたかったんです。今の女性たちは、きっとそこに行き詰っていると思ったから……」

けれど当時はまだ、妊活やワーキングママといった言葉もない。結局その思いは受け入れられず、理想を追い求めたかった高沖さんは、オールアバウトを退職し、起業の道を選択。また、この時期に、離婚も経験する。

起業をすると、忙しさは増したが、思いのほか時間の都合がつき、心にも余裕ができた。仕事でもプライベートでも支えてくれるパートナーにも出会い、今なら子どもが持てるかもしれない―。漠然と思いはじめた頃、偶然にも妊娠が発覚する。

ニンプスのきっかけは、働く妊婦に向けた情報がなかったこと

しかし、いざ妊娠してみると、不安でいっぱいになったという。

「よく妊娠するとすべてバラ色になったと言われるけれど、私の場合は全くその逆。体はつらいし、頭は働かない、将来のことは不安だし、いいことなんて何ひとつないと思ったほど。だから、不安や悩んでいることを、徹底的に調べました」

するとわかったのは、働く妊婦に向けた情報が何ひとつ書かれていない、ということだった。働く妊婦や子育てをする人は、周囲にも増えているし、これから先もどんどん増えていくはず。また、中学生の頃から疑問に抱いていた答えが出つつある-お母さんと働く女性の両立はできるということ-。

ならば、働いている人に向けて“子どもは持てる、大丈夫”と後押しできる情報を伝えたい。そんな思いから「ニンプス」を立ち上げることを決意した。それは、オールアバウトで実現できなかった夢にもつながっていく。

ニンプス(右)は、妊娠月齢に合わせて、知りたいことや気になることを網羅。ニンプスから生まれた『赤ちゃんが大好きな絵本(左)』は、0歳から1・2歳におすすめの絵本80冊を厳選した1冊。

ニンプスのこだわり

ニンプスには、高沖さんの経験やこだわりが詰まっている。

「私自身が妊娠から出産までの間、悩みや気持ちが変わっていったので、妊娠月齢で分けた媒体にしたんです 。「Oggi」を読んでいる人が妊娠したと想定して、手に取ってもかっこいい表紙や、通勤バッグに入る小型サイズにもこだわりました」

しかし、いざ出来上がったものの、一般の人からの反響はあまりなく、広告代理店の人からは「働く妊婦さんっているの?」と言われたり、取材にきてくれたメディアの方たちからも「表紙のイラストがかわいい」程度の反応だった。

「ニンプスを知っているという人に会えるようになったのは、立ち上げてから3、4年経ってからです」今では、働く妊婦向けの人気媒体となった。


いつも持ち歩いている、ふたりの息子の写真と足型

子育ては、大変な恋愛と同じくらい楽しい

ニンプスを作ったり、ブログを書きながらいつも意識しているのは、働く妊婦さんだけでなく、子どもを持つかどうかで迷っている人にも届けたいということ。

「子どもはいらないと思っていた私でも、意外と大丈夫だし、働きながら子どもを持つことは、そんなに悪くない。大変な恋愛をしている時と同じくらいに、毎日いろんなことが起こって楽しいですから(笑)」

最後に今後について、語ってくれた。

「今は、世の中が働くお母さんのことを認めてきたと思うんです。でも、実際に働くお母さんになった人たちは、どういうお母さんになればいいのか、試行錯誤中だと思います。だから今後は、働きながらの子育てで、みんなが悩んでいることを浮き彫りにしていきたい。妊娠した時と同じように、自分がおかしいな、足りないなと思うところには、きっと隠れている“何か”があるはずですから」

忙しくなり、育児日記が書けなくなってからは、手帳が育児日記代わりになっている
文/山本初美 写真/平林直巳
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