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住生活アドバイザーとしての道を、 自らが必要とするノウハウをベースに今なお開拓し続けている【収納ガイド すはら ひろこ】

憧れていた建築の世界に身を置いたのちに独立。住まいの企画・デザイン事務所を設立したすはらさんは、住み手に収納法を伝えることの重要性を痛感。「住む人と設計する人をつなぐ収納術」をベースにした住生活アドバイザーとして活動している。

All About【収納ガイド すはら ひろこ】

すはら ひろこ(すはら ひろこ) 住生活アドバイザー。共働き主婦の目線で快適さを追究しつつ、一級建築士のワザで住宅の構造にあった整理収納コンサルティングを行う。また、住宅や収納家具など商品のデザイン監修も。メディア出演多数。著書・監修書も多く、人気講師として各地でセミナーを開催。電子書籍『7日間から始める片づけエクササイズ』を発売開始。http://bccks.jp/store/allaboutbooks

忙しい女性の暮らしを支える住まいをもっと快適に

すはらさんは32歳で一級建築士事務所を開設し、35歳で株式会社アビタ・クエストを設立。当初は、主に住宅メーカーの商品企画を手がけていたという。テーマは「共働きファミリーの住まい」。背景にあるのは、すはらさん自身のリアルな実感だ。

「独立してすぐに直面したのが、自分の事務所を構えて共働きを続けるためには何をすべきかということ。ひとりで2人分の仕事をこなすには? 公私のバランスはどうとる? というのが私の課題でした。そのときに出会った本が千葉敦子さんの生活術が描かれた『ニューヨークの24時間』、そして加藤秀俊さんの『整理学』。仕事にも暮らしにも効率と質を高める技術の必要性を感じましたし、その技術を住まいの企画に反映するのが私の仕事だと直感しました。私の今の仕事は、自分が必要とするノウハウを開拓することから生まれたといえるかもしれませんね」

今の仕事につながるきっかけをつくった書籍、千葉敦子さんの『ニューヨークの24時間』と加藤秀俊さんの『整理学』は、今でも大切にしている


1988年当時はパソコンがなかったため、手書きで提案を行っていた頃の懐かしいスケッチ

住まいを企画する仕事がしたい

住生活アドバイザーとして活躍するすはらさんのキャリアは、建築から始まった。家政学・住居学を専攻し、住生活の研究を続けて修士課程を終了したすはらさんが飛び込んだのは建築の世界。日本を代表する建築家・(故)菊竹清訓さんのもとでスタッフとして、建築デザイや都市構想プロジェクトに関わること約7年。忙しくも充実した時間を送ったすはらさんは独立を決意した。

「建築の仕事は魅力的で、他では得られない貴重な経験をさせてもらいました。でも、独立を果たすとしたら気力も体力もある今がいいと思ったのが31歳の時。そして、念願だった住まいの企画を手掛けるデザイン事務所を開業しました」

収納はスペースとスキルのバランスが大事

住まいのインテリアと収納デザインを手掛けていたすはらさんに、ある転機が訪れた。
「部屋にモノがあふれて収納できずに困っています」
ある主婦からの依頼を受けたすはらさんがその家に出向くと、室内には衣類や書類などが収納に収まりきらずにあふれていた。そこですはらさんが提案したのは収納スペースを増やすこと。収納リフォーム案としてまとめたが、この提案はクライアントには受け入れられず、仕事として結実することはなかった。

「そのときに気付いたのです。クライアントが望んでいたのは、収納デザインではなく片付け方のアドバイスだったのだと。持ち物を取捨選択する基準な何なのか。使いやすくしまうにはどうしたらいいのか。収納のノウハウをご提案するべきでした」

モノの持ち方としまい方を考えて片付けやすい住まいを提案しなければいけいけない。そのことを痛感したすはらさんは仕事の方向転換に踏み切った。片付け、整理収納、模様替え、インテリアをトータルでコンサルティングする住生活アドバイザーへのシフトである。


共働きを続けて30年。 住生活アドバイザー・すはらさんの仕事のベースにあるのは、自身のリアルな体験をもとにクライアントの切実な要望に寄り添うことだ

やる気スイッチを入れる達人に

すはらさんには、今でも忘れられないエピソードがある。
「家の中のごちゃごちゃを解消して、“まともな人生を歩みたい”というご相談がありました。片付ける手順や捨てる基準などをアドバイスしたところ、その方はそれからコツコツと片付け続けて、3ヵ月後に報告に来てくださいました。涙をこらえながら語るその姿と、きっかけを掴んで一歩一歩自力で進めた行動に感動しましたね」

やる気スイッチはどこにあるのか。これは人それぞれに異なる。
「例えば、痩せたら着られるかもしれないと、服を捨てられないでいる方には『ダイエットしていますか?』とお尋ねします。読みたい本を次々と買って溜めこんでしまう方には『読む時間は作れますか?』と。持ち物のことに気をとられていると、自分が何をしたいのかを見失いがちです。そこに気付いた方の顔つきが、パッと明るく輝く瞬間があるんです」

正解探しをしている自分の思い込みから離れて、“これでいいのだ”と思える瞬間へ─。
豊富な経験とスキルをベースに、すはらさんはクライアントのやる気スイッチを入れる達人だ。


片付け・整理収納などをテーマに、これまでに数多くの著作を上梓してきたすはらさん。「これなら自分にもできそう」と多くの読者を獲得している。最新刊は、電子書籍『7日間から始める片づけエクササイズ』を発売

3年周期で見直しを

すはらさん自身の「捨てる基準」「片付ける基準」はどこにあるのだろう。
「片付けることに追われたくないので、労力や時間を使わずに済む仕組みを追求しています。それには、重要な物事とどうでもいい物事を早く見極めること。頭の中も部屋も、もやもや整理を心がけています。持ち物は3年周期で見直して、タイムレスなのか陳腐化したのかをジャッジ。自分がどこを目指しているかも3年で見直しです」

合理的に要・不要を判断するすはらさんは、モノを求める際にも基準がある。
「家具や食器などモノ選びのポイントは、自分軸をもつことが大事だと思います。モノは少ない方がいいとは思いません。私も好きなモノはたくさん持っていますし、活用して楽しんでいます。ただし、シリコンスチーマーのような流行に振り回されていると飽きるのも早くて死蔵されがち。モノ選びの失敗を糧にして、ぶれない自分軸がもてるといいですね」

“片付け・収納術をさらに多くの方々と共有して、これからの3年でおうち素敵ライフの輪をもっと広げたい“、そう笑うすはらさんが提案するのは、愛着の持てるモノに囲まれた素敵な暮らしなのだ。


すはらさんが愛用するエルメスのスカーフ。大切なコレクションを、 書類用ハンギングファイルを使って見やすく美しく収納するのがすはらさん流だ。


「おうちから素敵を生み出そう!」をモットーに2010年から青山で活動をスタートした「おうちラボ」。しんぶん発行をはじめワークショップ、講座、イベントなどを企画開催している
文/三田村蕗子 写真/平林直己
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