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生活している限り、家は汚れ、ゴミはたまる。 面白がりながら、家をキレイに保つノウハウ教えます【家事・掃除ガイド 藤原 千秋】

「家事・掃除ガイド」の藤原さんの守備範囲は幅広い。キレイなお家のキレイなお掃除なんて、永久ではない。油断をすればすぐに顔を出すヌルヌル、ドロドロ。あまりお付き合いしたくない害虫やカビのことまで、分析、調べ、予防し、駆除する記事は、不思議なことに不潔感はない。誰にも真似のできないユーモアとパッションに溢れる記事を書く、藤原さんの原点を探る。

All About「家事・掃除」ガイド 藤原 千秋

家の事・子どもの事・仕事の三つ巴を愉しむ三児の母ずぼら掃除を提唱。主に住まい周りの記事を専門に執筆するライターとして14年のキャリアをもつ。現在は並行して家事サービス、商品開発等にも携わる。大手住宅メーカー営業職出身、三児の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など著書、マスコミ出演多数。

■ちょっと風変わりな女の子

藤原さんは、一風変わった子どもだったようだ。
秩父山脈のふもとで育った小学生のころは、ドブ掃除やトイレ掃除などをやらされるいじめられっ子的ポジションだったとか。ところがきれいになることがうれしくて「いじめられているわりに、本人はまったく堪えることなく喜々として掃除をしていた」と言う。

また、入り浸っていた図書館で5年生のときに司書の方に推薦された本が、今の藤原さんの原点ともいえる本となった。(聞けば、宮澤賢治の好きな藤原さんのために司書の方が宮沢賢治の研究者として有名な天沢退二郎の著作を教えてくれたそうだ。)「雪から花へ-風俗から作品へ」著/天沢退二郎。大人向けのその本には天沢氏の今でいうイクメンぶりや暮らしぶり、家事の様子がユーモラスに綴られており、変わり者の小学生の心をつかんで離さなかった。
そんな不思議なエピソードは枚挙に暇がない。ただ、そこから見えてくるのは、周りを気にして好きでもないことにキャーキャー騒いでいるような女の子の姿ではない。自分の興味のわくことであれば、それがドブ掃除であっても飽きずにずっとやってしまうある種の「オタク気質」である。


「家事はおかあさんのやることだからやらなくていいや」と思っていた少女が「暮らし」というものに前向きな興味を持った最初の1冊が「雪から花へ-風俗から作品へ」だった。

■興味の先にはいつも「暮らし」

その後大学生となり、藤原さんは、法学部に進んだものの興味の対象はやはり「暮らし」。それも女子大生の好みそうなおしゃれな「暮らし」とはちょっと違う。斜め上を行く藤原さんの興味の対象は、なんと「スラム街」。
最低限の住まいとはなんだろうか。
人間的な暮らしをするとはどういうことか。
そんな疑問を解くべく、古今東西のスラム街について調べていたという。


「東京の下層社会」に始まる「スラム研究」は、その後、藤原さんが「人間的な暮らしをするためには何が必要なのか」というライフテーマを持つきっかけとなった。

■住宅メーカーの営業ウーマンへ

暮らしを考える上で必要不可欠なものは、「住まい」だろう。学生時代の藤原さんは次第に住宅に興味を持つようになる。住宅展示場でアルバイトをし、そこで掃除について徹底的にしごかれる経験をする。

就職先は住宅メーカーに照準を合わせた。その当時、住宅メーカーの営業職は男子がメインで、女子の募集はなかなかなかった。どうしても入社したい藤原さんは、「千秋」という性別不明の名前を利用し、男女の性を書かずに応募。何食わぬ顔をしてスーツを着てネクタイを締めて会社説明会に行き、その後何回かの面接を経て見事に採用を勝ち取ったという。とてもユニークで、一途な藤原さんらしいエピソードだ。
入社後は順調に業績をあげ、充実した生活を送っていたが、思いもよらぬ大きな転機が訪れる。


社会人になって初めて持った三角スケール。面を変えれば、100分の1メートルのスケールになったり、300分の1メートルのスケールになったりする商売道具。今では普通の定規としか使っていないが、手放せない思い出のもの。

■病に倒れて、退職!?

思いもかけず、突然の病に倒れたのだ。手術はしたものの、術後の治療の副作用が激しく退職を余儀なくされた。

就職超氷河期に行きたいと思った会社に入れ、そこそこの業績を出すこともできていた。
会社も期待してくれていたと思う。
病気の治癒もその時点でははっきりと先が見えない……。
今なら淡々と話せるが、その時の気持ちはいかばかりであったろう。
「私の人生はこれで終わったと思いました」と口を真一文字にきゅっと結んで、藤原さんは言った。

■専業主婦となり、インターネットに目覚める



「All Aboutガイドになったことで、人生はもう一回、始まりました。今ある私の全てといっても過言ではありません」
退職後に、結婚。病気の治癒にも時間がかかり、約3年間家で過ごすうちにインターネットに目覚め、ガイドとなったのは、2001年3月のこと。

All Aboutで書きはじめ2年目に妊娠。その後も2人のお子さんに恵まれ、現在藤原さんは3人姉妹の母である。

3回の出産後はその都度ペースダウンを余儀なくされながらも、仕事の依頼が途切れることなく今があるのは、藤原さんの仕事が世の中に確実に評価されてきた証しにほかならない。

■幅広い知見と生活者の視点

All Aboutでの藤原さんの記事の人気の秘密は、ずばり「記事の面白さ」と「知見の広さ」、「ユニークな視点」ではないだろうか。
キレのいい文章で、スパスパと家の中の汚い部分をリアルにあぶりだしていく。だが、不思議と不潔感はない。

筆者はこの原稿を書くために藤原さんの記事を読みあさった結果、家中(とくに風呂場)の掃除に夢中になったあげく、原稿は遅々として進まないという困った事態に陥った。
記事を読んでいて、その先を読みたい。でも早く掃除をしたくてお尻がソワソワしてくる!という読者は、筆者以外にも多いのではなかろうか。

「害虫」や「カビ」といった、従来のお掃除研究家たちがあまりストレートに書いては来なかったものに、ズバッと切り込んでいる痛快さもある。

専門書でもなければあまり書く人はいない。けれども生活の中には実際にいる、ゴキブリ、ダニ、コバエ、チョウバエの類。藤原さんのもつ、彼ら「厄介者」の知識は圧倒的で、まるで研究家のよう。
だが記事は、生活者としての目線が根底にあるせいか、まるで親しい友達が「知ってる?ダニって、目に見えるのよ」とコーヒーを飲みながら話してくれているような親近感がある。

そして、「うわー!嫌ですよね!」と読者に共感しつつ、遭遇しないコツや、予防術、駆除の方法を明示してくれる。藤原さんの手にかかればなぜかあまり虫たちも気持ちが悪くないのは、藤原さんが彼らを嫌いではないからかもしれない。


「もし、家でゴキブリに遭遇したら?うーん、生け捕りにして飲まず食わずでどのくらい生きられるのか観察します。ふふっ。生け捕りの仕方は……」。やっぱり只者じゃない!

■最低限、ここは押さえとこう!

「私の記事は『このくらいの掃除は私もやっている』と言われることも多いんです」と言う藤原さんは「その一方で『このくらいもやっていない』という人も多いはず」と感じている。(筆者もまた後者であった)

藤原さん自身はマニアックに「お掃除道・害虫道」を極めつつ、読者には「最低限このくらいはやっとかないと、健康上まずいかもよ」と一般的な話になるよう意識して記事を書く。
「最低限」にこだわる理由もある。
家を清潔に保つ方法を知らない人もいれば、掃除をきちんとやりたくとも時間のない人もいるだろう。

現代は、誰でもが二足のわらじ三足のわらじを履き、バタバタと走り回っている時代。そんな中での毎日の掃除である。
あれもやらなくちゃ、これも忘れちゃいけない、掃除も完璧にしなくてはと理想を掲げすぎては、自分や家族、どこかにしわ寄せが来るだろう。

「それならば『ここだけは少なくともキレイにしておこう』『最低限ここだけはキレイにしておかないと子どもがお腹を壊しそう』『この辺の汚れは放っておくと大変なことになりそうだ』。そんな最低限を押さえて、あとは自分の状況と相談をしながら、家族同士があまりイライラしないレベルをそれぞれ探っていくしかない。私の記事が、それらを探る上でもヒントになればうれしいですね」


現在、藤原さんが愛用している浴室掃除道具たちはこれ!ただし、新製品を試したりしながらどんどん変わっていく。今のイチオシは手指の消毒用の「アルコールジェル」。カビ予防にも便利で扱いやすい

■よりよい住環境のためにできることを目指して

今も藤原さんは、よりマニアックに情報を積み重ね続けている。それは自身にとって必要なことを淡々とやっていく作業だ。そして、決して「壇上から物申す」ではなく、「使える情報あったら拾って」というスタンスで情報のシェアをしてくれる。

さて、そんな藤原さん。不惑を迎えたものの将来自分がどこへ向かっていくのかわからず絶賛惑い中だとか。「まだ野望の範疇ですが」と前置きをしながら「今まで、どうしたら快適に住んでいけるのかといった観点でノウハウを積み上げてきました。将来はそれを活かして、お年寄りやハンデのある人、災害被災者などが、安全を保ちながら住める住環境について考え、手がけていけたらいいなと思っています」と語ってくれた。

今はまだ子育てに時間を割かれることも多い。あと10年は本を読んだり人に会ったりしながら、自分の進むべき方向を考えてじっくり勉強していきたいと語る藤原さん。その切れ味するどい記事はそのままに、多くの人の笑顔に貢献して欲しいと願わずにはいられない。


「今は、掃除のことで困っている人のところへ行って、サッと解決、喜んでくれる顔を見るのが一番うれしいです」
文/宗像陽子 写真/平林直己
※本記事の内容は取材時点(2015年8月)の情報です。

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