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家電の専門家として、たゆまざるインプットとブレのない消費者目線で独自の地位を確立【家電ガイド 戸井田 園子】

大企業を退社しインテリアコーディネーターとして独立。大きな壁にぶつかりながらも、消費者の視線とプロの知識を併せ持つ家電コーディネーターとして活躍。メーカーからも信頼を寄せられている戸井田さんの原点とは

All About【家電ガイド 戸井田 園子】

戸井田 園子(といだ そのこ) 大手プレハブメーカーでインテリアコーディネートを担当し、インテリア研究所を経て商品企画部へ。そのとき身に付けた性能・デザイン・価格などをトータルに比較し、商品の優劣を見極める技術をもとに、独立してフリーに。現在はインテリア&家電コーディネーターとして活動中。

自分のキャリアパスを見い出せない

大手ハウスメーカーに15年間勤務した後、充電期間を経て、インテリア&家電コーディネーターとして独立した戸井田さん。雑誌や主婦向けチラシ情報サイトでの連載から、企業のeラーニングのカリキュラム監修、企業が主催する家電フェアの講師に至るまで仕事の幅も広がり、多忙な毎日を送っている。

そんな戸井田さんが独立するきっかけとなったのは、メーカー勤務時代に感じた痛切な閉塞感だった。

「居心地が良い会社ではあったんですが、自分のキャリアパスがまったく見えなかったんです。同期ならまだしも、自分が教えていた5歳下の新人までもが自分より上のポジションになっていく。女性というだけで出世の見込みがない。ここには居場所がないなと退職を決意しました。でも、その後はもっと大変でしたね。5歳の息子がいたため、転職活動をしても条件だけで切られてしまう。人生最大の壁を感じました」

設備系の知識を生かして家電のガイドに

いまの状況では思うような転職は難しい。そう悟った戸井田さんは会社員時代の経験を生かし、フリーのインテリアコーディネーターとして活動を開始する。

しかし、ここにも大きな壁が立ちはだかっていた。

「同業者が腐るほどいるんです(笑)。コンスタントに仕事を得るのは簡単じゃない。バイト的に単発で仕事をしていました。ちょうどその頃ですね。All Aboutのガイドの募集を知ったのは。インテリアのジャンルでの募集があればそちらで申し込んでいましたが、残念ながら家電の枠しかなかった。でも、私はメーカーでインテリアコーディネートの仕事を担当していたときに、インテリアの中でも照明やコンセント計画、キッチンセットやトイレなど設備系の知識を意識して習得するようにしていました。だから、躊躇せず応募できたんだと思います」

戸井田さんが勤めていた会社にはたくさんのインテリアコーディネーターがいた。「この中で役に立つ人材になるには、他の人が持っていない設備に関する知識をしっかりと身につけた方がいい」という上司のアドバイスを戸井田さんは実行した。この時の努力が後に大きく花開くのである。

空気清浄機の内部をチェックする戸井田さん。ひとりの消費者として、主婦として、気になる部分は念入りに調べるその姿勢が評価眼を磨いていく

背伸びした目標を設定し自分を引き上げる

All Aboutのガイドになるためのトレーニング期間は半年。100本のリンク集を作り、HTMLを組んで記事6本を執筆するというハードな課題をクリアし、2001年6月、晴れてガイドとして活動をスタートする。聞けば、募集要項にあった「HTMLのスキル」は一から習得していったそうだ。

「私は、できると思えることなら今できなくても、先に『できる』と言ってしまうタイプ。大学では卒論が必要なかったので、文章もろくに書いたことがありませんでした。言葉は悪いですが、はったりをかましつつ、勉強してつじつまを合わせ、上のスペックに自分をうまく引き上げています(笑)」

「エコキュート」についての執筆を依頼されれば、仮にあまり得意分野ではなくてもまずは引き受け、その後、猛勉強して自らに知識をインプットする。ちょっと背伸びした目標を掲げることで自分の成長を促していく。これが戸井田さん流の自己成長術だ。


年に50回以上開催される家電メーカーの製品発表会を始め、仕事の機会には必ず持参しているiPad mini

消費者の視点とプロの知識

All Aboutのガイドになった翌月。戸井田さんが家電コーディネーターとして脚光を浴びる大きなチャンスが訪れた。TBSの生活情報番組「はなまるマーケット」に出演し、家電量販店のトレンドをコメントしたのである。

「ちょうど薄型テレビやDVDプレイヤーの買い替え需要が高まっていた時期で、女性目線で家電品を語れる人材が求められていたようです。『はなまるマーケット』に出た直後にはまた別のメディアからも依頼が入って、以降もそれが続きました。提灯記事を書きたくないというメディアが私に依頼してきたんですね」

新聞で家電品に関するコラムを発表するようになると、今度は家電メーカーも動き始めた。意見を聞きたいと戸井田さんにアプローチするメーカーが相次ぎ、気がつけば全メーカーから声を掛けられていた。新製品発表会に始まって、工場見学や開発者による技術説明会に至るまで、戸井田さんとメーカーとの接点はますます増える一方だ。だからといって、戸井田さんの姿勢にブレはない。使いやすく便利な機能は評価し、そうでない機能については疑問を呈する。消費者の視線とプロとしての知識。この2つを兼ね備えた語り口が支持されている所以である。


知己のカメラマンに「素人は良いカメラを持て」というアドバイスをもらい、一眼レフデジタルカメラを2台購入。新製品発表会では、必ずこのカメラで撮影している

家電カフェを作りたい

戸井田さんが家電コーディネーターとして仕事を始めてから12年。この間、日本の家電業界は大きく様変わりした。国内の主要メーカーは経営不振に陥り、明るいニュースがあまりない。その一方で、最近はダイソンやiRobotといった外資系メーカーが好調だ。

だが、戸井田さんは国内メーカーの技術に信頼を寄せている。

「国内メーカーは経営不振ではあっても製品不振ではありません。いまも強い技術を持っています。よく国内製品はムダな機能が多すぎると言われますが、ムダな機能を開発するから本当に必要な機能が生まれるんですよ。世界一うるさい日本の消費者がメーカーを育ててきたので品質も非常に高い。日本人好みの仕様を追求し、デザインにも力を入れ、スペックを適度に抑えれば必ず消費者の支持を得られるはずです」

明るくそう語る戸井田さんの将来的な夢は「家電カフェ」。訪れた人が家電品を自由に試し、自由に評価できる場の開設だ。自分のバックグラウンドではなくアウトプットを評価してほしいと、努力を惜しまずインプットを重ねてきた戸井田さんが夢を実現する日はそう遠くなさそうだ。

「メーカーの方とは仲良くなりましたが、それでも書くことは書きます」と戸井田さん。ぶれない姿勢はメディアからも家電業界からも高く評価されている

文/三田村蕗子 写真/金田邦男
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