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iモード、iPhone ―次にくるのは何か ケータイ・スマホの未来が知りたい【携帯電話・スマートフォンガイド 石川 温】

いまやケータイに関する情報は多くの人々の関心事である。一般のユーザー向けからヘビーユーザー、業界関係者にいたるまで、さまざまな層にむけて、ケータイ・スマートフォンの情報を発信している石川 温氏。モバイルを追い続ける理由とは?

All About【携帯電話・スマートフォンガイド 石川 温】

石川 温(いしかわ つつむ) 「日経TRENDY」に編集記者として従事。そこで携帯電話の面白さに目覚める。その後、携帯ジャーナリストとして独立。テレビ東京系「TVチャンピオン」ケータイ電話通選手権に出場し、準優勝を飾る。現在は「報道ステーション」や「日経TRENDY」、「BestGear」など、テレビや雑誌など、さまざまな媒体で活躍中。

“iモードが世界を変える” そんなわくわく感がきっかけに

“ケータイの達人”石川さんが持ち歩いている端末はなんと3台。うちiPhoneが2台、白がau、黒がsoftbank、そしてもう1台はNTTドコモのXperiaSXだ。

「メインで使っているのはauのiPhone、現時点ではauのほうが通信環境がいいので。XperiaSXはおサイフケータイとして使っています」
使ってはいないものの、契約をしているケータイがほかにも複数あるという。

「正直、通信費用はかなりの額です。仕事をするのに、いちいち料金がかさむ。でもケータイジャーナリストを名乗る以上、古いケータイを使うわけにもいきませんから(笑)」。石川さんは、そもそもなぜモバイルのジャーナリストという道を選んだのだろうか。

話は1999年1月にさかのぼる。NTTドコモが新サービス「iモード」を発表したイベントでのことだ。「じつは広末涼子さん目当てだったんです(笑)」と、石川さんは当時を振り返る。
「当時、私は『日経TRENDY』という雑誌の編集記者で、ヒット商品や自動車についての記事を手掛けていました。ケータイに関していえば、全国をまわってどの地域でつながりやすいか、というような記事を書いたことはありましたが、さほど興味はなかったんです」

しかし、このイベントでiモードを知った石川さんのケータイに対する認識は大きく変わることになる。「特に、開発の中心人物だった夏野剛氏の『iモードで世界が変わるんだ』という言葉に非常に感銘を受けて、ケータイに興味を持つようになったんです」
ケータイでインターネットができる。このことに当時の誰もが驚いた。石川さんはそれだけではなく、iモード公式コンテンツとして課金ができる仕組みにも衝撃を受けたという。

「いままではケータイに関係のなかった企業が、iモード公式コンテンツとして携帯電話業界にどんどんと参入してきた。そのことによって、雑誌記者としても取材の幅が広がっていきました。いろんな企業の人、特に夏野さんをはじめとして“世界を変えよう”と思っている人たちに話を聞くのがとても面白かった。これからケータイで生活が変わっていくんだという期待感というか、わくわく感がありましたね」


石川さんが現在使っている端末は3台。白いiPhone5の裏面には、F1ドライバーのニコ・ロズベルグのサインが

転機となった“ケータイ王選手権”

石川さんは積極的にケータイそのものや業界を取材するようになった。カメラ付きケータイ、第三世代ケータイと、新たな携帯機能や関連サービスがどんどん登場していくにつれ、石川さんの興味はますます深まっていく。同時に、自分はこのままでいいのかという思いも強くなっていったという。

「iモード以降、ケータイをとりまく状況が劇的に動いていて、いろんなニュースが出てくる。でも、『日経TRENDY』ではケータイの特集が頻繁にあるわけではく、情報を紹介する機会や取材活動に限界を感じていたんです。おまけに私はF1も好きで、開催地に出向いては取材をしていた。ケータイとF1の両方追いかけたい。それなら、会社を辞めてジャーナリストとして自由に活動しようと決心しました」

自分が面白いと思うことを追いかけたい ―そんな思いで、2003年、ジャーナリストとして独立。しかし、最初から仕事があったわけではなかった。そんなとき、ひとつの転機が訪れる。それは、『TVチャンピオン(テレビ東京)』という番組の“ケータイ王選手権”への出演だった。

「知人から応募してみないかと声をかけられたんです。暇だったので出てみようかと。着信音で機種を当てたり、箱の中の携帯電話をさわるだけで機種を当てるという問題で、けっこう難易度は高かったんですよ」
石川さんは、優勝こそ逃したものの、見事準優勝。優勝したのは、ソフトバンクパブリッシング(現・ソフトバンククリエイティブ)の編集者だった。この編集者から、ケータイ雑誌の連載を依頼された。のちにこの連載が書籍化され、さらには書籍が日経新聞の記者の目にとまり、日経新聞電子版の連載へとつながっていく。

このときの連載「モバイルの達人」は、現在も続いている人気記事。また、2005年からは、オールアバウトのガイドをはじめたことで、いろいろなメディアから声がかかるようになった。こうしてジャーナリストとして活躍できる場を着実に築いていった。


さまざまな業界を引き込んでいくケータイ業界を、ずっと追いかけてみたくなったと当時を振り返る

忘れられない孫正義氏からの言葉

石川さんには忘れられないエピソードがある。携帯ジャーナリストとなって数年経ったときのことだ。
「ソフトバンクで、十数人の記者を呼んで、孫正義社長が直に説明するという会があったんです。そのとき、孫さんから『石川君、もっとちゃんとしてくれないとだめだよ』と言われたんです。私の記事を読んで何を思ったのか、真意はわからなかったんですが、自分の記事を読んでくれたというのがうれしくて。孫さんが自分のことを知っていてくれたというのは、大きな励みになりました」

嬉しかったのと同時に、しっかりと記事を書かなければと身が引き締まった思いもしたという。
「読者の人にわかりやすく伝えるのはもちろんのこと、独断や私見のみで記事を書いているわけではないということが業界の人にもわかるように、今まで以上に多くの取材をして、いろんな人の見解を咀嚼したうえで記事を書いていこうと思いましたね」

ケータイではなくキーマンを追いたい

石川さんの書く記事は取材に基づいている。すでに報道されているニュースをまとめるのではなく、直にキーマンから話を聞く。石川さんは、機械やサービスを追っているのではなく、人を追っているのだという。

「たとえばケータイの新製品発表会では、プレゼンのあと新製品を操作する時間が設けられています。そのとき、私はケータイではなく関係者の人のそばにいく。そこで、なるべく多くの人と話をします。ケータイはあとからメーカーから借りて、いくらでも触ることができますから。すると、開発の苦労話とか、プレゼンでは語られなかった話を聞くことができるんです」

またこの業界では、表向きに出ている情報と裏で出ている情報が違うことが多い。「同じ会社でも、ある人がAといっても、他の人に聞くとBということがたびたびある。情報に正解がないんです。ですから、たくさんの人に話を聞くことが重要だと思っています。面識のある人には、ツイッターやFacebookでちょっとした取材をすることもある。そうしたことで、タイムリーに記事を公開することができるという。いままでFace to Faceで地道に取材を重ね、築き上げてきた取材網があるからこそにほかならない。


石川さんの近著「iPhone5で始まる!スマホ最終戦争」日経新聞電子版の連載「モバイルの達人」を再編集したもので、スマホ業界の今がわかる一冊

iPhoneが与えてくれたiモード以来のわくわく感

iモード以降、石川さんに大きなインパクトを与えたのは、2007年6月29日、アメリカで発売されたiPhoneだ。ちょうど石川さんがケータイに対して翳りを感じていた時期だった。

「カメラはデジカメ並みの画素数に、おサイフケータイ機能もつき、テレビも観られる…これ以上どう進化していくか……。しかも、販売奨励金制度が見直しになって“0円ケータイ”がなくなり、新製品を作っても売れなくなった。そんな状況で大丈夫なのだろうか、という不安がありました。新製品発表会にいっても、ぜんぜんわくわくしない。ケータイを追っていても楽しくなくなってしまったんです」

次なるケータイの可能性を追いかけ、タッチペン式のWindows Mobile端末を海外で購入し、日本語OSに組み替えて使ってみたりもした。しかし、実際に試してみると操作性が悪く、これは万人が使うものではないと痛感したという。

「iPhoneが発表されたとき、“早く触りたい”と、iモード以来の昂揚感を覚えました。でも日本では販売されないという。そこで、発売前日にハワイ行きの飛行機に飛び乗ってアップルストアに並び、手に入れたんです。ところが、契約はできないから、触れるけれど通信ができない。当時書いた記事では、“電源は入るけど、さてどうしようか”というような記述で終わるんです(笑)」

その後、プリペイドで契約し使えるようになると、石川さんは、日本のキャリアや携帯メーカーの人たちにiPhoneを触ってもらい、感想を聞いたという。

「自分としては“iPhoneは面白い!”と思ったんですが、ほかの人が触ってみたらどうなんだろうというのが知りたかったんです。日本人は操作性に関して保守的なところがあって、いままでP(パナソニック)をつかっていたから、新しい携帯もPにしようとかといった傾向がある。iPhoneがケータイを変えるのではないかという予感はありましたが、浸透するまでには時間がかかるとも思いました」

石川さんの予想通り、時間はかかったものの、iPhoneは日本でも相当数のユーザー数を獲得し、時代はスマホへ移行した。


Windows Mobile2台と初代iPhone。キーが特徴的な「JASJAR」、タッチペン式の「PDA2K」。どちらもドバイの企業i-mate社が販売した

わからないからこそ面白い。ケータイ・スマホの未来予想図

ケータイ・スマホはどこにいくのだろうか。そんな未来予想図ついて、石川さんはこう語る。

「この先、みんながスマホをもったらどうなるか、想像すると面白いですよね。たとえば、LINEのようなツールを使えば、無料で通話ができるようになるし、コミュニケーションのスタイルが変わってくると思うんです。企業も、家電とスマホの活用など、あらたなサービスをいろいろと模索しています。しかしながら、未来のことはわからないというのが正直なところ。iPhoneのブームを5年前に想像できた人はいるでしょうか」

業界を絶えず追っている石川さんさえ、予想もつかないことが起こるということだ。石川さんは続ける。「この業界は未来が見えない。だからこそ面白い。次のわくわく感を誰が提供してくれるのか、そんな興味が私の原動力になっているのだと思います」

iモード、iPhone、次はいったい何が石川さんのわくわく感を満たしてくれるのか。石川さんのアンテナにひっかかるものがケータイの未来を予測する鍵になるのかもしれない。

10年以上、取材をしていても飽きることがないという。石川さんの見つめる先には何があるのか
文/三田村蕗子 写真/平林直己
※本記事の内容は取材時点(2013年1月)の情報です。
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