値段には理由がある
絵画から室内建築の魅力にとりつかれ、空間設計に進んだ石川さんだったが、やはり一番魅力的で大好きなものは椅子だという。
石川さんが椅子の魅力を伝える記事や作品を通して一番人に伝えていきたいことは何か。それは、今のモノや人の価値感を考え直そうと一石を投じたい思いだ。
石川さんは、何も高価なものだけがいいと言っているのではない。
石川さんが椅子の魅力を伝える記事や作品を通して一番人に伝えていきたいことは何か。それは、今のモノや人の価値感を考え直そうと一石を投じたい思いだ。
石川さんは、何も高価なものだけがいいと言っているのではない。
モノを大切にすれば人も社会も変わるはず
「高価なものは高価なりに、廉価なものは廉価なりの意味があり、使われるときや場所によって使い分けをすればいいんですよ。一日のうち長い時間を過ごす椅子には、もう少し思い入れを持ってもいいんじゃないかなあ」。
それは、どういうことだろうか。
80年代以降、モノの価値観は大きく変わっていったと石川さんは感じている。モノは数年で壊れるように作られていった。代替の部品はなく、修理代は高くつく。人はモノを簡単に捨てて新しく買っていくようになった。「その結果、モノだけではなく、人の関係も変わってきていませんか?終身雇用の時代から使い捨ての時代となってしまった。日々の暮らしのなかで、どうモノと接していくかで、ヒトも社会も変わってしまうんです」。
「例えばね」。石川さんは言葉を続けた。
「お金をためて、特別な一脚の椅子を家族全員でお父さんにプレゼントする。
その椅子が時代を巡り巡ってお父さんがおじいさんになり、孫が大人になったときに使っていく。いいでしょう? 今でも欧米では、人と椅子(モノ)とはずっとそんな付き合いをしています。
人とモノがそんな優しい関係になれたら、人と人の関係も、社会の関係も、きっと変わってくるんじゃないかなと思うんですよ。日本はここ20年くらいで変わってしまったけれど、本当はそうじゃないよということを伝えていきたいんですよ」。
昭和の時代は、もう少し丁寧だった。モノ作りも人間関係も。それは自分たちの世代が伝えていかなければいけないことなのだと、石川さんは感じている。
石川さんは、大上段に構えず、もったいぶらず、時にはユーモアを交えながら、ただ身の回りのファニチャーを愛おしむ術を教えることで、そのことを伝えようとしているのである。
それは、どういうことだろうか。
80年代以降、モノの価値観は大きく変わっていったと石川さんは感じている。モノは数年で壊れるように作られていった。代替の部品はなく、修理代は高くつく。人はモノを簡単に捨てて新しく買っていくようになった。「その結果、モノだけではなく、人の関係も変わってきていませんか?終身雇用の時代から使い捨ての時代となってしまった。日々の暮らしのなかで、どうモノと接していくかで、ヒトも社会も変わってしまうんです」。
「例えばね」。石川さんは言葉を続けた。
「お金をためて、特別な一脚の椅子を家族全員でお父さんにプレゼントする。
その椅子が時代を巡り巡ってお父さんがおじいさんになり、孫が大人になったときに使っていく。いいでしょう? 今でも欧米では、人と椅子(モノ)とはずっとそんな付き合いをしています。
人とモノがそんな優しい関係になれたら、人と人の関係も、社会の関係も、きっと変わってくるんじゃないかなと思うんですよ。日本はここ20年くらいで変わってしまったけれど、本当はそうじゃないよということを伝えていきたいんですよ」。
昭和の時代は、もう少し丁寧だった。モノ作りも人間関係も。それは自分たちの世代が伝えていかなければいけないことなのだと、石川さんは感じている。
石川さんは、大上段に構えず、もったいぶらず、時にはユーモアを交えながら、ただ身の回りのファニチャーを愛おしむ術を教えることで、そのことを伝えようとしているのである。
お気に入りのものに囲まれた仕事机。そこで多くの時間を費やす仕事場の椅子は、やはり座り心地の最高にいいものをこだわって選ぶ。 |
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文/むなかたようこ 写真/平林直己
※本記事の内容は取材時点(2013年11月)の情報です。
※本記事の内容は取材時点(2013年11月)の情報です。
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そして、その場所、空間の一部になりきっている風景がそこにあります。ここはウィーンの「世紀末芸術の余韻」と「今」が一体になる風景でした。