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好きなものをとことん調べ、掘り下げる。 発見の面白さを伝える 「音楽発掘家」でありたい【テクノポップガイド 四方 宏明】

テクノポップガイドの四方さんは、All Aboutのサービス発足当時からガイドを務め、今年で15年目。その記事は、アルバムレビューからジャンル解説、アーティストインタビューまで多岐にわたる。未来への憧れと懐かしさが同居する、レトロフューチャーなテクノポップの世界。その魅力を語ってもらった。

All About【テクノポップガイド 四方 宏明】

四方 宏明(しかた ひろあき) テクノポップを中心としたレコード蒐集癖からPOP ACADEMYを1997年に設立。2001年よりAll Aboutにてテクノポップのガイドを担当。テクノポップ、辺境を中心とした世界のポップミュージックの情報を発信。Twitter(hiroaki4kata)で更新のお知らせ中。

テクノポップのコンセプトは「近未来感」

ピコピコと混ざり合う電子音に、リズミカルで耳に残るキャッチーなメロディー。70年代末~80年代にかけて一世を風靡したテクノポップは、現在も熱烈なファンが多い。
しかし、シンセサイザーやリズムマシンを用いること自体がまだ珍しかった当時とは違い、今や電子音や打ち込みを使った楽曲は巷にあふれている。では、それらとテクノポップとの違いとは何なのだろうか。

テクノポップガイドの四方さんは、それを「近未来感」だと語る。
「近未来感っていうのは、何となく懐かしい未来像なんですよ。ある時点の人々が想像した未来世界というか。そういった世界観が、音楽やビジュアルになっているのがテクノポップ。実際にそれが起こるか起こらないか、というのは、全く別次元の話ですね」

テレビ電話にスマートフォン、電気自動車、宇宙旅行……おそらく80年代に想像されていたであろう未来像は、21世紀の今、続々と現実のものになっている。でも、四方さんはこう言って笑う。
「たぶん今僕たちが感じる近未来も、80年代やもっと以前に、人々が『未来ってこうなんじゃないか』って思ったものが続いているような気がするんですよ」


1979年に結成された日本のテクノポップユニット「FILMS」。まるで宇宙服のようなマスクにテレビ電話の曲と、「近未来感」でいっぱいだ。

突如やってきたテクノポップとの出合い

四方さんとテクノポップの出合いは、70年代末に遡る。
ビートルズや鉄腕アトムが好きな「ごくごく普通の少年時代」。音楽を聴くことも好きだったが、ただ楽曲を聴くだけでなく、そのアーティストのルーツや周辺を調べるのが楽しかったという。

「たとえばビートルズなら、メンバーのソロやプロデュース活動、他のアーティストへの楽曲提供や、海外版のアルバムなど……そんな周辺のことを調べるのも好きでした」

欲しい情報がインターネットですぐに手に入る現在とは違い、その頃、新しい音楽を知るための方法は限られていた。音楽雑誌か、ラジオか、輸入レコード店に足を運ぶか、友人からの紹介か。70年代終盤、そうやって張っていたアンテナに「面白そう」と引っかかったのが、テクノポップだった。

当時のことを、四方さんは「すべてが同時多発的にやってきた感じ」と振り返る。YMO、クラフトワーク、バグルス、等々。その近未来的な音とビジュアルに四方少年の心は魅了された。もともとロボットや宇宙が好きだったこともあり、彼らのアートワークもドンピシャに響いたのだ。

さらに拍車をかけたのが、1980年に出版された『テクノ・ボーイ』という本との出合い。まるで世界のテクノ図鑑のようで、そのデザイン性の高さにも衝撃を受けた。元来の“調べ癖”がムクムクとわきあがり、好きなアーティストの周辺、似たイメージの楽曲……と、どんどん範囲を広げ、レコードを集めていった。


1980年に双葉社から出版された『テクノ・ボーイ』。当時のテクノポップ系アーティストが網羅されている。アートワークにも独特の世界観が。

好きなことで人と繋がる楽しさ

時代は進み、インターネットが徐々に普及し始めた90年代半ば、四方さんは一つのサイトを立ち上げる。All Aboutガイドを務めるきっかけにもなった「POP ACADEMY」だ。

「もともとMacintosh愛好家だったので、自分でも何かサイトを作ってみようと思ったんです。当時はまだありませんでしたが、今でいうWikipediaのテクノポップ版みたいなものを作りたいな、と」

「POP ACADEMY」には、それまで集めた膨大なレコードやCDの情報や、アーティスト、ジャンルなどについて載せていった。そうやってサイトを作っているうちに、当初の目的とはまた違った楽しみが生まれたのだという。

「海外も含めてサイトを見た人たちが、書いてあることについていろいろ意見をくれるようになったんです。たとえば、このアーティストは他にもこんなことをやっているよ、とか、このレコードを知っていますか、とか。そういう僕が知らなかった新しい情報を教えてくれる人が増えてきて、どんどん面白くなっていきました」

このサイトが当時サービス準備段階だったAll Aboutのプロデューサーの目にとまり、ガイドをやってもらえないかとのアプローチが来る。

実は当初、All Aboutが募集していたのは「テクノ」のガイドだった。四方さんがガイドを務めるにあたり、それを「テクノポップ」に変更してもらったという経緯がある。

「僕がガイドを始めた2001年頃は、テクノというのはクラブミュージックの延長線上のもの、という捉え方が主流だったんですよ。テクノとテクノポップは繋がっていて、テクノにも好きなのはあるけれど、自分が得意なのは近未来感のあるテクノポップじゃないかと。テクノ=クラブミュージックだと思って僕の記事を読んだ人が、ガッカリするといけないなぁと思って(笑)」

2001年から始めたガイドも今年で15年目。執筆した記事は700本を超える。


穏やかな笑顔で、時にユーモアを交えながら話す。「今も、SNSなどの繋がりから情報をもらうことも多いですね」

常に発見を求める「音楽発掘家」

四方さんは現在、月に約6本のペースで記事を執筆している。およそ半数がアルバムレビューなどのコラム、残り半数がアーティストインタビューだ。

四方さんの記事には、拡散力がある。読んだ人がつい「誰かに教えたい」と思うようなネタ、他では書かれていないようなネタが、たくさん詰まっているのだ。

「記事を書くときには『何か新しい発見を!』という思いを大切にしています。読んだ人が何かを見つけてくれたり、『これ面白いよね』と思ってくれたりするのが一番嬉しい」

読者に発見を提供するためには、当然ながら自身が発見をしなければならない。好きな曲、好きなアーティスト、面白そうな国があれば、それをもとに周縁の情報をひたすら集めていく。そうすると、時に思いもかけない“掘り出し物”に出合うことがあるのだそうだ。

だから四方さんは、自身のことを、音楽ライターでもなく音楽評論家でもなく「音楽発掘家」だという。発掘したものを人々と共有し、「面白い」と思ってもらえることが、モチベーションにも繋がるのだ。

それはインタビュー記事でも同様だ。アーティストにインタビューするときには、過去の記事やブログなどを調べ、世の中にあまり出回っていない情報を引き出すようにしている。インタビューをしたアーティストが他のアーティストを紹介してくれたり、「新譜を出すので話を聞いてほしい」と依頼があったりと、人の繋がりも広がっている。

「たとえば以前、ある方の紹介でスプツニ子!さんにインタビューをさせていただく機会があったのですが、その後、皆さんご存じのように有名になられて。そうやって、自分が好きなアーティストがたくさんの人に支持されるようになるのは、とても嬉しいですよね」


1983年にデビューしたスウェーデン出身のバンド「NASA」。この『The Bird』にはバグルスのカバーが収録されている。「調べてみたらこんなことやってたんだ!という、僕にとってとても面白い1枚」


このところずっと注目しているのは、チリのエレクトロポップ女子、Javiera Mena(ハビエラ・メナ)。「インタビュー快諾してもらったんですが、やはりラテン気質なのか返事がない(笑)。でも、ついこの間、インタビュー再開のメッセージをもらった。乞うご期待!」

世界のマイナーテクノを紐解きたい

現在四方さんは、自宅のある神戸と東京を行き来する生活を送る。そして時間を見つけては海外に行き、現地の音楽に触れるのが楽しみの一つだという。

「テクノポップにこだわらず、ミュージックシーンではマイナーだと思われている国に行くのが好き。ウクライナとかロシアとかモンゴルとか、面白いですよ。そういう国に行くと、いわゆる民族音楽ではなく、現地のローカルミュージックのCDをたくさん買って帰ってきます」

そんな四方さんに、今気になっているテーマを尋ねると「共産テクノ」という答えが返ってきた。

「ソ連崩壊前の共産圏の国々で、テクノポップ的な音楽をやっていたアーティストが結構いるんですよ。最近のロシアのアーティストについては情報もありますが、ソ連時代に何が起こっていたかということに関しては、ほとんど世間では知られていない。共産テクノを紐解く、というのがこれから取り組んでみたいテーマですね」

近々またモスクワに行き、現地のテクノポップミュージシャンのスタジオに遊びに行くという。

「ロボットが好き、宇宙が好き、近未来が好き。だったらきっとテクノポップが好きになると思います!」
そう語る四方さんの目はキラキラと輝き、少年時代から変わらぬ“発掘家魂”が宿っているようだ。


「理想は、神戸と東京、海外で1年の3分の1ずつ生活すること。まだまだ実現には遠いですが(笑)」


このところずっと注目しているのは、チリのエレクトロポップ女子、Javiera Mena(ハビエラ・メナ)。「インタビュー快諾してもらったんですが、やはりラテン気質なのか返事がない(笑)。でも、ついこの間、インタビュー再開のメッセージをもらった。乞うご期待!」

取材協力:
eat more greens
http://www.eatmoregreens.jp

文/加藤朋実 写真/平林直己
※本記事の内容は取材時点(2015年7月)の情報です。
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