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経済的理由で進学をあきらめるのはもったいない。 奨学金のメリットとリスクを伝えて、 進学したい子の背中を押してあげたい【大学生の奨学金ガイド 久米 忠史】

今や大学生の半数以上の人が利用している様々な奨学金。昔の「ものすごく優秀なほんの一握りの人だけもらえるもの」というものとは様変わりしているよう。久米さんはなぜ、「奨学金」に焦点を当てたのか。「奨学金」ガイドの久米さんのガイドの原点とは。

All About【奨学金ガイド 久米 忠史】

久米 忠史(くめ ただし) 奨学金をわかりやすく解説するアドバイザー。進学費用で悩む保護者や生徒が進学の可能性を見つけられるように、全国で奨学金や進学費用に関する講演を行う。また、ウェブサイト「奨学金なるほど相談所」を開設するほか、ブログ、動画などを活用して積極的に情報発信を行っている。

脱サラして、奨学金の専門家へ

ちょっぴりお堅い雰囲気の方かと勝手に想像していたが、初めてお会いした久米さんは、関西弁丸出しの熱血教師のような雰囲気を持つ気さくな方だった。(実際、筆者はインタビュー中うっかり「先生」と呼んでしまい「あきまへん。それだけは勘弁して」と笑われた)
大学卒業後、お笑い系の芸人を多く抱える芸能プロダクションに勤めていたこともあるせいか、話もおもしろくて一気に引き込まれる。

なぜ、奨学金に関わるようになったのだろうか?
久米さんに伺うと、「意外と僕の人生は、成り行きなんですわ」とのこと。
芸能プロダクションから二度の転職を経て小さなイベント会社を設立。その時たまたま仕事で沖縄県の進学サポート事業に関わったことが、久米さんの人生のターニングポイントとなった。

沖縄県内の高校で、進学についてのヒアリングを重ねていたところ、沖縄に住む受験生の立場に立った進学情報が少ないことに気づく。沖縄では経済的な理由から進学をあきらめている子も多いことを知り、奨学金について独自に情報収集にあたるようになる。

進学費用対策を正しく伝えるニーズがあることは、ヒアリングのたびにひしひしと感じるようになっていた。一方で、必要とされる奨学金情報は今一つ満足のいくものがない。
「日本支援機構は日本支援機構の奨学金については語っている。国の教育ローンはサイトを開けば国のローンについては詳しくわかる。けれども、どんな性格の奨学金があり、奨学金を利用するためには何が必要か。どういうリスクがあるか。どうやって利用すべきか、そんなすべてを網羅した情報というのはどこにもなかったんです」

その後、イベント会社の運営と奨学金リサーチと二足の草鞋を履きながらも、奨学金のことは久米さんの頭から離れることはなかった。
「何も、大学進学至上主義というわけではないんです。なんとなく流れにのって大学に行ったって、就職できるような時代じゃないですから。高卒で働くのも専門学校に行くのもいいし、社会に出てから大学に入りなおすような回り道もいい。でも、進学したいという気持ちがあるのに、経済的な理由で進学をあきらめる子がいたらそれはもったいないこと」
奨学金は、今や学生の半数以上が利用している。ただし、親子ともに奨学金の内容をしっかり把握しているわけではないと久米さんは指摘する。


講演は、年間100~120回ほど。全国を巡る

奨学金のリスク

奨学金は、メリットが多くある一方でリスクもある。未成年である子どもが何百万円もの金銭消費貸借契約を結ぶのと同じであるにもかかわらず、親子でよく仕組みがわかっていなかったりすることや滞納が続けば法的措置が取られてしまうことなど。

たとえ大学を中退しても、貸与奨学金の場合の返済が免除されるわけではない。大学をやめても奨学金の返済はスタートし、滞納が連続3ヵ月続けばいわゆるブラックリストにも載る。ブラックリストに載れば、将来車や家を買うときのローンを組めなくなることもあり得る。

また、返済が苦しくなった場合の対応策として、返済猶予制度が設けられているにも関わらず、それらの情報を理解しないまま負のスパイラルに陥る例も少なくないという。

アメリカでは奨学金や学生ローンなど各種制度と学生を結びつけるNPOなどが充実し、そういった情報を提供する機関が整っているが、日本にはほとんどないと言っていい。当事者(または高校の教師)が書類をそろえることで精いっぱいになってしまい、リスク対策が置き去りになっている。

だからこそ、正しい情報をきちんと発信する役割が自分にあると久米さんは感じるようになっていく。
2005年から奨学金アドバイザーとして進学費用対策の講演会を行うようになり、2010年にはイベント会社の経営の一線から引き、保護者目線に立った奨学金情報提供に徹して活動している。

「保護者の皆さんも知らないことが多いんです。でも、それは恥ずかしいことではなくて、昔とシステムが変わってきているから、親も知らなくて当然。だから講演会では『知らなくて当然やで』としゃべり方もラフな感じで、語りかけるように話しています」

講演会は一般論を話すけれども、聞いている人たちの事情は千差万別。そのため、土日は無料で個別相談会をやることも。そういった個別相談会を通じて、大学と個人、大学と高校を結ぶパイプ役となり、次第に「奨学金のプロ」として知られる存在となっていった。


講演で使っているレーザーポインター。かれこれ9年ほど使っている「相棒」のような存在


「ルポ貧困大国アメリカ」堤未果著(左)は先進国と言われるアメリカの影の部分をあぶりだす。「進学格差」小林雅之著。著者は奨学金問題の第1人者。どちらも何度も読み直している愛読書

熱い人間性「子どもに罪はない」

「子どもに罪はないんです」そんな言葉がインタビュー中に何度も出た。
経済的に厳しいからといって、進学したい気持ちをあきらめてほしくない。
そんな熱い気持ちはどこから来たのだろうか。

久米さんが会社に勤めていた頃、北朝鮮の子どもたちの実情を知る機会があった。

自分たちは飽食の時代の子と言われ甘えた世代なのに、わずか数百キロ隣の国で辛い思いをしている子がたくさんいることを知り、久米さんは月々少しずつの寄付を続けていた。子どもたちとの手紙のやり取りもあったという。

「本当は、北朝鮮の子でも引き取れる施設でも作りたいところやったけど、力もなくてそこまでできません」
だから、せめて国内で、経済の問題故に進学をあきらめている子がいれば、「それは違うよ、行けるんだよ」と背中を押してやりたいのだと言う。

インタビュー中、北朝鮮の子どもたちの話になると、時々感極まってウッと涙目になってしまう久米さんは、いまどき珍しいほどの情にもろい熱血漢なのだった。


「どんな子どもにも教育のチャンスを与えてやりたいんですわ」

わかりやすく。語りかけるように

2013年、All Aboutから声をかけられ「奨学金ガイド」となる。All About担当者に当時のことを尋ねてみた。
「学習塾のカテゴリを充実させるために、『奨学金』のガイドになれる人を探して久米さんにたどり着きました。奨学金のことを書いている人は多いけれど、どうしても情報が一方的であったり、批判めいていたり、わかりにくかったり。一番フラットで正しい情報を発信していて、真摯な思いを感じたのが久米さんでした」

現在、奨学金制度も大きく変わろうとしている。新たな情報をタイミングよく、ピンポイントで発信することができるのがWEB記事の強みだ。
いち早く情報を入手し「講演のようにお母さんに向けてわかりやすく。その情報を全国どこにいてもキャッチできるように」という気持ちでAll Aboutで記事を書く。

賢く使え。奨学金

久米さんは、ただ奨学金を利用せよというだけではない。「賢く利用せよ」という。
たとえば、学資保険と奨学金はどういう形で利用したら一番得をするのか。
教育ローンと奨学金はどちらが得か、併用できるのか。

「奨学金は在学中は無利子やで。そこを考えなあかん。下に子どもおるんちゃうの?おるんやったら、そのお金置いとこうや」
ざっくばらんに、愛情たっぷりに、時には叱咤激励し。
一番メリットの多い方法を、講演や記事で発信し続ける。


「きちんと就職しないと奨学金を返せない。だから次は就職サポート事業をすすめようと思うてます」。夢は広がる

奨学金と保護者をつないで

将来的には、経済的に厳しい家庭の子どもたちの学力を上げる私塾のようなものを作りたいと熱く語る久米さん。
「児童養護施設は、子どもたちの心身のケアで精いっぱいやと思います。だから大学の進学率も低いし、中退率も高い。せっかく奨学金を借りても中退してしまったら意味がない。学力つけて、進学して、卒業して就職して、奨学金を返す。そこまでみてやりたい」

まずは現在の会社経営の中で、奨学金の啓蒙活動を一般社団法人にして、奨学金と保護者をつなぐ組織としてより公共性を持たせたいと考えている。

就職サポート事業などは、具体的に話が進んでいる状況にある。
「いつか、『親の年収●●円以下の子のみ入れる塾』を作って成果を上げたいですね。経済的に恵まれている子どもたちに『あそこの塾に入りたいなあ』なんて言わせられたら痛快やね!」

いたずらっぽく笑う久米さんは、いつだってちょっと反体制だ。
「教育は、なんでもかんでもドライに割り切るビジネスとは違うんです」と語る久米さん、
大きな組織、豊かなもの、社会を牛耳っている何やら怪しい仕組みに、チクっと批判をしつつ、今日も進学したい子と親をサポートするために全国を駆け回っている。
文/宗像陽子 写真/須藤明子
※本記事の内容は取材時点(2014年9月)の情報です。
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