呪いか、祝いか。言葉が持つチカラ
社員が大切にしている言葉を紹介する連載企画「Quotes」。第7回に登場していただくのは、メディアビジネス部 コンテンツプロデュースグループで、相談コンテンツ「31歳からの恋愛相談室」を手掛ける寺門さん。編集職に就きたいと思ったきっかけとなった、大好きな小説の主人公のセリフを紹介いただきました。“言葉の持つ威力”をギクリとするほど的確に表した「Quotes」です。
■バンドマンに猛烈に嫉妬する
ロックバンドの音楽が好きです。月1回はライブハウスに足を運びます。
でも、バンドマンという職業に対しては苦手意識があります(苦手というのは、だいぶまろやかに抑えた表現です)。なぜかといえば、猛烈に嫉妬心を煽られるからです。
私には音楽に関する能力がまったくありません。唯一思い通りに音を出せる楽器は、リコーダーのみ。ピアノを毎日練習していた時期もありますが、順番に鍵盤を押さえるだけの域を超えることはできませんでした。
だからというのもありますが、それ以上に妬ましく思う理由は「練習も本番も、ひたすらにかっこいいから」です。
バンドマンにとっての本番は、ライブですね。ステージの上、強すぎるライトに照らされながら楽器を弾いたり歌ったりする姿は、間違いなく「その人が一番輝いている瞬間」でしょう。
それだけならまだしも、家やらスタジオやらで練習する姿ですら様になるのが憎らしい。たとえ寝起きのボサボサ頭にスウェット姿だったとしても、です。
でも、バンドマンという職業に対しては苦手意識があります(苦手というのは、だいぶまろやかに抑えた表現です)。なぜかといえば、猛烈に嫉妬心を煽られるからです。
私には音楽に関する能力がまったくありません。唯一思い通りに音を出せる楽器は、リコーダーのみ。ピアノを毎日練習していた時期もありますが、順番に鍵盤を押さえるだけの域を超えることはできませんでした。
だからというのもありますが、それ以上に妬ましく思う理由は「練習も本番も、ひたすらにかっこいいから」です。
バンドマンにとっての本番は、ライブですね。ステージの上、強すぎるライトに照らされながら楽器を弾いたり歌ったりする姿は、間違いなく「その人が一番輝いている瞬間」でしょう。
それだけならまだしも、家やらスタジオやらで練習する姿ですら様になるのが憎らしい。たとえ寝起きのボサボサ頭にスウェット姿だったとしても、です。
■「呪いは言葉だ。文化だ」
それに比べて編集者ときたら、コンテンツを仕込むときも公開するときも、基本はじっと背中を丸め、机に向かうのみ。華のないこと、この上なし。
そもそも表に立って活躍するバンドマンと、裏方仕事である編集者を比較するのは野暮なことだと、重々承知しています。それでもライブを観に行くたびに、いいなあ羨ましいなあと、下唇を噛んでしまうのです。
とはいえ私は、自分の仕事が大好きです。編集者歴7年目を迎えた今も、自分が編集者ということが嬉しくて嬉しくて仕方ありません。
大好きな小説の中で、主人公がこう言っていました。
呪いはあるぜ。しかも効く。呪いと祝いは同じことでもある。何の意味もない存在自体に意味を持たせ、価値を見出す言葉こそ呪術だ。プラスにする場合は祝うといい、マイナスにする場合は呪うという。呪いは言葉だ。文化だ
この台詞に出会ったとき、ぎくりとしました。言葉の持つ威力を、あまりにも的確に、端的に表現していたからです。そしてつまり編集者は、「誰かを呪うことも、祝うこともできるツールを操る仕事」なわけです。
ずいぶんと恐ろしいことをやっていると思います。でもだからこそやってみたい、やらせてほしい、そう意気込んで、この仕事に就きました。
ずいぶんと恐ろしいことをやっていると思います。でもだからこそやってみたい、やらせてほしい、そう意気込んで、この仕事に就きました。
このセリフが出てくるのは、京極夏彦の長編推理小説『姑獲鳥の夏』(うぶめのなつ)。「百鬼夜行シリーズ」の第一弾で、古本屋の主人、神主、憑き物落としという3つの顔を持つ主人公・京極堂による謎解きが人気のベストセラー。 |
■「祝い」か「呪い」か。今日も自問自答
ここ数年、私は恋愛系のコンテンツに携わっているのですが、読者の方から「この一文に背中を押されて、気になる人をデートに誘えた」とか、「この記事が胸に刺さって、不倫相手を着信拒否できた」なんて言ってもらえることがあります。
いずれも人生単位で見たら、ささやかな変化かもしれません。とはいえ、たしかに彼女たちにとって何らかの「祝い」を与えられたのかと思うと、万歳しながら走り出したくなります。
意図せず「呪い」をかけていないか。できる限り「祝い」につながるものを届けているか。今日も自問自答しながら、コンテンツを送り出します。
いずれも人生単位で見たら、ささやかな変化かもしれません。とはいえ、たしかに彼女たちにとって何らかの「祝い」を与えられたのかと思うと、万歳しながら走り出したくなります。
意図せず「呪い」をかけていないか。できる限り「祝い」につながるものを届けているか。今日も自問自答しながら、コンテンツを送り出します。
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