大事な“本番”を成功させるためのマインドセット
社員が大切にしている言葉を紹介する連載企画「Quotes」。第33回に登場していただくのは、メディアビジネス部 ガイドプロデュースグループ 石塚さん。いまも昔も大切にしている“心構え”を紹介してもらいました。
■人生初の「本番」
それは6歳のときにやってきた。初めて大きなステージでピアノを弾く日。母が作ってくれたドレスを身に纏い、とくに緊張もせず自分の番がやってくる。
名前を呼ばれたら足元のバツ印まで歩いて、止まり、おじぎをする。なるべくお客さんにお尻を見せないよう、後ろから回って椅子に座る。先生から言われた通り、いったん手はお膝。それから鍵盤に両手を置く。(当時は)生真面目な私は、ここまで完璧だった。そう、ここまでは。
このあとすぐに異変に気付く。
「……あれ? 鍵盤が遠い」
両手を精一杯伸ばして突っ張った状態でしか、鍵盤に届かない。(先生、ちゃんと椅子の高さも踏み台の段数もメモしとったのに!! 椅子もテキトーに置かんでよ! あー、もう少し手が長かったらなぁ…。)
もちろんステージに独りぼっち。そんな戸惑いや文句を口走ることもできず、ついに会場の「シーン」とした空気に負ける。
「仕方ない、弾こう。」
6歳の脳みそは初めて「諦め」という判断をしたのかもしれない。こうして人生初の「本番」は終わった。
名前を呼ばれたら足元のバツ印まで歩いて、止まり、おじぎをする。なるべくお客さんにお尻を見せないよう、後ろから回って椅子に座る。先生から言われた通り、いったん手はお膝。それから鍵盤に両手を置く。(当時は)生真面目な私は、ここまで完璧だった。そう、ここまでは。
このあとすぐに異変に気付く。
「……あれ? 鍵盤が遠い」
両手を精一杯伸ばして突っ張った状態でしか、鍵盤に届かない。(先生、ちゃんと椅子の高さも踏み台の段数もメモしとったのに!! 椅子もテキトーに置かんでよ! あー、もう少し手が長かったらなぁ…。)
もちろんステージに独りぼっち。そんな戸惑いや文句を口走ることもできず、ついに会場の「シーン」とした空気に負ける。
「仕方ない、弾こう。」
6歳の脳みそは初めて「諦め」という判断をしたのかもしれない。こうして人生初の「本番」は終わった。
今写真を見返してもめちゃめちゃ椅子が遠い。
■本番は二度と戻ってこない
そう、本番は思いもしないアクシデントがよくあるのだ。
同じピアノの発表会でいうと、私の兄も踏み台に足を乗せた途端「ガタン」と一番下まで急降下し、会場中が笑いに包まれたこともあるし、中学時代の文化祭のダンス発表で、音源が「体感50%」のスピードで再生されてしまい、終わったと同時に泣き崩れたこともある。コンクールのピアノ伴奏で、譜面が波打って降り注いできたこともあったっけ。
自分のせいで失敗したなら後悔するだけだが、自分は全く悪くないのに何かしらの外部要因でアクシデントが起こったときはもう、感情の行き場を失う。
それでも、本番はもう二度と戻ってこない。たった一回の、絶対に失敗できない特別な時間。失敗すれば、自分だけでなく、お客さんの記憶にも刻まれてしまう。
そういうものである。だからみんな、練習をするのだ。
同じピアノの発表会でいうと、私の兄も踏み台に足を乗せた途端「ガタン」と一番下まで急降下し、会場中が笑いに包まれたこともあるし、中学時代の文化祭のダンス発表で、音源が「体感50%」のスピードで再生されてしまい、終わったと同時に泣き崩れたこともある。コンクールのピアノ伴奏で、譜面が波打って降り注いできたこともあったっけ。
自分のせいで失敗したなら後悔するだけだが、自分は全く悪くないのに何かしらの外部要因でアクシデントが起こったときはもう、感情の行き場を失う。
それでも、本番はもう二度と戻ってこない。たった一回の、絶対に失敗できない特別な時間。失敗すれば、自分だけでなく、お客さんの記憶にも刻まれてしまう。
そういうものである。だからみんな、練習をするのだ。
■私の練習マインド
後に私は、あの誰もが知っている言葉を知ることになる。
練習は本番のように。本番は練習のように。
これはよく、「練習のときは本番だと思って気を抜くな。本番は過度に緊張せず、いつもの練習どおりにリラックスしてやりなさい。」という、マインドセット的な意味合いで使われているようだが、私の捉え方は少し違う。
「練習は、本番と同じ環境を意図的に作った上でしなさい。そうすれば、本番は、練習を再現するだけでOK。」という具合だ。なんだか文字にするとフツーすぎて格好悪いけれど。
ピアノの練習ならば、
・練習室に入ってすぐ、何にも弾かずに一呼吸。それから本番の曲を弾く
・入場から演奏、退場までを止まらずにやってみる
・誰かに演奏を聴いてもらう。録音をする
とにかくしつこく徹底的に本番の環境を再現するのだ。
実際にやってみて初めて「あ、この靴つまづきやすいな」とか「最初の一発で良い音を出すって難しいんだな」ということが実感できる。どんな時でも音を外さないプロのミュージシャンを改めて尊敬したりもする。
「練習は、本番と同じ環境を意図的に作った上でしなさい。そうすれば、本番は、練習を再現するだけでOK。」という具合だ。なんだか文字にするとフツーすぎて格好悪いけれど。
ピアノの練習ならば、
・練習室に入ってすぐ、何にも弾かずに一呼吸。それから本番の曲を弾く
・入場から演奏、退場までを止まらずにやってみる
・誰かに演奏を聴いてもらう。録音をする
とにかくしつこく徹底的に本番の環境を再現するのだ。
実際にやってみて初めて「あ、この靴つまづきやすいな」とか「最初の一発で良い音を出すって難しいんだな」ということが実感できる。どんな時でも音を外さないプロのミュージシャンを改めて尊敬したりもする。
■社会人も「練習」と「本番」の繰り返し
学生と社会人。当時それはもう「全くの別物」だと思っていて、新卒入社したその日に学生時代の記憶をいったん無感情に捨て切った私。音楽をやっていたとかは関係ない。むしろ「感性」とか「表現」みたいなワードは封印して、論理的に生きなければ社会人として生き残れない!周りからはそう見えなかっただろうが、「ロジカル」「レバレッジ」「費用対効果」みたいなワードを呪文のように心に唱え、自分を追い込んだ。
しかし、人事と広報の部署に配属され、日々の業務を重ねるにつれ、ふと「練習」と「本番」の感覚を呼び覚ます。株主総会の司会、内定式、会社説明会。いわゆる人前に出る仕事はもちろんだが、日々の電話対応、インターンシップの企画、査定のときの上司へのアピールなど、「これは本番のための練習だ」と捉えて準備することで、しっくりきた。
幸い当時の上司も「シミュレーション」が好きだった。何かイベントをやる前には必ず、スタッフが朝現場入りするところから、1人何役にもなりながら「練習」をした。
社会人も、「練習」と「本番」の繰り返しなんだ。私の中では大きな発見だった。
しかし、人事と広報の部署に配属され、日々の業務を重ねるにつれ、ふと「練習」と「本番」の感覚を呼び覚ます。株主総会の司会、内定式、会社説明会。いわゆる人前に出る仕事はもちろんだが、日々の電話対応、インターンシップの企画、査定のときの上司へのアピールなど、「これは本番のための練習だ」と捉えて準備することで、しっくりきた。
幸い当時の上司も「シミュレーション」が好きだった。何かイベントをやる前には必ず、スタッフが朝現場入りするところから、1人何役にもなりながら「練習」をした。
社会人も、「練習」と「本番」の繰り返しなんだ。私の中では大きな発見だった。
母校で大学生のキャリアに関する講座を実施。
最後にひとつだけ。さきほど、「本番は練習を再現するだけでOK。」と言ってしまったが、あまりにも無難すぎて納得がいかないので修正したい。本番は本番で、大切にしたいマインドがある。
“Think that you are the best when you are up on the stage.
When you are off the stage, think that you are at your worst.”
ーEric Clapton
「ステージに上がったとき、自分が一番上手いと思え。
ステージを降りるとき、自分は一番下手だと思え。」
ーエリック・クラプトン
そう、「本番」はいつだって、椅子が遠くても、どんな要因で何があっても、堂々としていたい!
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