ジェネラルマネジャー・佐々木望の脳裏に焼き付いて離れない、アユタヤの“世捨て人”が発したひと言
社員が大切にしている言葉を紹介する連載企画「Quotes」。第2回に登場していただくのは、ガイドプロデュース部のジェネラルマネジャー・佐々木望さんです。まだ青臭かった大学生・佐々木さんの人生を決定づけた、ある“世捨て人”の金言を紹介してもらいました。
佐々木 望(ささき のぞむ) ガイドプロデュース部 ジェネラルマネジャー 2005年に慶應義塾大学経済学部を卒業。大手旅行会社で法人営業として勤務後、2006年にオールアバウトに入社。広告営業として5年従事したのち、グループ会社の株式会社オールアバウトライフマーケティングの営業、マーケティング、オペレーションを担当。2015年よりオールアバウトに戻り、コンテンツオペレーション部、商品企画部、ガイドサービス部のジェネラルマネジャーを歴任。2019年4月よりガイドプロデュース部のジェネラルマネージャーに就任。 |
■アユタヤの“世捨て人”が佐々木の人生を変えた
たとえ、どんな世界的な偉人の格言でも、受け手の心境次第で響かないものは響きません。逆に、それが日本を去った”世捨て人”が吐き捨てたような言葉でも、人生を決定づけることがあります。
僕の「Quotes」は、俗世界からドロップアウトした、ある意味”異人”が大学生だった僕に語った言葉です。
僕の「Quotes」は、俗世界からドロップアウトした、ある意味”異人”が大学生だった僕に語った言葉です。
2004年、大学4年の夏休み。僕は友人の樺沢とともにタイ、マレーシア、シンガポールをまわる1ヶ月間のバックパック旅行をしていました。
タイでアユタヤに立ち寄ったときのことです。お決まりの観光スポットをめぐり、夕食をとるために飲み屋に入りました。半野外でプラスチックの机と椅子、カラオケが置いてある東南アジアでよくあるスタイルのお店。
そこで僕の人生を決定づけるひと言を発した、アユタヤの“世捨て人”に出会いました。
そのおじさんは日本人で、年は40~45歳ぐらい。定職にはついておらず、日本で小銭を稼いでは、物価の安いタイに長期滞在。お金がなくなったらまた日本に……といった生活をしている人でした。
失礼な物言いですが、生意気な大学生だった僕としては、日本から脱出してアユタヤに沈没しているダメなおっさんに見えました。
タイでアユタヤに立ち寄ったときのことです。お決まりの観光スポットをめぐり、夕食をとるために飲み屋に入りました。半野外でプラスチックの机と椅子、カラオケが置いてある東南アジアでよくあるスタイルのお店。
そこで僕の人生を決定づけるひと言を発した、アユタヤの“世捨て人”に出会いました。
そのおじさんは日本人で、年は40~45歳ぐらい。定職にはついておらず、日本で小銭を稼いでは、物価の安いタイに長期滞在。お金がなくなったらまた日本に……といった生活をしている人でした。
失礼な物言いですが、生意気な大学生だった僕としては、日本から脱出してアユタヤに沈没しているダメなおっさんに見えました。
アユタヤの寺院にて
■こんなおめでたいやついるんだね
当時はちょうどイラクで紛争が起きているときで、僕たちは世界情勢や宗教、戦争についておじさんを交えて語り合っていました。
「世の中の不条理は大抵解決できる。戦争や宗教対立だって、お互いの立場を理解して対話をし、シンプルに考えればなんとかなるはずだ」
この僕の青臭い主張に対して、そのおじさんはこんなおめでたいやついるんだね、と呆れたような態度で僕を一蹴します。
「君は世の中を分かっていない。世の中はもっと複雑だ」
いや、アユタヤに沈没しているあんたにそんな事言われたくねえよ、と思いつつ、隣の樺沢が「俺もそう思う、お前単純だよ」とかぶせてきたので、僕の怒りはエスカレートしていきます。
「例えばさっきまで一緒に飲んでいた、あいつ。悪いこと企んでるよ」
おじさんは飲み屋で仲良くなった、タイ人のトニーの悪口まで言い始めました。
ちょっと待て。トニーは日本の国立大学に留学経験もあって、現地の日本企業の工場に勤めるエリートだぞ。しかも、一緒に『Beat It』を踊りながらデュエットしたんだ、悪いヤツなわけないじゃないか。
僕は世の中をこんなうがった目で世間を見てしまう、こんなくたびれた大人になりたくない、と心底思いました。
その夜、おじさんとは別れ、トニーの家に宿泊させてもらいました。
「世の中の不条理は大抵解決できる。戦争や宗教対立だって、お互いの立場を理解して対話をし、シンプルに考えればなんとかなるはずだ」
この僕の青臭い主張に対して、そのおじさんはこんなおめでたいやついるんだね、と呆れたような態度で僕を一蹴します。
「君は世の中を分かっていない。世の中はもっと複雑だ」
いや、アユタヤに沈没しているあんたにそんな事言われたくねえよ、と思いつつ、隣の樺沢が「俺もそう思う、お前単純だよ」とかぶせてきたので、僕の怒りはエスカレートしていきます。
「例えばさっきまで一緒に飲んでいた、あいつ。悪いこと企んでるよ」
おじさんは飲み屋で仲良くなった、タイ人のトニーの悪口まで言い始めました。
ちょっと待て。トニーは日本の国立大学に留学経験もあって、現地の日本企業の工場に勤めるエリートだぞ。しかも、一緒に『Beat It』を踊りながらデュエットしたんだ、悪いヤツなわけないじゃないか。
僕は世の中をこんなうがった目で世間を見てしまう、こんなくたびれた大人になりたくない、と心底思いました。
その夜、おじさんとは別れ、トニーの家に宿泊させてもらいました。
あの夜の一コマ
■「な、世の中複雑だろ?」
翌日、お金が盗まれているのに気づいたのは、トニーと別れアユタヤから列車に乗ろうとしたときでした。
飲み屋で支払いは済ましていたし、2人同時にスリをされることは考えられないので、寝ている間にトニーが盗ったとしか考えられません。
樺沢と2人で畜生とぼやいていたときに、僕の頭に浮かんだのは、アユタヤのおじさんの顔でした。
「な、世の中複雑だろ?」
飲み屋で支払いは済ましていたし、2人同時にスリをされることは考えられないので、寝ている間にトニーが盗ったとしか考えられません。
樺沢と2人で畜生とぼやいていたときに、僕の頭に浮かんだのは、アユタヤのおじさんの顔でした。
「な、世の中複雑だろ?」
■世の中をシンプルにしたい
そこから僕は「物事をシンプルにする」ことに、情念を燃やすようになりました。実際に社会に出て仕事をするようになると、本当に世の中は複雑なんだと、思い知らされることばかりです。
そんなとき、いつもアユタヤのおじさんの言葉がフラッシュバックします。
「だから世の中複雑だって言ったじゃねーか」(妄想かつ完全な逆恨みです)
そして、僕の心に火が付きます。「シンプルにしてやるぞ」と。
物事をシンプルに、誰でも分かるように。世の中をシンプルに、誰でも分かり合えるように。
例えば、打ち手がなく、すべてがマイナスに見える状況に直面した時――――。
おじさん「な、世の中複雑だろ?」
ふざけんな、「打ち手がないなんて」雑な解釈だ。良い点を見つけて反転攻勢するんだ。
例えば、皆で打ち合わせていて、いまいち意見が噛み合わずうまくいかないとき――――。
おじさん「な、世の中複雑だろ?」
ちくしょう。そもそも話の前提条件をきちんと言語化してすり合わせば、同じ人間が理解し合えないことなんてないだろう。
今では、こんなリトルホンダ的な形で、“世捨て人”もとい、アユタヤのご老公には、僕の人生にお付き合いいただいています。
オールアバウトのビジョンは、「個人を豊かに、社会を元気に。」ですが、実はその下にさらにもう一文あります。
「個人のチカラをベースに、世の中の不合理・不条理をなくし、既存の情報流・商流・製造流を創りなおすイノベーション・プラットフォームとなる。」
これは世の中をシンプルにすることだと、僕は解釈しています。
そんなとき、いつもアユタヤのおじさんの言葉がフラッシュバックします。
「だから世の中複雑だって言ったじゃねーか」(妄想かつ完全な逆恨みです)
そして、僕の心に火が付きます。「シンプルにしてやるぞ」と。
物事をシンプルに、誰でも分かるように。世の中をシンプルに、誰でも分かり合えるように。
例えば、打ち手がなく、すべてがマイナスに見える状況に直面した時――――。
おじさん「な、世の中複雑だろ?」
ふざけんな、「打ち手がないなんて」雑な解釈だ。良い点を見つけて反転攻勢するんだ。
例えば、皆で打ち合わせていて、いまいち意見が噛み合わずうまくいかないとき――――。
おじさん「な、世の中複雑だろ?」
ちくしょう。そもそも話の前提条件をきちんと言語化してすり合わせば、同じ人間が理解し合えないことなんてないだろう。
今では、こんなリトルホンダ的な形で、“世捨て人”もとい、アユタヤのご老公には、僕の人生にお付き合いいただいています。
オールアバウトのビジョンは、「個人を豊かに、社会を元気に。」ですが、実はその下にさらにもう一文あります。
「個人のチカラをベースに、世の中の不合理・不条理をなくし、既存の情報流・商流・製造流を創りなおすイノベーション・プラットフォームとなる。」
これは世の中をシンプルにすることだと、僕は解釈しています。
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