成長し続けるエース記者の遠い背中
社員が大切にしている言葉を紹介する連載企画「Quotes」。第10回に登場するのは、メディアビジネス部、フィードグループに所属する長谷川さん。前職の地方紙の新聞記者時代、先輩であるエース記者がふと口にしたある一言で、長谷川さんの日々の仕事への向き合い方の軸となったその言葉を紹介していただきました。
■整理記者は一発勝負
私は地方紙の新聞記者としてキャリアをスタートしました。毎日、朝から晩まで町の小さなイベントから事件まで、駆けずり回って取材して記事を書いていました。
日常の取材活動に加えて、若手記者は持ち回りで、取材の裏話や日頃感じたことを紹介する300字程度のコラムを書く仕事がありました。
毎日走り回っていてもネタが尽きてくるし、300字と短い文章のなかに起承転結を詰め込まなければならない。やっとひねり出してコラムを提出しても、当時の私がとにかく怖れていた門番=デスクから「意味がわからん! 書き直せ!」と突き返され、書き直し、突き返され、となかなか家に帰れない日々でした……。
そのとき以来、久しぶりのコラム。これは、現場で駆けずり回る記者ではなく「整理記者」としての仕事を任されるようになった新卒3年目の話です。
整理記者は、毎日朝・夕に発行される新聞の紙面の1ページを担当し、デスクがそのページに載せると決めた記事を、新聞の紙面のルールに沿ってレイアウトし、見出しをつけ、内容のWチェックをするところまでが主な仕事でした。
時間制限は、現場の記者や通信社から記事が上がってきて、印刷所に送るまでの一発勝負。印刷所に送る1時間前にビッグニュースが飛び込んできて、それまでの数時間でせっかく組み上げた紙面を一から作り直す……なんていうこともありました。
日常の取材活動に加えて、若手記者は持ち回りで、取材の裏話や日頃感じたことを紹介する300字程度のコラムを書く仕事がありました。
毎日走り回っていてもネタが尽きてくるし、300字と短い文章のなかに起承転結を詰め込まなければならない。やっとひねり出してコラムを提出しても、当時の私がとにかく怖れていた門番=デスクから「意味がわからん! 書き直せ!」と突き返され、書き直し、突き返され、となかなか家に帰れない日々でした……。
そのとき以来、久しぶりのコラム。これは、現場で駆けずり回る記者ではなく「整理記者」としての仕事を任されるようになった新卒3年目の話です。
整理記者は、毎日朝・夕に発行される新聞の紙面の1ページを担当し、デスクがそのページに載せると決めた記事を、新聞の紙面のルールに沿ってレイアウトし、見出しをつけ、内容のWチェックをするところまでが主な仕事でした。
時間制限は、現場の記者や通信社から記事が上がってきて、印刷所に送るまでの一発勝負。印刷所に送る1時間前にビッグニュースが飛び込んできて、それまでの数時間でせっかく組み上げた紙面を一から作り直す……なんていうこともありました。
■成長し続けるために必要なこと
私のメンターは、編集部のエースのKさんでした。彼女の仕事で印象に残っているのは、務めていた新聞社の所在地出身の有名野球選手が引退したときに、見開き1ページにその選手の軌跡をたどる写真集のような特集面をさらりと組み上げたときのこと。
大胆で、記憶に残る紙面を作る彼女に、憧れのようなものもありました。ただ、彼女は自分にも他人にも厳しく、近寄りがたい印象もあり、メンターが彼女になると聞いたときは「ビビってしまった自分」がいたのも事実でした。
毎晩、新聞紙面を印刷所に送り、彼女の手が空いた隙をみて、自分がその日組み上げた紙面を持っていきました。いわゆる反省会です。
「なんで、この記事、この見出しにしたの」
「この紙面、メリハリがない。これじゃ読者がどこから読めばいいかわからないよ」
厳しいこともたくさん言われました。「Kさんだから、そりゃ、私なんかよりずっと経験もあるし、素敵な紙面を組めるでしょうね……」。劣等感にさいなまれた日もありました。
大胆で、記憶に残る紙面を作る彼女に、憧れのようなものもありました。ただ、彼女は自分にも他人にも厳しく、近寄りがたい印象もあり、メンターが彼女になると聞いたときは「ビビってしまった自分」がいたのも事実でした。
毎晩、新聞紙面を印刷所に送り、彼女の手が空いた隙をみて、自分がその日組み上げた紙面を持っていきました。いわゆる反省会です。
「なんで、この記事、この見出しにしたの」
「この紙面、メリハリがない。これじゃ読者がどこから読めばいいかわからないよ」
厳しいこともたくさん言われました。「Kさんだから、そりゃ、私なんかよりずっと経験もあるし、素敵な紙面を組めるでしょうね……」。劣等感にさいなまれた日もありました。
新聞記者の必需品「記者ハンドブック」と整理記者のマストアイテムである「活字尺」。マグカップは先輩のエース記者にいただいたもの。 |
でも、あるときの「反省会」で、彼女はふと言いました。
「若いころはいいのよ、意識しなくても成長できるんだから。毎日ひとつ覚えればそれだけで成長なの。私みたいに年次が上がると、そうもいかないの。毎日何か工夫しないと、衰える一方なの」
当時の私はまだ整理記者の駆け出しだったので、「毎日ひとつ覚えれば成長」という言葉に明確な目標を見つけ、だいぶ救われました。一方で、「エースのKさんも、まだ成長を望んでいるんだ」と、当たり前のことなのに驚くと同時に、「私と一緒なんだな」とほっとしました。
■気づけば中堅。今なら共感できる
新聞社を辞めてもう数年がたち、オールアバウト勤めも5年と、気づけば中堅。ウェブメディアの環境変化が激しいけれど、息を吸っていれば成長できるときばかりではありません。Kさんのようなかっこいい先輩には遠く及ばないけれど、どちらかというと「毎日何か工夫しないと、衰える一方」の恐怖が、おぼろげながら共感できることが増えてきた気がします。
もちろん、いつまでも「成長期」でいられるわけではない。それでも、今日はどんな変化をつけて、工夫して、どう成長しようか。そんなことを考えながら、仕事をしています。
でも、結局今日も締め切りギリギリに原稿を出す私に、Kさんなら「まったく成長がない!」と怒る気がしています。
もちろん、いつまでも「成長期」でいられるわけではない。それでも、今日はどんな変化をつけて、工夫して、どう成長しようか。そんなことを考えながら、仕事をしています。
でも、結局今日も締め切りギリギリに原稿を出す私に、Kさんなら「まったく成長がない!」と怒る気がしています。
11 件
Back Number
Rankingランキング
- MONTH
- WEEK